おはようございます
本日はお休みの土曜日、朝から更新です
さて、昨日はACSの産後ママが運ばれて来たよというお話をしたのですが、本日はACSならびに産後ママと循環器について書いていこうと思います。
ACSママの記事はコチラから
ACSとは
ACSとは急性冠症候群(ACS:acute coronary syndrome)のことです。
冠動脈のプラーク破綻を起因として急速に血栓形成・閉塞が進行しつつある状態のことを指します。
プラークとは、血管内膜の動脈硬化による部分的な肥厚のことです。
硬くなって盛り上がってきた部分ですね。
そのプラークがなにかの拍子にやぶれてしまうと、それを止血すべく中から血がでてきて、血栓ができるんです。
かさぶたみたいなものです。
そしてそれが塊となり、血管に詰まってしまう。
この状態が進行している状態を急性冠症候群、略してACSと言います。
具体的には、急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)と不安定狭心症(Unstable angina pectoris: UAP)の2つをまとめて急性冠症候群と呼びます。
急性心筋梗塞とは
急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)とは心臓の血管、冠動脈が完全に詰まって死に至る状態です。
心臓の血管は、心臓に冠(かんむり)のような形で沿って走っているので、冠動脈(Coronary artery)と言います。
冠動脈が詰まってしまったのが急性心筋梗塞、詰まってはいないけど今にも詰まりそうな状態のことを狭心症と言います。
原因
急性心筋梗塞は動脈硬化が原因です。
- 高血圧症
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 喫煙
- 大量飲酒
- 加齢
- 冠動脈疾患の家族歴
など、心血管疾患のリスク因子が多ければ多いほど起こしやすいです。
症状
- 安静でも20分以上継続する激しい胸痛、冷汗、嘔気
- 心窩痛や背部痛などの放散痛のときもあります
- 高齢者や糖尿病患者では胸痛をまったく認めないこともあります(無症候性心筋虚血)
不安定狭心症とは
狭心症(Angina pectoris: AP)とは心臓の血管、冠動脈は詰まってはいないけれど今にも詰まりそうな状態で、急性心筋梗塞の一歩手間の状態です。
狭心症の中でも特に急性心筋梗塞に移行するリスクの高い狭心症を不安定狭心症(Unstable angina pectoris: UAP)と呼びます。
症状
- 前胸部・胸骨後部の胸痛がある。(労作時、安静時を問わない)
- 労作時のみだった胸痛がはじめて安静時に生じたり、労作性のままだが増悪傾向にある。
- 下顎・頸部・左肩または両肩・左腕・心窩部の放散痛がある。(放散痛とは広く外側へ散らばるような痛みのことです。心臓が原因の場合、狭心症や心筋梗塞などで起きた刺激が心臓だけに定まらず、周囲に散らばります。)
- 胸痛が数分から20分程度持続する。
今回のママは出産後まもなくの時期にACSを発症していますね。
妊娠期には血液循環量が増大する、ということはご存知の方も多いと思いますが、ではなぜ出産後にACS??
出産と循環器
実は産後もACSリスクの高い時期になります。
特に産後1週間は、心臓に戻ってくる血液量が短期間のうちに大きく変化します。
妊娠・出産の負荷(負担)は、産後しばらくの間、続くからです。
妊娠中は自分の体調を優先にすることができますが、出産後は産まれたばかりの赤ちゃんの世話をしなくてはなりません。
自分の体調など二の次になってしまう、これもリスクとなります。
周産期心筋症
周産期心筋症(Peripartum cardiomyopathy:PPCM)とは、疾患の既往がなく心不全を発症する原因が他に見当たらない女性が妊娠後期から分娩後5か月以内に新たな心不全症状が出現するものをいいます。
発症頻度は日本では2万出生に1人とされています(国際地域差あり)
発症機序は不明ですが、プロラクチンの関与などが推測されています。
(出典:拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関するガイドライン 2011)
リスク因子
- 30歳以上での出産
- 子癇
- 妊娠高血圧の既往
- 長期間の子宮収縮抑制剤の使用
- 多胎妊娠
- アフリカ人
- コカインの使用
予後
日本の研究では約6割で心機能が改善し、1割で死亡もしくは心移植待機となっている。
(参考文献:神谷千津子 他:わが国初の周産期心筋症の全国 後方視的・前方視的症例調査に関する研究より)
母乳哺育
- プロラクチンが産生されることを懸念して、母乳栄養を推奨しないヨーロッパのガイドラインが存在する。(参考文献:Eur. J. Heart Fail. 12(8), 767–778, 2010より)
- 一方で、母乳哺育をした55例の周産期心筋症症例の67%に有害事象はなく、心機能も有意に改善 していると報告されている。(参考文献:Int J Cardiol. 154(1):27-31, 2012より)
- Expert opinionとして母乳栄養のメリットを 考慮すると、母体の状態が安定している場合は、 母乳栄養を禁止するべきではないとされている。(参考文献:J. Am. Coll. Cardiol. 64 (15), 1629 –1636, 2014より)
妊娠・出産は母体の心臓にとって負担となります。
出産後に運動やリラクゼーションなど提供する場合にも、循環器症状が起こりうる可能性があるということを理解しておく、そして初期対応を知っておくことは安心安全な産後ケアサービスの提供にもつながりますね
循環器病といっても、さまざまな種類と状態があり、妊娠・出産のリスクはそれぞれの方で大きく異なります。
より安心で安全な妊娠・出産をサポートするためにも、日々我々産前産後に従事する専門家は日々学び続けることが大切です。
みなさんのケアをより安全で安心してご利用いただけるよう、少しでもお役に立てればと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます
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