スペースのクリエイティブな使い方
毎週土曜24:55~CDTV内で「TOWER RECORD」のCMが見られる。
地上波では今のところ、ここだけかもしれない。
つくりとしては、
「NO MUSIC NO LIFE」を軸に、様々なミュージシャン達が、
自分と音楽との出会いとか、衝撃を受けたバンドのこととかを語る映像でできていて、
つまりは音楽が好きな人が、ただただ音楽について語ってるだけなのだけど、
それで十分「音楽」のシズルが伝わってきて、
いい広告だな~って思う。
そのミュージシャンのひとりとして、教授、こと坂本龍一さんが出ていて、
「音楽は、土地や文化に縛り付けられていて(民族音楽みたいな)、
その音楽を、自由にしてやる、音そのものにしてやらなきゃいけない」
といった難しい(そして教授らしい)内容を語っていた。
そしていつも通り、最後に「NO MUSIC NO LIFE」のメインキャッチとタワレコのクレジットが出て、
でも今回はそれで終わりじゃなかった。
続けてタワレコと全く同じ絵で教授が再登場して、
バックは燃えるようなグリーン。
「今現在のcomputerのファイル形式が、100年後も通用するかは分からない。
だから、写真を焼こう。」
とかなんとか言っていて、
なんのことやら、と思っていたら、
最後に「NO PHOTO NO LIFE」と富士写真フィルムのクレジット。
タワレコのCMフォーマットでフジフィルムの広告を成立させてたのでした。
クールやわぁ。
思うに、
これまでもフジフィルムは「デジカメ撮ったらお店プリントに任せよう」といった趣旨のことをよく言っていて、
でもこういう「企業が言ってほしいこと」丸見えの広告は、なかなか伝わらないよなーって思ってた。
でもこのやり方だと、言ってることは今までと同じなのに、
見てるほうもすんなり「そうか、写真プリントしなきゃね。」と思ってしまう。
それは、教授という人のタレント性もあるけど、
それ以上に、CDTV内の、しかもタワーレコードCM直後だというスペースの力が大きいと思う。
さらに、表現もことスペースを十分生かすように計算されている。
音楽で楽しい気分になったり、励まされたりというのは、誰しも経験することで、
そんな「音楽」の象徴であるタワーレコードと、同列に見えるようにフジフィルムのCMをつくることで、
写真、ひいてはフジフィルムの地位が高まって見える。
写真(富士写真フィルム)というものが、音楽(tower record)と同じように、
五感に訴える、人の気持ちを揺さぶる大切なものだ、という気にさえ、させられる。
15秒30秒の中で素晴らしいクリエイティブをつくることも大切なことだけども、
クリエイティブは「枠の中」だけじゃないんだぜって言われてる気がして、爽快だった広告でした。
http://www.towerrecords.co.jp/html/tower/company/company/pdf/050427tvcm_nmnlfujifilm.pdf