●レジスタードマグナムの廉価版
1935年、マグナム弾の元祖である「.357マグナム」とともに、その専用リボルバーで、のちにM27となる「S&W .357マグナム」が登場した。S&W .357マグナムでは、箱に同封されている書類に必要事項を記入して送ると、登録証明書が届いて永久保証が受けられるようになるというアフターサービスを採用していたため、コレクターからは「レジスタードマグナム」と呼ばれることが多い。
レジスタードマグナムはS&Wのリボルバーのなかでも最高級モデルと位置付けられ、特に戦前のモデルではフロント/リアサイト、トリガー、ハンマー、グリップ、バレル長を選ぶことができ、サイトインの距離や弾薬さえも選択することができた。もちろん、仕上げも一流で手作業によるハイポリッシュ仕上げに加え、フレームトップには反射防止のチェッカリングが刻まれた。
当時、強力な.357マグナムを撃ち出せるリボルバーはレジスタードマグナムのみであったが、仕上げに手間が掛かるモデルであったため、非常に高価であった。アメリカ国内の法執行機関からレジスタードマグナムの廉価版を発売してほしいという要望が相次いだため、S&Wはその声に応え、仕上げを落とすことで価格を抑えた「ハイウェイパトロールマン」を1954年に発売した。
内部はレジスタードマグナムと同一だが、仕上げがハイポリッシュブルーから磨きの鈍いサテンブルーとなり、フレームトップのチェッカリングやリアサイトリーフのセレーションなどが省略された。その結果、1981年時点ではM27が430ドルで販売されていたのに対してM28は265ドルで、100ドル以上も安い価格を実現することができた。
モデルナンバー制が採用されると、ハイウェイパトロールマンには「M28」のナンバーが付けられた。その後、1960年にエジェクターロッドが右ネジから左ネジに変更されると「M28-1」となり、1961年にトリガーガードスクリューが廃止されると「M28-2」、1982年にカウンターボアードとバレルピンが廃止されると「M28-3」となった。そして、1986年に生産終了を迎えた。
●帰ってきたハイパト
「ハイパト」と言われて真っ先に思い浮かぶのは、やはりMGCが1972年に発売したあのモデルガンだろう。プラスチックモデルガン黎明期の象徴的な1挺ということで、古くからのモデルガンマニアであれば並々ならぬ思い入れがあるに違いない。
リアル路線へと舵を切ったコクサイが1981年に発売した「ニューハイウェイパトロールマンM28」は架空モデルであったMGCのものとは異なり、実銃同様のメカニズムを再現していたものの、フロントサイトにレッドインサートが入っていたり、リアサイトリーフにセレーションが入っていたりとディティールに甘さが残るモデルであった。だが、これ以降、ハイパトのモデルガンが発売されることはなく、S&W M28を正確に再現した決定版といえるモデルが登場することはなかった。
ところが、平成を通り越して令和になった2024年3月。タナカからM28のモデルガンが発売された。遂にハイパトの決定版と呼べるモデルガンが登場したのである。
パッケージは実銃のボックスを再現したもの。6インチにも対応した長さとなっているので、やがてはそちらも発売されるのではないだろうか。
カートリッジは.357マグナムを模した発火カートリッジが6発付属する。
バレル左側面には「SMITH&WESSON」の刻印が入る。
バレル右側面には使用弾とモデル名を示す刻印が入る。開発段階では単に「パトロールマン」というモデル名だったようだが、S&Wの大手代理店の社長夫人であるフローレンス・ヴァン・オーデンが「ハイウェイ」を冠することを提案した結果、ハイウェイパトロールマンの名で売り出されることなった。
サイドプレートにはS&Wのモノグラムが入る。フレームのアドレス刻印もしっかりとリアルなものになっている。
ハイパトといえば、テーパードバレルとちょっと長めのエジェクターシュラウドの組み合わせ。ブルバレルとは一味違った迫力がある。
大柄なNフレームを採用しているので、ボディ、シリンダー、ヨークなど全てがデカい。
見よ!この圧倒的余裕を。
巨大なシリンダーに.357マグナムが6発。リムとリムの間隔が最も狭いところでさえ、4mmも空いているという贅沢な間取り。おまけにカウンターボアードの加工まで入って剛性感は申し分ない。
タナカのM28はリセス(カウンターボアード)の直径が実銃よりもわずかに小さいようで、社外製のダミーカートはリムが引っ掛かってしまう。無理やり押し込めば入るが、排莢にはエジェクターロッドが必須。
