先日、あるところで偶然お会いした方から、
「長年携わってきた仕事の書類がたくさんあるの。
そろそろ整理しなくちゃと思うけれど、
時には過去の書類が役立つこともあるのよね」
というお話を聞かせていただきました。

私も編集者を20年やってきたので、
過去の仕事の資料を手放したくない気持ちは
よくわかります。

私も編集者の仕事を離れてから、
かなり長い間、手放せませんでした。

でも、現在は、ペン一本と紙一枚あれば、
私の編集者としてキャリアは生かせる。
そう確信しています。
編集者時代の書類はすべて処分しました。

なぜか?

確かに、編集について質問された時、
具体的な資料があるといいなと思います。

でも、私の場合、
それはある一点をだけのこと。

大局的に見れば、
具体的な資料やデータなどがなくても、
編集の本質はお伝えできます。

抽象的な言葉だとしても、
それは、私の血肉となった、
編集のエッセンス。

私に質問した人に向けて
私の内部から生まれた、
オリジナルの表現です。

その方と私が出会ったから
生まれた表現。

過去の具体例は、相手が誰であろうと、
何度でも例としてお見せできますが、
その人に向けてのオリジナルではありません。

そう感じた時から、
過去の具体例を握りしめるのは
やめました。

過去の書類を手放した方が、
過去に積み重ねた仕事の実力が
自在に息づき始めるのを
感じられる。

今の私は、そんな感覚を持っています。

今日もお読みくださり、
ありがとうございます。