発売されてからかなり過ぎているので、”今さら”すぎて申し訳ないのですが(^^;、

ずっと積読状態だった「別冊映画秘宝 シャーロック・ホームズ映像読本」、やっと読めました~


ジョンのように「Excellent!!! Amazing!!! Fantastic!!!」と心からの賞賛を贈りたい本です。

シャーロック・ホームズを愛する全てのファン必携!!!と言ってしまいたいくらい、内容が充実してます。


雑誌ではなく、ムック本なので、まだ購入できますよ~(^^)


別冊映画秘宝シャーロック・ホームズ映像読本 (洋泉社MOOK)/アンドリュー・T・スミス

¥1,680
Amazon.co.jp

この表紙からおわかりの通り、この本の前半部分の”21世紀のホームズ”では「SHERLOCK」が、

後半の”20世紀のホームズ”ではグラナダTV版のホームズが、それぞれ大部分を占めているという、

私的には大変に美味しい(笑)、いや、ありがたい内容で構成されていました。


もちろん、「SHERLOCK」やグラナダ版以外のホームズ作品について詳しく書かれていて、

今までに映像化されたホームズものについて、ほぼ網羅してると言ってもいいのではないでしょうか。


読み応えがありすぎて、少しずつ読んで、また読み返して、の繰り返しでした。

なので、進まないったらありゃしない(^^; 

知ってる作品はもちろん、未見の作品についての解説も面白くて、ファン魂くすぐられまくりでした(笑)


ということで、かなり遅ればせながらですが、感想など。



■ 21世紀のホームズ ~「SHERLOCK」~


この本の「SHERLOCK」特集の最大の魅力と見所は、多くのファンサイトさんでも書かれていると思いますが、

モファティス・コンビ、ベネさん、マーティンのインタビュー記事です。


今まで、一部のものしか日本語で出ていなかった製作陣とキャスト2人のインタビューが、
この本では完全版に近い内容で掲載されたようで、本当にありがたいです。


「ミステリ・マガジン」(2012年9月号)に掲載されていたインタビューも載ってました。

購入できなかった方も、ここで読むことが出来ますので、「SHERLOCK」ファンの方には本気でオススメ!!!


インタビューの内容については、盛りだくさんすぎて語りきれません(^^;

彼らが「SHERLOCK」という作品や自分の役柄等をどう捉えて、どう臨んでいるのか、

興味のある方は、彼らの語る言葉を直接読んで、熱い思いを感じていただきたいです。


特にモファティスコンビのインタビューは、いつものことではありますが(笑)、

正典への深い愛情に裏打ちされた解釈や考察に満ちていて印象深いです。

もう十分にわかってることなんですけど、彼らのあふれる出る「正典大好き!!!」スピリットが

バシバシ伝わってくるのが嬉しくて楽しくて、つい何度も読み返してしまいます。


「SHERLOCK」を「SHERLOCK」たらしめている、素敵なスタッフ・キャストに恵まれた喜びを

改めて感じられる、充実の大特集だったと思います(^^)


シャーロキアンのためのロンドン案内とかもあって、見てるとますます行きたくなってきますね~



■ 21世紀のホームズ ~「SHERLOCK」以外~


「SHERLOCK」の他に、ガイ・リッチー版や、アメリカCBS制作の「Elementary」についても書かれていて、

そちらも面白かったです~


ガイ・リッチー版について、”ミステリーとアクションを(無理やり)融合させたのが成功の要因”で、

”活動大写真”だという見解にすごく共感!!