Kフレームではフォーシングコーン下部の肉厚が薄く、ここが弱点となっていたが、Nフレームは肉厚が均一で厚み自体も増している。
贅沢な間取りのシリンダーとこのフォーシングコーンを見せられると、やはり.357マグナムをバカスカ撃つならNフレーム一択かなと思ってしまう。
ヨークとフレームのフィッティングを見ると、妙な隙間はなく、素材の異なる2つのパーツが精密に一体化している。この精度の高さが滑らかな作動に影響を及ぼすのは言うまでもない。
フロントサイトはボウマンクイックドロータイプでレッドインサートは無し。
ボウマンクイックドローサイトの「ボウマン」とは、FBIのインストラクターであったフランク・ボウマンのことで、彼自身がスケッチし、1936年にオーダーしたレジスタードマグナムに特注で取り付けてもらったサイトが元祖。以降、数多くのS&Wリボルバーに採用され、マイクロメータークリックサイトの相棒としての地位を築いていく。
リアサイトはお馴染みのマイクロメータークリックサイトだが、ホワイトライン無し、リアサイトリーフのセレーション無しという廉価版。
ハイパトではレジスタードマグナムの特徴であったフレームトップのチェッカリングが省略され、艶消し仕上げに変更。さらにリアサイトリーフのセレーションも廃止されたことで、フレームトップは物寂しい感じ。価格差が滲み出ている。
逆に言えば、この仕様で32年も作り続けられたことを考えると、フレームトップやリアサイトリーフのセレーションが無くても、さほど問題にならなかったということであり、セレーションは実用性よりも装飾という側面が大きいのかもしれない。
トリガーはナロータイプで縦にセレーションが入る。アクションは極めて滑らかで、シリンダーが回りきる直前にシリンダーストップが掛かる、いわゆる「チチバン」も再現されており、文句の付けようがない。
トリガーはセミワイドタイプ。スパーにはチェッカリングが入る。
グリップはプラ製のマグナグリップが付属する。S&Wリボルバーの標準グリップともいえるマグナグリップだが、これが最初に採用されたのはレジスタードマグナムである。強烈な.357マグナムの反動を拳全体で受け止めるため、ホーンが延長されたデザインとなった。
パーツボックスにいくつかグリップがあったので、交換して遊んでみる。まずは、タナカ純正のパックマイヤータイプのグリップアダプターを取り付けてみた。こちらはKフレーム用ということで、わずかにフレームのラインと合っていないところがあるものの、意外と違和感なく取り付けられた。
続いてはアルタモントのクラシックパネル。スーパーローズウッドということで赤みが強く、光沢もあって華やかな感じ。非常に薄いので握り心地が上々。
ただし、タナカのNフレームのグリップフレームは実銃とわずかにラインが異なるので、実銃用のグリップをつけると段差ができてしまうのが難点。
大柄なNフレームにはターゲットグリップも良く似合う。このグリップはCAWのコークボトルで、センターダイヤの辺りが膨らんだ複雑な形状を見事に再現している名品。
最後は本体と同時に発売されたタナカ純正の+weightグリップ。木グリでありながら、背面の金属のウェイトが仕込むことで質感と重量を両立したアイデア商品。ちょっと色味が薄いのが残念ではあるが、S&Wオリジナルスタイルのマグナは実物、レプリカともに希少で入手が難しいため、純正オプションとして出してくれるのは有難い。
Kフレームのコンバットマグナムと並べてみると、ハイパトの大きさが際立つ。確かにNフレームは堅牢で強力な.357マグナムを常用するのに適しているが、その大きさゆえに警察官などが何時間も腰に吊るには負担が大きい。対して、Kフレームのコンバットマグナムは強度に多少の不安があるものの、携行のしやすさではNフレームをはるかに上回り、扱いやすいサイズにまとめられている。
モデルガンとはいえ、実際に2挺を手に取って比べてみると、ビル・ジョーダンがKフレームで.357マグナムを撃てるリボルバーを切望した理由が実感としてよく分かる。
続いてはM29と並べてみる。.357マグナムの登場からおよそ20年後に発表された.44マグナム。そのパワーは絶大で、一時期は量産品としては世界最強の弾薬であった。映画『ダーティハリー』でクリント・イーストウッドが使用し、一躍有名になったのはご存じの通り。
最後はパフォーマンスセンターのM327 2インチと。Nフレームでありながら2インチのラウンドバットと異色のルックスを持ち、好き嫌いが大きく分かれそうな雰囲気。両者は同じNフレームで.357マグナムを撃ち出すリボルバーだが、M327は驚異の8連発。ガバメントと同等の装弾数を有する。
































