ローマカトリックの法王様のフィレンツェ訪問で開いた「天国への門」
それによって私の中の門も少し開いてきた気がします。
この数日間で洗礼堂の一番古い門について説明してきました。
これだけ他の門と違ってゴシック美術です。
そして、図像学について少し触れました。
図像学の面白いところは、少し知っていると
絵の秘密
がわかるようになるのです。
ということで、今日はフィレンツェ画壇に影響を及ぼした
悪女
に登場していただきます。
さて、この女性は誰でしょう?
ヒントはこちら
前の記事で紹介したこちらのレリーフは信仰 (Faith)を表します。
特徴は聖杯と十字架を持っていること。
この2つを持っている絵を見つけたら、ほぼ間違いなく信仰の擬人像と思ってもらって間違いありません。
例えば、こちらは約100年後の作品。
ウフィツィ美術館に収められているこちらの作品。
色もスタイルも全然異なりますが、同じ持ち物を持っています。
右手に聖杯、左手に十字架。
したがって、こちらも信仰の擬人像です。
こうやって見ていくと、ただの絵が自分のことを語りだすのです。
ということで、最初の質問に戻ります。
この女性は誰でしょう
右手に聖杯、左手に十字架。
そう、この女性も信仰の擬人像です。
なのに、なぜ彼女は悪女なんでしょう?
彼女の名はルクレツィア・デル・フェーデ。
後期ルネサンスの巨匠アンドレア・デル・サルトの奥さんです。
ウフィツィ美術館にあるデル・サルトの最高傑作「ハルピュイアの聖母」
デル・サルトは奥さん大好きだったようですが、奥さんの方はそうでもなく・・・
ダンナさんの弟子とも噂が絶えなかった、という話が残っています。
デル・サルトが小さな修道院の壁画を頼まれた時、彼は奥さんのルクレツィアをこともあろうか「信仰」の擬人像のモデルに選びます。
というのも彼女の苗字「フェーデ」はイタリア語で「信仰」を表すのです。
Fede - Faith - 信仰、信頼・・・
デル・サルトはこの絵にどんな願いを込めたのでしょうか?
数々の後期ルネサンスの傑作を残したデル・サルトですが、43歳の若さで亡くなります。
その病の床にルクレツィアの姿を見ることはなかった、と言われています。
脱線してしまいましたが、図像学がどんなものかおわかりいただけたでしょうか?
図像学を通して絵を見ると今まで見えなかったものが見えてきます
次回はまた洗礼堂の扉に戻って「対人徳(枢要徳)」とタロットカードを見ていきたいと思います。
いつか悪女特集もしたいなぁ・・・