今日はアキクサインコと言う鳥の魅力について書き込みます。
当方ではルビノー以外のアキクサを所有しておりませんが、まずアキクサインコを語るのには、原種であるノーマルを語らねばならないでしょう。

アキクサインコ
(学名:Neopsephotus bourkii

別に学名なんてどうでもいいんですが…このアキクサインコの場合は、学名から語りたいと思います。

実は以前はアキクサインコは「キキョウインコ属」に分類されていました。
このキキョウインコ属と言うのは、草インコ科の中に分類されるわけで、つまりアキクサインコは以前までは、草インコ科キキョウインコ属アキクサインコ種
と言う分類でした。
しかし実はアキクサインコは、同じキキョウインコ属の他の鳥とは違う特徴を多く持っていましたので、近年キキョウインコとは独立させ、新たにアキクサインコ属に分類されました。


これによって、現在アキクサインコは、草インコ科アキクサインコ属アキクサインコ種になりました。
そんな名前なんかどうでもいいじゃないか…と思われるでしょうが、ここからが本題です。


アキクサインコのノーマル種を御存じの方はいらっしゃるでしょうか?
ルビノーやローズは知っていても、ノーマルを知っている人はもしかしたらあまりいないかもしれません。

申し訳ありませんが当方はノーマル種を保持していませんので、写真での説明はできません。


もしご興味のある方がいらっしゃれば、ネットで少し調べて見られてください。
びっくりするほど地味な、ネズミ色の鳥が出てくるはずです。
しかし地味だと思うのは最初だけで、ノーマルは実は腹部に美しいピンクの発色と、風切り羽や腰付近には美しい空色の青を発色する複雑な美しさを持った鳥です。
そして何よりも特筆すべきはその瞳の大きさです。


この瞳の大きさ、それがアキクサインコを語る上でもっとも重要な部分です。

さて、このネズミ色の鳥が、つい以前までは非常にカラフルなヒムネキキョウインコ等と同属に分類されていた訳ですが、彼らに比べてアキクサインコはとても地味だと思うのは私だけではないのではないでしょうか。。
何故、ほかの種類に比べてこんなに地味でなければいけないのでしょう?


それにはアキクサインコの習性が大きく影響していました。

知っている人は少ないようですが、アキクサインコは暁(黎明)と黄昏の鳥なのです。
通常鳥が生活する時間は、日が高い時間帯である事が多いです。
朝早く日の出と共に起きだして、夕方近くなってくるとねぐらに帰るのが常です。
何故なら日中の様なよく見える時期でなければ、彼らの最大の特徴である飛行能力が100%発揮できないからです。

さて、もちろん中にはフクロウや夜鷹と言った、月の光の中で行動する種類の鳥もいますが、こう言った鳥に総じて言える事があります。
それは、目が大きいと言う事です。


アキクサインコの主な活動時間は、深夜でも日中でもありません。
アキクサインコは日の高い日中を避け、日の出前のまだ太陽が上がる前(黎明)、そして日が沈み相手の顔が解らなくなる程度の暗さ(黄昏)に活動時間を決めているようです。

アキクサインコは通常10羽前後の群れで行動し、地面に降りて歩いて採食する姿が観察されています。


アキクサインコの最大の魅力であるあの大きな瞳の秘密。
それは暗い地面を歩いていても、よく見えるように独自に進化を遂げた結果であるのではないでしょうか。


アキクサインコの目は他の小型インコに比べて大きいのは、活動時間が黄昏であるからに他ならないでしょう。それがまたこのアキクサインコの鳥の愛らしさの重要な要素になっています。

さて、翻って羽の話に戻ります。
このように暗い場所で活動する鳥ですから、夜行性の捕食動物(ディンゴ等)の目をかいくぐる為には、めだたない必要があるのではないでしょうか。
この事から、アキクサインコの原種(ノーマル)は非常に地味な灰色を主に、暁や夕焼けの色に一番よく溶ける、ピンク色、そして空色の配色になったのではないかと想像されます。

では何故彼らはこの活動時間を選んだのでしょうか?
それには彼らの生活している地域が重要な鍵になります。



彼らの住んでいる地域は、オーストラリア内陸部の乾燥地帯に広く分布しています。
オーストラリア内陸部と言えば、かの有名なエアーズロックのある辺りからかなり広大な部分を差しますが、この地域の多くは人の住めない砂漠気候であるようです。
ではこの砂漠気候の平均気温はどうなっているのでしょうか?

