泣くわけではないが
また やってしまった
朝 結局眠れなかったし
母に電話した
いつものように
おどけて だれーー
母は 妹の名前を呼ぶ
オカーさん あなたには
ほらその 賢くて 鼻すじが
シュッとした 娘が
もう一人いるじゃーないのー
ここで いつも思い出して
くれるが なかなか
今回は 思い出してくれない
ほら あの体の弱い娘だよ
あぁ と 沈黙のあと
体の具合は? 病院行ってる?
無理はあかんよ
と 言われた
ねっ 今度ね 検査受けるから
一緒にお母さん ついて行って
受付で 私の名前を
言ってくれないと
病院も 困るから
約束 約束ねー
じゃ また 遊びに行くよ
と 電話を切った
天井を 睨みながら
また 泣いた ハラハラ シクシク
じゃない
寝転び 仰向けで 泣いていたので
起き上がって 拭けばいいのに
もう お母さん 私が
娘で ごめんなさい
と エゴイズムと懺悔の
気持ち
流れる涙は そのまま耳の中に
入りこんでいく
両方の耳の
入り口に
小さな 水たまり
三時間 眠った後
耳がおかしい
入り口あたりが かぶれ
耳がぶかぶかと
聞こえる
今後 泣きたくなったら
昔のドラマのように
ヨヨヨと 倒れこんで
泣かないと
中耳炎に なりそうだ