家族八景は筒井康隆の小説で

私が中学生の頃に手に取った文庫本だ。


さらっと話すと家政婦をしている火田七瀬が

様々な家庭に仕事に行くのだが

七瀬は人の心を読める能力を持っており

各家庭に山積する問題や人の本当の気持ちを

赤裸々に文章にしてある。という感じの本だ。

その表現力は見事で筒井康隆は天才だと思った。


その内容が本当に惨たらしくて

この歳になっても眉をひそめてしまうイメージ。

この本には続きがあって『七瀬ふたたび』と

『エディプスの恋人』という3冊が

七瀬三部作と言われている。

私はこの2冊が大好きで今でも持っている。


だが最初の『家族八景』だけは持っていない。

失くしても買い足してはいない。

それほど中学生の私には強烈な本だった。


それほどの嫌悪感を持つ理由は

人の心の中を読めても決して幸せではないというメッセージが伝わり続けること。


私はTwitterやInstagramなどのSNSを積極的に使っていない。

それでもヤフーニュースやら何やらは目に入ってくる。

見ていて思った。

『家族八景』の世界だ。と。


色々な人がネット上で自分の意見、思想、感情を赤裸々に書いている。

今日たまたま目に入ったニュースが

谷原章介さんがサッカーの森保監督に花束を渡す際に「女性からじゃなくてすみません」と言ったのが問題。みたいなニュース。

女性が花束を渡すのが当たり前?とかなんとか。

何でもかんでも女性がー男性がー

ヤフーのコメントでは「そういう意味ではないじゃろがい」みたいな意見が圧倒的だったが

リアルでは口に出さないような事も無記名であるが故にどうでも良い事まで聞こえてしまうこの世の中が家族八景の様で気持ちが悪いと思った。

揚げ足とりばかり。目眩がする。

これでは何も話せないではないか。

今の時代の公人や芸能人は気の毒に思う。


筒井康隆さんもまさかこんな世の中が来るとは

思っていなかったのではないかと思う。

でも筒井さんは鬼才だからお見通しだったのかも知れない。

人の心の中などわかりたくもない。

筒井康隆さんの家族八景から学んだこと。