あの映画の面白さは、まさにそこにあると思います。

正典そのままのホームズではないけれど、ホームズものの新しい楽しみ方を見せてくれた映画なので、

うなずきながら読んでました~


「Elementary」は、1話をご覧になった方が書かれていて、実際のドラマがどんな感じになっているか、

その一端が垣間見えてきました。こちらもなかなか興味深かったです。


ここを読むと、このドラマは「SHERLOCK」とは完全に別物なのがよくわかりますし、

比較したり、批判しあったりすることには意味がないとしみじみ感じています。


日本では見られないのが残念ですが、アメリカでの視聴率がいいらしいとの記載がありました。

ということは、先になるとしても、いつか日本でも見られるかも??と、淡い期待を抱いております(笑)



■ 20世紀のホームズ ~グラナダTV版~


”20世紀のホームズ”で最も多くの紙幅を割いているグラナダTV版のホームズも、

製作の過程、キャラクター・ファイル、全エピソード(41話)のガイド、シリーズの総論、と

かなり嬉しい充実ぶりでした!!!



SHERLOCK HOLIC-GRANADA

これは本文134ページで使われているジェレミーの写真(この写真、かっこいいんです!!!)の

別バージョンだと思われます。ネット上で見つけた時は狂喜しました(笑)

ビッグ・ベンを背景にしたこの構図、かっこよくて大好きです!!!


グラナダTV版の大ファンでもあるので、予想以上のページ数だったのが嬉しい驚きでした~

まさか全話のエピソード・ガイドまで載せてくださるとは……!!!


それぞれのエピソードのあらすじだけでなく解説も書かれていますので、これからご覧になる方にとっても、

私のようなリアルタイムからのファンにとっても、いい鑑賞の手引きになると思います。


そして、総論も素晴らしい!!! 詳細な解説に、書かれた方のグラナダ版への愛が感じられて、

じっくり何度も読み込んでしまいました。


今まで知らなかったことに感心したり、作品や俳優さんたちへの論評に共感したりで、

「ああ、私は本当にグラナダTV版のシリーズ大好きだなあ……」って、改めて感じます。


正典の話を忠実に映像化しようとしたスタッフ・キャストの皆さんの誠実さ、真摯な努力

そして深い愛情が、今回の特集を読んで伝わってきて嬉しかったです。


本文内にも同じ意味合いのことが書かれていましたが、私が小学生の頃に初めて

”正典のホームズ”を読んだ時に思い描いて、ずっと見てみたいと思っていたものを、

このシリーズが見せてくれました。

私が見たかったホームズとワトソンが、ここにいました。

だから、このシリーズをリアルタイムで追いかけて見ていた時の感動が、今でも忘れられないのです。


そんなグラナダTV版が大好きな思いが、今回の特集を読んで、より一層強くなりました。


もう一度、最初から全話見返してみたいな~



■ 20世紀のホームズ ~グラナダTV版以外~


さらに嬉しかったのが、”20世紀”のホームズ映像化作品の歴史をほぼ網羅していたこと。

サイレント映画の時代からのホームズ映像化の流れが書かれていて面白かったです。

(ウィリアム・ジレットの写真も見られるとは!! 舞台版のホームズですが、初めて写真を見たかも)


BBCが正典ホームズのTVドラマ作ってたの?!とか、ホラー風に作った映画もあったの?!とか、

知らなかったことがたくさんあって、こちらも読み甲斐がありました。


「CASEBOOK」でも過去の映像化されたホームズについて書かれていますが、

モファティスさんたちが影響を受けた、ラスボーン版、ワイルダー版、グラナダ版についての内容なので、

それ以外の映像化作品の歴史を知ることができて、とてもありがたいです。


そのモファティス・コンビのお気に入りのラスボーン版やビリー・ワイルダー版についても、

「CASEBOOK」とは異なる切り口で書かれているので、併せて読むとより面白いと思います。


特に、ワイルダー版のこだわりを読むと、気になってしょうがない!!!(笑)

ビリー・ワイルダー監督がかなり愛情を込めて作ってくれたことが伝わってきました。

これは見てみたいですね~ 


そして、ラスボーンやワイルダー版のの写真がたくさん載ってたのも嬉しかったです!!!

