その当時、田舎の町にはサイレンは未だなくて非常事態を知らせる方法は半鐘を撞きならすしかなかったのだ。
火元が遠方の時には間延びしているが、火が近くなるにつれて早くなるような、打ち方になる。
「火事だ。何処だろう?」
ふと山の方を見ると煙が上がっている。
「あれは細江公園の山だ。山火事だ!」
細江公園というのは、南アルプス赤石山脈の南の端,尉が峰から下った、浜名湖の引佐細江を一望できる場所で、浜名湖北岸では名勝地として知られていた。
そこには、ちよっとした登山道がありよく登ったりして慣れ親しんでいる場所だ
。
「大きな火事にならなければよいのだが」と願っているうちに風が強まり、みるみる内に炎がたち燃え盛ってきた。
半鐘もスリバンといってガンガンガンガンガンと気が狂ったような打ち方となった。