むかしむかし、あるおかみさんが、どうしても家の裏の畑のレタスが食べたくなりました。
でもそのレタスは、魔女(まじょ)の畑の物です。
主人はお腹に赤ちゃんのいるおかみさんの為に、魔女の畑に入り込みました。
けれどもレタスを取ろうとしていたところを、魔女に見つかってしまったのです。
主人から話を聞いた魔女は、言いました。
「何だい、そんな事か。いいよ、レタスはいくらでもお取り。でもその代わり、生まれてくる子どもは、わたしがもらうよ」
「いや、そんな事は・・・」
「いいね! 子どもはわたしがもらうよ!」
そして魔女は、生まれた女の子を連れ去ってしまったのです。
魔女は女の子に『ラプンツェル』と名前を付けて、階段もドアもない高い塔に閉じ込めて育てました。
時は流れ、ラプンツェルは美しい娘に育ちました。
「ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪をたらしておくれ」
と、魔女が塔の下から呼びかけると、ラプンツェルは黄金をあんだ様な美しい長い髪をたらします。
すると魔女はその髪を伝って、塔に登るのでした。
ある日、塔の前を1人の王子が通りかかり、その様子を見ていました。
次の夜、王子は塔の下で呼びかけました。
「ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪を垂らしておくれ」
たれ下がってきた髪につかまって、王子は塔の上に登りました。
登って来たのが魔女ではなく男の人だったので、ラプンツェルはビックリ。
「キャアー、あなたはだあれ?」
王子はラプンツェルを見て、すぐに好きになりました。
「どうか怖がらないで。お願いです、ぼくと結婚してください」
ラプンツェルも、美しい王子を好きになりました。
それから王子は毎晩、塔の上に登って行きました。
それに気がついた魔女は怒ってラプンツェルの長い髪を切ると、遠い荒れ野に捨ててしまいました。
その夜、王子がやって来ると、魔女はラプンツェルのふりをして切った髪をたらしました。
そして、何も知らずに登って来た王子に言ったのです。
「残念だったね。
あの娘は、もういないよ。
遠い荒れ野に捨ててしまったから、もう死んでしまったんじゃないのかね。
ヒッヒヒヒヒーー」
「そんな・・・」
王子は悲しみのあまり、塔から飛び降りてしまいました。
そしてその時、地面にあったイバラが目に刺さり、王子の目は見えなくなってしまったのです。
「目も見えず、ラプンツェルもいない。いっそ、死んでしまおうか。
・・・いや、ラプンツェルは死んだとは限らない。探しに行こう!」
それから王子はラプンツェルを探して、何年も何年もさまよいました。
そしてある日、荒れ野にやって来ると、とてもなつかしい声が聞こえて来ました。
「あの声は、ラプンツェルだ。ラプンツェル!」
とうとう王子は、ラプンツェルを見つけたのです。
「ああ、王子さま!」
ラプンツェルと王子は、しっかりと抱き合いました。
そしてラプンツェルの涙が王子の目にふりかかると、不思議な事に王子の目は元通りに治ってしまったのです。
王子はラプンツェルを自分の国に連れて帰り、そして大勢の人々に祝福(しゅくふく)されながら、二人は結婚式をあげたのです。