ラスボーンのスチールを見ていると、彼がホームズ役者の代名詞になった理由がとてもよくわかりますね。


さらに、今、私が一番気になっているロシア(ソ連)版のホームズについても、思っていた以上に

詳しく、しっかり解説が書かれていたのが嬉しかったです~~


評判通り、完成度が高そうですね。しかも、グラナダ版よりも早く、それこそ東西冷戦の時代に

”鉄のカーテン”の向こう側で作られていたことにびっくりです!!!


ベルリンの壁が壊れて、ソ連がロシアになって、冷戦の時代が終わってくれたからこそ、

このソ連版ホームズがかつての西側世界に出てきたのかと思うと、歴史の流れにも感謝しなくては。


ソ連版の製作のコンセプトや、ワシーリー・リヴァーノフのホームズとヴィターリー・ソローミンのワトソンが

どんな関係性を作品の中で描いているのかを読むと、正典の大事な部分はしっかり生かしつつ、

他のシリーズとは一味違った魅力を描き出している様子が伺えました。


ソ連版のシリーズ、本気で全部見たくなってきましたよ(笑) 


……と、ざっと振り返っただけでも、
予想を超える充実した内容で、

感嘆の思いを感じながら読ませていただきました。

これからもきっと何度も読み返すと思います。


原著者の方々、翻訳された方々、発行に尽力された方々に、心から感謝の気持ちをお伝えしたいです!!!

ありがとうございました!!!



最後に、読み終えた時に感じたことを少しだけ書きます。


本文内のグラナダ版の特集を締めくくる言葉(205ページ)について。


「ホームズとワトソンという物語のコアがしっかりしてさえいれば、

どんなアレンジがあっても成功する要素がある。

とはいえ、コナン・ドイルの原作や、パジェットのイラストを忠実に再現し、

バランス型人間のワトソンと、

花火のようなきらめきと複雑な内面を併せ持つホームズといわれたら、

結局はデヴィッド・バークとエドワード・ハードウィック、

そして魔術師ジェレミー・ブレットに戻ってきてしまうのである。」


この言葉にものすごく共感しました。



グラナダTV版は、ホームズ・ファンにとっての”HOME”を作ってくれたと思います。


正典ホームズのファンになった方は、誰でも一度は、「正典の話を映像化したドラマを見てみたい」と

思うのではないでしょうか。

そんな思いに応えてくれたのが、このグラナダTV版だと思います。


本文内のインタビューでモファットさんが語っていたように、グラナダTV版が制作された

20世紀の最後(1980年代~90年代)が、正典を(多少の改変があっても)そのまま映像化できる

”賞味期限ギリギリ”の時代であったのは間違いないと思います。


(今、グラナダTVのコンセプトでホームズのドラマを作ったとしても、

あの19世紀後半から20世紀初頭の時代の、言葉では表現できない空気感を出せない気がします。

20世紀の世紀末の時代に制作できたから、あのどこかに影を帯びた時代の質感や

正典そのままのホームズとワトソンの存在感を表せたのではないでしょうか。

逆に、「SHERLOCK」やガイ・リッチー版は、21世紀になったからこそ生まれた作品ですよね。)


そして、モファットさんがグラナダTV版を”快挙”というくらい大きな成功を収められたのは、

そのギリギリの時代に間に合ったことと、そのタイミングに、あのキャストとスタッフが揃ったからこそで、

大きな”天の配剤”があったことの幸いを、改めて噛み締めました。



もちろん、「SHERLOCK」を始め、ラスボーン版やワイルダー版、ソ連版、ガイ・リッチー版に至るまで、

様々な形の”シャーロック・ホームズ”が、それぞれのタイミングとこれしかないキャスティングを得て、

それぞれの良さと輝きを持って、制作されています。


そして、それぞれに多くのファンを得ていて、それぞれの功績はとても大きいと思います。

優劣を語るつもりはありませんし、その必要もありません。



ただ、正典の物語のホームズが見たい時に、戻って行ける”HOME”となる作品を作ってくれた

グラナダTV版の功績は、映像化の歴史の中で、他とは少し違った意味合いを持って、

輝きを放っているように私は感じています。





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