ディアンヌの死とそれぞれのアイデンティティ | ★★剣を持った青獅子★★

ディアンヌの死とそれぞれのアイデンティティ

美しい死に姿。






シャルロットの時もそうでしたが、死に顔が美しくて、目が離せないほどです。





あんなにキラキラと輝いていて幸せそうに笑っていたディアンヌ。


そして嬉しいけれど、少し寂しげな顔をして微笑んでいたアラン。









無邪気で優しい大切な妹の笑顔がある日突然消えて無くなる。



花嫁衣装のまま死んだディアンヌのそばで悲しみに暮れるアランは、いつになく小さく見えました。


結婚して、自分の手元からかわいい妹が離れていく寂しさを噛みしめていたアランでしたが、
まさかこんな形で永遠の別れをしなくてはならないだなんて思ってもみなかったことでしょう。







原作では、オスカルがアラン宅に出向いたときにはディアンヌは既に白骨化していました。



これが、あの可憐なディアンヌだとは想像がつかない程の無残な姿で描かれています。







『結婚する』と言って嬉しそうにするディアンヌの姿を見て、
オスカルはふと、思います。



結婚する、ということは女にとってそんなにも幸せなことなのだろうか。







この時ジェローデルに思いを告げられて、
オスカルは困惑している真っ最中なのでした。


女としての幸せ=結婚
であるのならば、この結婚話は喜ばしいものであるはずなのに。


ジェローデルに求婚されても嬉しいどころか、違和感を覚えてしまう自分がいる。


自分にとっての幸せって、一体何なのだろう。


この、結婚するディアンヌの幸せそうな笑顔を見て、オスカルは『武官として』以外の自分の幸せについて考えたはずです。






そしてアンドレは?と言うと
かの有名な草むしりのシーンで





どんなにひくくてもいい
貴族の身分さえあれば、、、



と、心底思います。



オスカルを誰よりも理解し、
オスカルを誰よりも愛し、
オスカルを誰よりも守ってやれる、



と、自負している男に唯一足りないものは『身分』。



アンドレは幼少の頃から大貴族ジャルジェ家に引き取られ、何不自由なく育っています。


そしてジャルジェ将軍はアンドレのことを
『馬蹄』・『従僕』以上の存在として見ているようでした。


アンドレはオスカルの良き理解者。


男の子が欲しくてたまらなかった将軍は、この素直な青年アンドレをオスカル同様、まるで自分の息子のようにかわいがったのではないかと思うのです。




アンドレはベルサイユにも出入りするほどのハイソサエティーな平民です。

しかし、
オスカルの夫になる為には『貴族の身分』が必要。


オスカルに求婚する貴族、ジェローデルを前に

『身分さえあれば!』

と涙を流します。





そしてアラン。

身分は貴族であるけれど、
貴族の身分が欲しい平民アンドレには想像が出来ないほどの貧しい暮らしをしています。


アランの家族は衛兵隊宿舎で出される食事を面会日に持ち帰ることで飢えを凌いでいました。


名前ばかりの貧乏貴族であるが故に、
ディアンヌの婚約者は土壇場になって小金に目がくらんで平民の金持ちの娘と結婚したのです。




金も力も何もない
この惨めったらしさはどうだ!!





例え平民であったとしても
金さえあれば
ディアンヌは捨てられなくて済んだのに!



と、でも言いたげなアランの泣き顔。







どうあれば、幸せだと思えるのだろうか。


何が正解かなんて、誰にも分からない。






オスカル、アンドレ、アラン
3人の苦悩がディアンヌの存在を中心として描かれているような原作の構成が大変素晴らしいと思いました。







婚約者はディアンヌの事を
飲み残したコーヒーのように捨てた


のだと語る母。





なんともショッキングな、表現です。







アニメではディアンヌの足下から顔までがパーンで映されますが、ずっと右側に首をつったロープが見えています。




細かいところにまで手の込んだ演出が施されているなと、このシーンに釘付けでした。





衛兵に咲くリラの花、ディアンヌ。





リラは大変可愛らしいピンクの小さなお花を咲かせます。




アニメでは、ディアンヌの亡骸にこのピンクのお花が散りばめられているように思います。




原作でも幸せそうなディアンヌの背景に、このリラのように可愛らしく小さなお花が描かれています。







リラの花が可憐であれば可憐であるほど、デイアンヌの死が美しく、また悲しく映りました。