フェルゼンとユリウス、オスカルとアレクセイ | ★★剣を持った青獅子★★

フェルゼンとユリウス、オスカルとアレクセイ




1789年7月

フェルゼンは革命騒ぎで混沌としているパリに向かう。

彼は愛するマリーアントワネットの身を案じて自らの危険を省みずに飛び出して行った。


その姿がオルフェウスの窓のユリウスの姿と重なった。




これは
オルフェウスの窓を知っていらっしゃる事を前提に書いた、私の独り言です。


ユリウスの愛した相手は
ロシア革命家の英雄だった男の弟と言う立場の人間。
周りからの期待を一身に受け、
そして兄からバトンタッチして受け継いだ祖国への情熱を、恋愛のために絶やすわけにはいかない立場なのだ。




革命から逃れられない立場の相手を愛する外国人、という共通点のあるフェルゼンとユリウス。


自分を犠牲にし、国境を越え愛する人を
追い求めるというキャラクター。

自己犠牲型尽くし人間。


巻き込まれなくても済んだのに、自ら革命に飛び込んでいってしまった人たちだ。



一方、オスカルやアレクセイだって、
革命から逃れてこのまま愛しい人と静かに暮らす、という選択肢が無かったわけではないのに、その責任感と正義感の強さから
自分の幸福のみを第一優先には出来なかったタイプ。

こちらもある意味自己犠牲型。

一個人の恋愛を優先するか
祖国の平和を優先するか

進んだ方向は真逆だったが、
フェルゼンとユリウス、
オスカルとアレクセイ

どちらのタイプも大切な人を愛し、守りたいという想いは人一倍強かったはず。

そのために険しい運命に立ち向かったのに、結局4人とも幸せな死に方をしていない。



フェルゼンは祖国の民衆によって虐殺され、
オスカルはバスティーユの攻撃によって命を落とし、
アレクセイは妻=ユリウスに会いに行く途中で銃殺され
ユリウスは、かつてユリウスが殺した異母姉を想う従僕の男に暗殺される。



人間が引かれ合うパターンとしては
凸(能動的)と凹(受動的)の真逆の性質の性格がお互いの足りない部分を補い合って助け合って上手くいく場合と


凸と凸、凹と凹、□と□、のように
同じ性質の者がお互いの似たような性格に心地よさと理解を示して上手くいく

という場合の二種類だと思うが



ベルばらでは『優先すべき幸せ』に対する価値観に関しては真逆のタイプではあるが
ともに能動的な凸タイプの
オスカルとフェルゼンが結ばれることはなく、この二人の相手には受動的な凹タイプのキャラクター達が用意されている。


亡命を計画したフェルゼンに身を委ね、
人生を預けるマリーアントワネット。

そして
革命に身を投じるオスカルに異議を唱えることなく自らの人生を愛する人を守るために捧げたアンドレ。

(アンドレも尽くし型か)


ベルばらでは、
凸と凹が対になる構図だが


オルフェウスでは、
凸と凸、能動的な2人が恋に落ち、
まるで綱引き合戦のようだった。



追いかけるユリウス

ユリウスを愛する気持ちはあるものの、
革命の仲間を放っておくことは出来ないアレクセイ。


とりあえずこの繰り返し。
時にはアレクセイの足手まといになる
ユリウス。

こちらは『あちゃー』と思うけどユリウスはアレクセイの事しか見ていないので
度々足手まといになっていたが、
本人はまったく理解できない様子。


オスカルによく似た容姿のユリウスの
自分の事しか考えられない言動が、
オスカルとはかけ離れすぎて何度も
嫌いになりそうでした。笑
アントワネットみたいな容姿だったならば
すんなりと受け入れられたのかもしれない。




結局この綱引き勝負、ひとまずは
ユリウスの勝利。


ほんの一時だったが
革命に運命を捧げたはずの男の心を自分の物にしたのだから。




しかしアレクセイが懸念していた通り
革命家としての活動と愛する者を守ること、その両立は難しく、身ごもったユリウスに会いに行った先でアレクセイは殺害される。


アレクセイを心配するあまり、ユリウスは敵の前で『アレクセイ!あぶない!』と、
彼に声をかけてしまう。

そのユリウスの声のせいで
アレクセイはその存在を敵に知られてしまうという結果になったのだ。



なんて悲しい結末。

ユリウス、彼を愛する度に彼を危険な立場に追い込んでしまうのだが本人はやっぱり全く気がつかない。

そんな展開になったオルフェウスの
凸凸ペア。



ユリウスのような容姿のオスカル





アレクセイのような容姿のフェルゼン



オスカルとフェルゼンは結ばれることがなかったが、
ユリウスとアレクセイは夫婦になる。

結果、悲しい別れが待っていたのだけれど
オスカルが実らぬ恋をしていたことを想うと、このユリウスとアレクセイの姿を見て
、ベルばらで見てみたかったもしも…のカップルを見ることが出来たようにも思う。



