春樹の沈黙 | RUBYBIRD

春樹の沈黙

打ち合わせの狭間で30分ほど時間があいて本屋へ。
村上春樹の新刊がもう重版になっていて、人だかりになってました。

でまあ妹が買ってるだろ、と思ってスルーして奥の棚で偶然見つけたのがこの本。


RUBYBIRD

沈黙 村上春樹 1993年



自費出版なんじゃないか的なペラペラの装丁で、値段は¥184(税別)って、
本の値段じゃないナイ。
どうやら中学高校生向けの教材らしく、
出版元は「全国学校図書館協議会」というところでした。

1993年は、ちょうどねじまき鳥のころ。
この本の中でも孤独についての表現で
「ものすごく深い穴」
「でもその深みを理解していれば、人はもし負けても傷つきはしません。」
とねじまき鳥を彷彿とさせるところがあったりします。

この図書館協議会さんのために書き下ろされた作品ではないようなのですが、
ちょうど主人公の青木さんが人生を大きく変えられてしまう出来事が起こるのが
メイン読者であろう中学生高校生の頃だったりして、
この教材を読む子供たちは自分やクラスメイトに重ねながら読むのだろうな…と思いました。
暴力のこととか、無自覚的に何かを損なうことの罪深さであるとか、
孤独とそれを乗り越える力のことだとか、
村上さんの作品の醍醐味がぎゅっとつまった感じの小品です。

本文は30ページちょっと。
帰りの電車のなかで一気読みしても時間が余りましたが、無駄な贅肉がついていない感じ。
読み終わってとてもさえざえとした気持ちになりました。