ただ美の為に… | フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子 in 東京

フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子 in 東京

フィレンツェ観光ガイドの資格を2016年に取得しました。
現在は都内で美術の鑑賞の仕方を教えています。
詳しくはホームページから。
http://mariko-no-heya.com/

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丸の内の三菱一号館美術館に行ってきました。 お目当てはザ・ビューティフル展。 先月には六本木の森アーツ・センターのラファエル前派展に行ってきたのですが、ほぼ同時期に同じ国で起きた芸術活動です。 どちらも19世紀のイギリスのビクトリア調と呼ばれる品行方正な文化に波紋を広げた経緯があります。 ラファエル前派はイギリスの伝承などに題材を取ったのに対し、今回の展覧会の唯美主義はただ美しいことに重きを起きました。 ただ美しい… 人は何を持って美しいと感じるのでしょう? というのも、唯美主義の中にはビアズレーなど、頽廃美も含まれます。 美しいものを求めるのは人が人たる所以です。 しかし美というものは必ずしも善とは限らなさそうです。 人は一体何に魅力を感じるのか… 不思議ですね。 さて、 ここからは、少し芸術学的な観点からのお話。 唯美主義はそれまでと違って、芸術作品に意味を持たせません。 文字通り、美しさを追求するものです。 それまでの芸術は、道徳的な意味合いや、聖書や神話を描いていました。 それから脱却したのが唯美主義。 奇しくも、海を渡ったフランスでも、セザンヌやモネ達が活躍を始めるころです。 セザンヌはルネサンス以降、初めてリンゴをただの果物として描いた画家と言われています。 え、リンゴが果物じゃなかったら何? と思われたと思います。 印象派が登場するまでは、リンゴはアダムとイブの原罪や、パリスの審判を表していたのです。 個人的には絵画の謎解きをするのが大好きなので、なんとなく淋しい気もします。 でも、唯美主義のように、ただ美を美として捉えられるのもいいですね、