しかし、、、


ユリウスの目の前でアレクセイが殺されるシーン、

そして赤ちゃんを死産してしまうシーンの
衝撃といったらありません。


あんなに苦労してやっと幸せを掴んだと思ったのに…



もう、虚無感半端ありません。

マンガを読んで感情移入をしすぎて泣いたのは初めてでした。(T_T)


私は完全に男装の麗人である
主人公ユリウスに最初オスカルの面影を求めてしまったので
途中から

『ユリウス、都合悪くなると記憶喪失になったり錯乱したりするし、愛する人の足手まといになってるの気がつかないの?自分のことだけ考えてて、好きになれない』

と、思っていたのですが、

この残酷な結末に関しては、
いくら何でも不幸すぎる、と
ユリウスに同情するしかありませんでした。


アンドレ似のイザークは?
と言えば、あれだけの才能を持っていながら大挫折を経験する。






これも酷い。
彼は革命に巻き込まれたりはしないのでラストまで命はあるのですが、
生き様としては、生き地獄。


酒場のピアノ弾きになんかならなければ
ロベルタと出会わなかったのに。

あの、曲を聞かなければ
貴方の手と才能は輝かしい物になっただろうに!


と、
『これがバタフライイフェクトか…』
ってしみじみ思ってしまうくらい悲惨。

どうって事ない行動やタイミングが運命を大きく狂わせるのだ、という暗示のキャラクター。


イザークの人生には
池田理代子の
秋の華・sailingに共通する

『後悔したってどうしようもないけど、
あの時ああしていれば、私には違う未来が確実に用意されていたのだろうな』



と、いうような手に入れられなかったもう一つの未来への喪失感を感じます。


そして、もう1人の尽くし型人間
ロベルタ。




彼女は家庭環境に恵まれなくて非常に可哀想なのだけれど、『尽くし方』が
大変間違っている。


イザークの手の治療のために
売春をしてお金を作る。

お金を作るためにイザークの楽譜の著作権を三流会社に勝手に売る。


彼を愛しているがゆえの行動なのに、
その全てがイザークの怒りを買う。


心優しきロベルタは無知すぎたのだ。

私自身もロベルタにイライラして、
イザークの怒りはごもっとも!と、共感してしまうのだが
これはユリウスにも共通して言える事だな、と思っている。



ユリウスは運が良かっただけで、
ロベルタよりも危ない発言を何度もしている。
ロベルタの場合、被害に遭うのはイザーク1人だけだけど、
ユリウスの場合はアレクセイだけでなく、彼の大勢の同士を巻き込んでしまう可能性があった。
(本人自身が、ロシア皇帝の隠し金を預かる家柄の当主だというだけでも、危険人物になりうるのに ヒヤヒヤ)


愛する人のピンチを救える尽くし型人間としての成功例は池田作品でいうとアンドレくらいかな。


アンドレは、ご存じの通り一度オスカルに王妃落馬事件で命を救ってもらったその後には
黒い騎士事件、
ジャンヌの事件、
オスカル強姦未遂事件、
ブイエ将軍の指令官室事件、
父成敗事件、
そしてオスカルを狙って飛んできた敵の玉に打たれて絶命。



愛する人をこれだけ救ってるのだから
充分です。


フェルゼンは、オスカルを救ったことはあっても(二回も!)、愛する王妃の立場を自分とのスキャンダルで悪くさせ、亡命も失敗させてしまっているという
本当に守りたい人を守れない残念な事になっている。



人生、うまくはいかないのね。



と、ただただどんよりするのでした。




とりあえず、オルフェウスは登場人物たちがハッピーにならないお話。


ユリウスの姉、マリアバルバラと
ユリウスの友人ダーヴィットのこれから始まる恋と、

イザークの息子、幼いユーベルに音楽の才能が有ることに気が付く、


というのが唯一の希望、ハッピーの予感。


あとは全滅です!!!!



とにかく、史実に基づいた社会的、歴史的に大変すばらしい作品で有るということと、

そして
オスカル、アンドレ、フェルゼン
の面影を持った人たちの活躍を見られる!


という点ではとても良いのですが、


読み終わった後の不幸な感じと、
空っぽになる感じが
ベルばらの100倍くらいあります。笑




また、オルフェウスの塔の上から下を見たときに出会った人と恋をするが、悲しい結末が用意されている


だなんて言ってるけど、オルフェウスの窓に立たなかった大勢の登場人物も、
窓に立った人たちと同じくらい不幸に恋愛を終わらせてるのを見ると、

もう、窓とか関係ないじゃーん!!!
みんな不幸になったよー!!!


と、思う作品。


そして、フランスが革命から長い時を得てファッションの都、流行の発信地として
賑やかに発展しているのに対して



ロシアは落ち着くまでにまだしばらく
時間がかかりそうです。
すばらしいアイススケートの選手やバレリーナがいる芸術の都なのに、政治に関する暗殺事件がつい最近も起こっているのだから、まだまだ現代のアレクセイたちは姿を消せないでいます。



ロシアにこんなに大変な時代があったなんて想像できないよね、


と、オルフェウスの窓の読者が
良い意味でアレクセイとユリウスの悲運な人生とロシアの様子とを結びつけることが出来ない時代が来ることを願っています。