Scentlyさんのキャンペーンでクーポンをいただき、ちょうど自分の誕生日も近いということで、二本目の「推し香水」を作っていただきました。自分から自分への誕生日プレゼントですね。大好きなんですよ、自分のために何かするの。

 

前回は「永流堂奇譚」の最推しにして最愛なる店主の香水を作っていただきましたが、今回は二番めの推しであるジョルジオで香水を作っていただきました。

 

 

ジョルジオは永流堂奇譚第七話「センリの掛け軸」から登場するキャラクター。

アポストリア教団という宗教団体の司祭であると同時に、異端取り締まり部署の長でもあります。

見た目は人間ですが「深淵を見た人」の石板の欠片から作られた偽天使で、基本的には人間が嫌い(なので大体機嫌が悪い)。潔癖で厳格、教祖に対する忠義心が厚く教団のために勤勉かつ実直に働いています。

しかし、それに見合った恩寵を得られていないと感じており、もっと認められたいという強い想いをくすぶらせています。

持っている能力は「破壊と再生」。能力も性格も表裏の顔もすべてが真逆といった感じですね。

 

外箱です。開封前に箱の隙間から漏れる香りをクンクン……

おや、これはハーブの香りではないですか

オーダーシートを記入しながら自分なりに香りを考えていたのですが、ジョルジオは絶対ハーブ系だなと思っていたので、すでに解釈が一致しています。これはかなり期待できますね。

 

中には香水本体と香りのメッセージシートが入っています。ふたを開けた時点で結構強めのハーブの香りがしています。他人を寄せ付けない潔癖で厳格な雰囲気と強い存在感がにじみ出ています。

メッセージシートの色はジョルジオが身に着けているカソックの色。高位司祭の色なのですが、異端取り締まりとか言う血生臭いことやっているせいか血の色にも見えますね。

 

さて、お楽しみのメッセージシート開帳

 

トップノート:ローズマリー、カンファ―(樟脳)、バーベナ、etc

ミドルノート:アミリス、クラリセージ、キャロットシード、etc

ラストノート:ベチバー、ヒバ、etc

 

 

「魔よけ」や「薬」として使われてきたものが多いですね。ハーブ系だからそうなるのは当然と言えば当然ですが、組み合わせている木原料のカンファ―、アミリス、ヒバには虫よけ効果があるといわれていますし、とにかく潔癖で他を寄せ付けない雰囲気が出ていますね。

また、カンファーは「カンフル」とも呼ばれますが、ビジネス用語では「ダメになったものを立て直す措置」という意味で「カンフル剤」という言葉を使います。潔癖で他者を寄せ付けない雰囲気や再生の力を持つジョルジオのイメージにピッタリです。それにしても、トップからラストまで虫よけって、どこまで潔癖なんだ。

 

 

メッセージシートではローズマリーとクラリセージがピックアップされていました。

この二つ、食用に用いられるだけではなく宗教儀式にも用いられてきたキリスト教と関わりの深いハーブです。ジョルジオはアポストリア教団の司祭にして偽天使という設定ですが、彼が所属する教団はカトリックをイメージしています。教団のシンボルも「トリア十字」と呼ばれる十字架のような木のような形ですしね。

 

ローズマリーは聖母マリアがヘロデ王の追手から逃れるため、幼子イエスをその茂みのなかに隠したという伝説があるそうです。魔よけ、病気よけとして古くから利用されており、結婚式や子供の誕生、葬儀などの場面で祝祭のハーブとして使われました。

また、古代エジプトではミイラの棺に入れて腐敗を防ぐために使われ、再生や不死のハーブと考えられていたそうです。

和名は永遠の青年を意味する「万年郎」。ジョルジオの外見は「青年」よりは少し上ですが、実際の年齢(年齢というべきかどうか)は数百歳。教団の司祭で、破壊と再生の力を持つ不老の偽天使という設定にめちゃくちゃマッチしていますね。

また、花言葉として「貞節」「誠実」と書かれていますが、ローズマリーは歴史が古いハーブなので花言葉もかなり多く、「追憶」「変わらぬ愛」「一貫性」「忠誠心」「私を忘れないで」という花言葉もあるようです。

 

ん…? 「私を忘れないで」ですって? それってあの…

勿忘草と同じ花ことばではないですか?!

 

ジョルジオと勿忘草の関係ってオーダーシートに書いたっけ???ネタバレになるので詳しくは書けませんけど、ジョルジオと勿忘草には深い関係があるんですよね。合冊版の書き下ろしも「勿忘草の契り」ですしね。これ、偶然だとしたらすごいなぁ。

 

クラリセージもかなり歴史が深いハーブで、ケルト人は宗教儀式の前にクラリセージのお茶を飲んでいたとか、薬用に使われてきたという話があります。初代神聖ローマ帝国皇帝のカール大帝は領地で栽培すべき有用な植物の一つとしてクラリセージをあげており、中世の教会では盛んに栽培されていたそうです。目の洗浄に使われ「キリストの目」とも呼ばれていたとか。

クラリセージの花言葉は「透明な」「明るい」「心を清める」です。これは目の洗浄に使われてきて視界がクリアになることからついた花言葉とのことですが、なんだか「哀傷のヒトガタ」でのジョルジオの変化を示唆されているように思えてなりません。

