「火事だぁー、山火事だぁー」
誰かが大声で叫んでいる。
火は見る見るうちに山の全面に拡がり、パチパチという音さえ聞こえてきた。
その時代には消防自動車などない。消防団員が引いたり押したりする木製の台車の上に、何人かであおるような貧弱な消火ポンプが取り付けてあるだけの火消し車があるだけだ。
防火用水の桶か、川や池、井戸等に吸い上げのホースを入れ、丸めてある排水ホースをクルクルと引きのばし、筒先を火に向け消火を試みる。言わば水鉄砲の大きいのと同じだ。
消防団の人たちが大慌てで、その台車をガラガラ引っ張って走っていった。
僕は完成間近の我が家を守るため、兎に角井戸から水をバケツで運んで来てから、どうしたら良いか考えた。