私はオーストラリアを訪ねた事が無いので、文献を探しました。

どうも、砂漠気候にはほとんど人が住める場所が無く、よってこの内陸部の乾燥地帯の平均気候を簡単に見つけてくる事ができませんでしたが、一番近しい都市として、ノーザンテリトリー(北部準州)のダーウィンと言う地域の月別平均気温を見つける事が出来ました。

月別 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温(℃) 31.7 31.4 31.8 32.6 32 30.6 30.4 31.3 32.5 33.1 33.2 32.5
平均最低気温(℃) 24.8 24.7 24.5 24 22.1 20 19.3 20.5 23.1 25 25.3 25.3
降水量(mm) 425.8 354 321.7 101.6 20.8 1.2 1.4 5.8 15.4 72.1 140.1 248.3
降雨日数(日) 21.1 20.1 19.4 9.3 2 0.5 0.5 0.6 2.3 6.7 12 16.4

 これを見て、一番最初に目につくのが、最高気温を最低気温です。
なんとこの地域では、最高気温も最低気温もほぼ1年通して同じです。
日本に比べて殆ど雨が降りません。


そして何よりも、最高気温は1年を通して30度を超えています。
つまり日中非常に暑い気候にあると言う事です。


アキクサインコを飼っている方の飼い方の勧めで、「アキクサインコは暑い地域に生息しているので非常に暑い場所でも問題なく生活できているようだ」と言う記述を目にします。なるほど確かに、日本の暑さでもびくともしないような暑い地域で生きている鳥のようです。

さらにはどうもオーストラリアの砂漠気候の一部の地域では、1日の最高気温が50度を超える地域も存在するようです。
このような暑い場所で生息しているのなら、確かに日本程度の暑さではたいした事も無いでしょう。


しかし…本当に問題なく生きていられるのでしょうか?
この年間平均気温と降水量を見ると答えが出てくる気がします。

暑い砂漠気候の平均最低気温は20度程度。
つまり30度以上と言う熱い日中を避け、出来るだけ涼しい日の出前、そして黄昏に活動することで種としての繁栄を遂げてきたのではないでしょうか。



アキクサインコは、ほかのインコ類に比べて非常に静かな事が知られています。


私はなぜ同じインコ類であるにもかかわらず、これほど静かなのだろうと思っていました。

しかしこれも気候と降水量を見ると大体想像できます。


多分、アキクサインコはその多くの活動時間を気温の低い明け方や夕闇に裂き、その分、日中は岩陰などの比較的涼しい場所で静かに眠って体力と体内水分を温存しているのでしょう。


しかし一つだけ言える事は、アキクサインコは寒さに弱いのではないかと言う事です。
当然なこととも言えますが、平均最低気温を見る限り、20度を切る事はほとんどないようです。

こう言う鳥を、日本の氷点下を切る外気温で飼育するのは種としては難しいのかもしれません。
ある程度の保温対策は必要ではないかと想像します。
例えば、屋内で飼育するようにするとか、風除けを付ける等です。
もちろん保温電球を付けられればいいでしょうが、沢山の羽数を維持している場合は、エアコンでの集中管理の方が安上がりなようです。



さて、以上の事は、鳥の特徴と彼らの野生での生活範囲から、私が考察した結果です。
実際とは異なっている部分もあるかもしれませんので、その場合はご指摘と知識の補完を下さりましたら幸いです。