美術ってなんのため?好きなことを好きと言う難しさ | フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子 in 東京

フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子 in 東京

フィレンツェ観光ガイドの資格を2016年に取得しました。
現在は都内で美術の鑑賞の仕方を教えています。
詳しくはホームページから。
http://mariko-no-heya.com/

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Buon giorno♪

 

私が一番お金を使うもの・・・それはもちろん

 

美術鑑賞

 

です。

 

フィレンツェにいる理由も旅行では見切れない美術作品を見たいから。

 

 

これだけ美術が好きなのに、なぜか「なんの役にも立たないし」とか「他の人は興味ないだろうから隠しておかなきゃ」と思ってしまうのです。

 

 

じゃぁなんでこんなことになったの?

ということで美術と私のカンケイについてお話ししたいと思います。

 

 

 

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私が美術鑑賞にハマったのは21歳の時。

それまではまーったく美術になんて興味がございませんでした

 

だって美術って動かへんやーん。:.゚ヽ(´∀`。)ノ゚.:。+゚

 

ある日クラスメートから「オランジュリー展見にいかない?」と誘われたのが人生の転換期です。そこでローランサンの「ココ・シャネル」を見て感動。家にずっとレプリカがかかっていたのですが、本物を見てシビれました。

そこから私の美術館巡りが始まったのです。

 

それまでは本ばかり読んでいました。

名作は一通り目を通していましたが、特に「物語り」ものが得意。

なので、絵を見ると大体なんの話のどのシーンでどの人物ということがわかりやすかったのです。

 

 

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そうやって「この絵は○○でね、こんなお話しで・・・」なんていう解説を友達に聞いてもらってたんですが、ある日「それだけわかればキュレーター(学芸員)できるやん」という言葉を真に受けて、通信制の大学に行くことにしました。

 

28歳の春。ふたたび大学生女子大生です。

ですが、サラリーマンとの二足のわらじ。そしてなんとなく後ろめたい気持ちがあってナイショで勉強していました。

 

 

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なんとなく後ろめたい気持ち・・・

というのも当時の仕事と何の関係もなかったからです。

 

いつも家族から「それなんのためにやってるの?」と聞かれて返答に困っていました。多分ただ好きだからやっていただけなんだと思います。でも「ただ好きだから」という理由はうちでは通用しません。通訳案内士という海外からの観光客を案内する資格を取り、将来そういった仕事をしていくから、と言ってお茶を濁しておきました。

 

最初に大学に行った時も日文か仏文を勉強したかったのですが、就職に有利そうな法学部を選択。

常に

「何がしたいのか」

より

「どうしたらうまくいくのか」

が焦点でした。

 

「ただ好きだから」

は私の人生の中で重要性を与えられてこなかった気がします。

 

 

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美術ってライフラインじゃないんで、これがなくても十分に生きていけるんですよね。そんな贅沢で役に立たないものを好きな自分が家族に対して申し訳が立たなかったのかもしれません。

 

展覧会、大学の学費、書籍、そしてフィレンツェへの移住・・・

美術につぎ込んだお金は莫大です。

なのに、それに重要性を置けない自分・・・

 

美術の知識に関しても同じです。

こんなこと誰も聞きたくないだろうと思って、知っていることをあまりオープンにしてきませんでした。

 

私自身はもっと知りたい!と思って講義を聞きに行ったり本を読みまくったりしているのに、なんで誰も興味ないと思うのか、冷静になって考えると少し変な気もします。

 

 

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1年半前にそれまで「役に立つ」という名目のもとやってきたことを捨てました。

そして「ただ意味もなく好きだから」ということを優先する人生を選びました。

 

ただ好きだから・・・

そういうものには人はものすごい情熱を注ぐことができます。

 

ここイタリアには「なんの役にたつの?」と聞いてくる家族は身近にはいません。

好きなことを素直に「好き!」と言うのになんの言い訳もいりません。

人に言い訳をするためでなく、自分の情熱のために・・・

そして好きなことを言えばいうほど不思議に周りそういう人が集まってくるのです。


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さてさて、少し美術史のお話です。

 

 

美術史は主に2つの視点から語られます。

1つは技法、

そしてもう一つがコンテンツ(描かれているもの)です。

 

技法とは描かれ方。

例えばルネサンスでは遠近法が使われるようになったとか、ダヴィンチはスフマートといって線をぼかして描く技法を生み出した、とかそういうものです。

 

一方コンテンツは何が描かれているか、についての考察です。

百合は純潔の象徴だから聖母マリアを表すとか、結婚式のお祝いとして描かれたからこの画題が描かれたとか、そういったことを説明します。

 

絵を描けない私がお話できるのは圧倒的に後者です。

ちょっとした特徴を捉えて人物の特定をしたり、あるシーンをもとにその裏に隠された歴史的背景などを読み解くということがいわば「好きなこと」

ギリシャ神話や聖書、世界の名作やタロットなどから「鍵」を探して絵に語ってもらいます。

 

なんの役にたつのか、興味を持ってもらえるか、そんなことを全て脇に置いて、ただ自分の情熱に仕える・・・

そろそろ好きなことを素直に「好き!」という時期が来ているのかもしれません。