また、セージ(サルビア)全般には「尊敬」「知恵」という花言葉がある他、赤いセージには「燃える思い」青いセージには「永遠にあなたのもの」などの花言葉もあります。ジョルジオのテーマカラーである赤のセージの花言葉は彼の秘めた熱にピッタリですね。(個人的には、青のセージの花言葉もすごくジョルジオです)

 

 

もう一つ、個人的に「ローズマリーとセージ」という組み合わせで嬉しかったこと

それがこれ

 

「スカボロー・フェア」です。

この曲には繰り返し「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」という歌詞が出てきますが、この曲の歌詞はそこだけではなく全体的にとても不思議です。

カンブリックのシャツを縫い目も残さず針も使わずに作れとか、涸れた井戸でそのシャツを洗えとか、海と岸辺の間に1エーカーの土地を探せとか、とにかく無茶ぶりをしておきながら最後に「そうしたら彼女は私の恋人」で終わるのです。

 

スカボロー・フェアの歌詞については二通りの解釈があります。

 

スカボロー・フェアの元となったのはスコットランドの「エルフィン・ナイト」という古いバラッドといわれているのですが、「エルフィン・ナイト」は少女に求婚された妖精の騎士が断る口実として「切ったり縫ったりしないでシャツを作ってくれたら結婚するよ」と無茶ぶり要求して、少女は妖精の騎士に無茶ぶり任務を言い渡して「これができたらシャツを取りに来なさい」と答えるという内容になっています。スカボロー・フェアはこの「無茶ぶり部分」だけを取り出したものなので、その歌詞はかぐや姫的な意味だとするものが一つ目の解釈です。

 

もう一つの解釈は「妖精の誘惑と葛藤する人」という解釈。

スコットランドやアイルランドでは古くから妖精が信じられていますが、彼らは人間を手助けすることもありますが、人間を誘惑して死に至らしめたり子供を盗んだりといった悪事を働くこともあります。

このことから、スカボロー・フェアの歌詞は、妖精が「これをすれば彼女はあなたのものになりますよ」と人間を誘惑する悪い妖精と、その妖精を遠ざけるために魔よけの力があるハーブの名前を呪文として唱える人間のやり取りとして解釈するというものです。

この手の誘惑はある種の契約ですので、条件を達成すれば願いが叶いますが、達成しなければ当然のようにペナルティが課されます。それが何なのかはわかりませんが、妖精の出してくる条件は実現不可なので応じてしまったら待っているのはペナルティだけです。なので、人間はひたすら魔よけの呪文を唱え続けて妖精を無視している。こう考えると、エルフィン・ナイトには入っていないし歌詞の流れとして脈絡のない「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」が歌詞に挿入されるのも納得できます。

個人的にはこちらの解釈を推しています。

 

 

 

さて、ここでジョルジオが準主役のような立ち位置である永流堂奇譚第九話「哀傷のヒトガタ」のトレーラームービーのワンカットをご覧いただきましょう。

 

 

 

こんなの早口エンドレスで魔除けの呪文か祈りの言葉唱えるしかないでしょ!

 

まぁ、彼の場合は「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」とは言わず、理性と正気を保つために自分を鞭打つんですけど。スカボロー・フェア第二解釈的な状況になるのが「哀傷のヒトガタ」ですので、ジョルジオでオーダーしてローズマリーとセージが入ってきたのはクリティカルヒットです。

厳密には、スカボロー・フェアの「セージ」はホワイトセージのことでしょうからクラリセージとは別の物なんですけれど、前述のとおり視界がクリアになるクラリセージはジョルジオにピッタリなので、むしろオッケーオッケーというか、「もしかして読んだ?」と錯覚してしまうほどの偶然。ありがとう調香師さん!!!

 

 

トップノートはあま甘さは感じられず、爽やかでシャープ、少しスパイシーで柑橘のような酸味のある香り。力強くてキリッとした清潔感のある香りはジョルジオの外見や役職的なイメージのようです。

ミドルノートはハーブの清涼感が抑えられて少し甘さが出てきます。スパイシーで柑橘のような酸味、ほのかに甘く……どことなく乳香に似ています。スモーキーさがない乳香とでもいえばいいのか、瞑想的で神秘的な香り。司祭であり偽天使でもあるジョルジオを表現しているように感じられます。

ラストノートは薬草の香りと柑橘のような甘さ、ほのかに土っぽいニュアンスが感じられます。トップのようなキリッとした力強さはなく、清浄な世界で眠るような安息感のある香りです。「勿忘草の契り」で描いた、ジョルジオの到達点がイメージされました。

 

 

今回は調香師さんの解釈をがっつり聞かせていただきたいという思いがあったため、前回の店主の時よりもしっかりオーダーシートを書かせていただきました。そのおかげかScentlyの調香師はエスパーか?!」と思うくらいのものが出来上がってきて……これはもう、ジョルジオの概念そのものです。素晴らしい

こんなに満足度の高い品物を作っていただけて嬉しいです。本当にありがとうございます。

また機会があったら作ってもらおう。今度は麻利絵さんで。

 

 

 

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