冒頭から最後まで
疲労した顔のエリザベートでした。

 



確かに肖像画に近い風貌なのに
美貌の皇妃には全く見えず
 

でも、確かにエリザベート皇后。

単なる伝記映画ではなく
その時代の世間が求める女性像とその破壊
人間としての「エリザベート」が、どストレートに
描かれ、史実通りではなく、虚構と現実が入り混じっています。
歴史の流れや、エリザベートがどういった経緯で
オーストリア皇妃になったのか
などなど、歴史と時代背景・伝記をかじっていなければ
分からない部分も多々あります。

逆に言えば
背景を知っている人から見れば、余計な歴史が描かれていない分
エリザベートやフランツが、ロイヤルというメタファーが取り除かれた
より人間としての人物像が見えてきます。

ただし、ミュージカルやハプスブルク家関連書籍に
描かれたエリザベートを好きな方には
※特にミュージカル好きには
かなりショッキングかもしれません。

「ある視点部門」の受賞作品としては納得の映画でした。

印象的なシーンも多く
娘ヴァレリーや、ルードヴィヒとのやりとり
ルドルフや女官たちとの会話は、リアリティがあり
心の赴くままに生きたい。けれど、自我を通すと
周りには理解されないことを、自覚している。
幼稚ともいえる行動の先にある現実逃避

シシィ役の方がこの映画を製作するにあたり
「あの時代、彼女が出来なかったであろう行動を
この映画では描きたい」と発言されているように
虚実の部分が確かに多い気がします。

そのなかでも、フランツとの関係や
納得できない部分もありましたが


彼女の焦りや、葛藤が、自殺願望、
年齢を重ねることで、自らの価値がなくなっていくかもしれない
という恐怖。というシシィの本質ともいえる部分が

明確になっている気がしました。

あくまでも1878年の1年を描いたものと考えれば
まあ、そうなのかな。

1878年はエリザベートが40歳をむかえる。
映画の中でも
「平民女性の平均寿命」というような発言があります。

フランツも年齢と容姿を皮肉ったような発言をしますし。

皇后になりなくなかったはずの皇后は
象徴としての容姿に固執している
あまりにも逆説すぎて、さらに疲労困憊した表情に見える。

終盤は、どこか象徴としての姿を一見、
捨て去ろうとしているようにも見えますが、

深読みすれば、戦い続ける気もする。
もしくは、逃げ続けるのか。

王宮の華やかな部屋だけではなく
その裏側(部屋から部屋への寒々しい廊下や階段)が
ちゃんと生活のひとつとして映されてたり

史実と虚実の中で、削ぎ落されたものと
そこから見えたのは
社会の女性の扱いと、その中でも必死で己の生き方を模索する
いち女性

シシィだけじゃなく
その時代の女性は、中指立てたいことがあったのかも
知れない。

 

「ある視点」からのエリザベートでした。