キャピタリズム | RUBYBIRD

キャピタリズム

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マイケル・ムーア監督の「キャピタリズム」を見てきました。

マイケル・ムーアといえば、丸々豊満な体で電波少年ばりの突撃取材をすることで有名な映画監督。
学生時代に「ボウリング・フォー・コロンバイン」を見たときの、
ドキュメンタリーってこんなに面白かったんだ!という衝撃は忘れられないなー。
「ボウリング~」はアメリカの銃社会にメスを入れたもので、
アメリカ国民が根源的に抱える恐怖にスポットライトを当てていたのが、
なるほど納得の面白さでした。

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なんというかパフォーマンスとも取れる実行主義みたいなところが見ていて気持ちが良く、
アメリカより銃の所持率が高いカナダで、人々は家の玄関に鍵をかけない…ってくだりで、
監督がカナダの民家の玄関を端から開けてまわるくだりなんか、大笑いしてしまった。


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そのためかメジャー2作目「華氏911」はかなり期待して見に行った覚えがあるけども
内容が痛烈なブッシュ政権批判、特にブッシュとアルカイダの関係がかなり臭う・・といった内容で
題材が前作より巨大な分、バランス感を欠くというか、眉唾っぽさが限界。
(ドキュメンタリーはそもそも偏ってるものだし、ムーア監督はバレバレに偏ってるからむしろ安全な人=無意識に洗脳されない、見ているほうもバイアスを想定できる、のだけれども)
映像も、前作のようなライブ感がないというか、(やっぱアラファトさんとカラオケしてほしいのだ)
元々ある映像を繋いで出しただけに見えてしまい、がっかりしたのでした。

ので3作目「Sicko」(アメリカの医療制度がテーマ)はスルー。


そしてほとぼりの覚めた今作。今回のテーマは「資本主義」
毎回毎回、タイムリーなこと。

2008年の秋頃、どうにか景気も安定してきて、来年は例年の倍、新入社員が入ってくることに。
景気もずっと悪いばっかりじゃないのね~・・と思っていたら
なんかウォールストリートや六本木ヒルズがばんばん写る。
で、瞬く間に大不況のできあがり。
去年1年間は、(あのやろ、よけいなことしやがって)と思いながら働いてました。
不況は良くない。何が良くないって全てが萎縮する。変な言い訳が増える。
はっ、個人的な脱線でした・・汗:-(

それでまあ、なんでこうなった、というのが今回の映画のテーマなのですが。
(ここから先、ネタバレあり)

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1人シュプレヒコールをしたため、NY証券取引所は出禁に。

ローンが払いきれず、担保にしていた家を差し押さえられる(強制執行)人々、
倒産前日に一律解雇され、保険や手当はおろか説明さえされない従業員たち、
一流企業が社員に生命保険を投資目的でかけている事実(受取人は会社、社員が死ぬと儲かる仕組み)
マックのバイトより安い時給で、売血しながら食いつなぐパイロットがいる一方で、
政府の背後には常に大手金融機関があって、自分たちのいいように経済政策を操っている。
経営が傾いた銀行は税金で救済されて、しかもそのお金は使途不明。
サブプライムローン最大手は、政府高官に利率の低い優遇ローンを自ら提供。

(取材による偏りがあるにせよ)あまりに歪んだ経済状況にムーア監督が噛み付きます。

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映画の中では実際に政府から資金援助を受けた金融機関を、税金泥棒として
黄色い「犯行現場 進入禁止」テープでぐるぐる巻きにするシーンもあって
見ていて溜飲が下りる気分。

でも見ていて思ったのは、誰がわるいとかそういうことよりも、
新たに制度やルールを追加しないと良くならないんじゃないかな、ということ。
出てくる全ての人が、別に犯罪や違法なことをしているわけではなくて
(グレーな部分は多々あるにしても)
現状のルールの中で放っておくとこうなってしまうのだから、
おかしな方向に転がらないようにする必要があるなあ…ということ。

根本的なことをいうと、アメリカに失業保険や医療保険の類いがないのも変だし、
金融界と行政の癒着が横行しないためには、政教分離ならぬ政経分離策が必要かも。
どうして銀行だけが傾いても大したペナルティなく助けてもらえるのか、
そもそもどうしてサブプライムのようなローンが生まれてしまったのか。

これだけ格差が拡大すると、アメリカンドリーム的なイデオロギーでは国民が纏まらなくなって
そういった歪みを解消するべく、オバマさんの時代がやってきたんだな、ということがよく分かった。

高校の政経の授業でやるような「大きな政府と小さな政府、どっちがいいの?」
みたいな古い話ではなくって、
なんかさすがにおかしくないか?もっと他のやり方あるだろ?てところから
今回の「CHENGE」に繋がったんだなー、と。
ヨーロッパならまだしもアメリカがこういうとこまで来てるんだなー、と。

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今回もGM本社に体当たりして怒られる、の巻

個人的にこの映画で最も震えたのは、
富の配分では1%の人間が有利であっても、投票権は1人1票平等にある・・といったくだりで、
一瞬(古代アテネですか、ここは?)と思ったけど、
実際にリーマンショック直後、一旦は経済安定化法案(経済を安定させるために金融機関に税金を注入させる法律)
は否決されている。のちにねじ込まれちゃったけど。
その点だけが唯一の救いで、なんとか世の中変えんとなあ…と思うのでした。
そのためにはもっと賢くならないとと思うのに、
日本の報道機関は酷いもんだな…そこらへんのブログ読んだほうがよっぽど為になる。
困ったものだけど、それも時代の流れなのかもね。

兎に角、いろいろと考えるきっかけになったいい映画でした。
でもなんでLOVE STORYなんやろ??

www.michaelmoore.com