恍惚のブルース | SWEET RUBY

恍惚のブルース

青江三奈さん

小学校低学年までおじいちゃん子だったわたしは
よく同じ町内のおじいちゃん家に遊びに行っては
一番お気に入りの応接間で過ごした
大きな家具みたいなダークブラウンのビクターのステレオがあって
20センチ四方くらいのヘップバーンの白黒のサイン入り写真が飾ってあった
小さい頃はあの顔が怖くて、わたしが行くと怖がるので
おじいちゃんが笑って裏返しにしてくれてた

もっとこわかったのはおじいちゃんの趣味の
美空ひばりと青江三奈のLPレコードジャケットの写真
どのアルバムか解らないけど
紫色の妖しいアップの、写真だったか絵だったか覚えてないけど怖かった
おじいちゃんは特に青江三奈が好きだったようで
よくレコードをかけては「三奈はええなぁー」って言ってたけど
その頃のわたしにはあの声がまた怖くて怖くて。。

でも優しくて何でも知ってて教えてくれて
わたしのくだらない話を最後まで聞いて笑ってくれる
おじいちゃんが大好きだったから
その怖いものがいっぱいな応接間がオトナの部屋に
感じてそこに居ることが好きだった

ロッキングチェアーと大きなあんまチェアーもあった
おじいちゃんは着物を着てあんましながら居眠りしてる
子供のわたしはあんま椅子は痛いだけでなんで気持ちいいのか解らなくて
ロッキングチェアーで揺られながら
早くヘップバーンが怖くないと思えて
あんま椅子で疲れた体の凝りをほぐしながら青江三奈で癒されて
恍惚の顔するオトナになりたいとあこがれて見ていた