●Jフレームのエアクルーマン
1950年代に米空軍の航空搭乗員向けのリボルバーとして試験的に導入された「エアクルーマン」は、コルトが1種類、S&Wが2種類を開発し、いずれのモデルもフレームとシリンダーをアルミ製とすることで、大幅な軽量化を実現した。
コルトはコブラをベースのものを1189挺、S&WはPre-M37ベースものとPre-M12ベースのものをそれぞれ605挺ずつ(加えて、S&W製はそれぞれ4挺ずつがスプリングフィールド造兵廠へ送られたという説もある)が製造された。
最終的にPre-M12ベースのものが「M13」の名称で採用され、追加生産された。そのような中で、総生産数が605挺と最も少ないのがPre-M37ベースの通称「ベイビーエアクルーマン」である。
ベイビーエアクルーマンは、Pre-M37の4スクリューをベースにシリンダーをアルミ合金製に変更し、グリップのメダリオンを空軍仕様の特別版としたモデルで、重量はわずか10.5オンス(約298g)と3種類あるエアクルーマンのなかでも最も軽量であった。しかし、5発という装弾数の少なさが敬遠されたようで、追加生産は行われず、残存していた個体のほとんどが1959年に廃棄処分となった。
●エアクルーマン祭り
12月発売となったコルト エアクルーマンに引き続き、2024年1月にS&W ベイビーエアクルーマンがモデルガンとして新発売となった。まさか、エアクルーマンが相次いで発売されるとは驚きである。
コルト エアクルーマンと同様に「少量限定生産品」とのことで、空軍のメダリオンが入った木製グリップ、ケースハードン風仕上げのハンマー&トリガー、M41ボールカートリッジを模した発火カートリッジが付属とゴージャスなパッケージ。値段のほうも税込で39,600円とゴージャスであったが、さすがに再販はないだろうということで思い切って購入した。
発売から随分と日が経ってしまったが、今回は1月に新発売となったベイビーエアクルーマンをご紹介する。
段ボールにシールを貼っただけのシンプルなパッケージ。しかし、この素っ気なさがトライアル品っぽい感じで良いね!
前作と同様にエアクルーマン用の低圧弾「M41ボールカートリッジ」を模した発火カートリッジが5発付属する。
バレル左側面には「SMITH&WESSON」の刻印が入る。「&」の文字が横に流れているのがビンテージの証。
バレル右側には「AIRCREWMAN」の刻印が光り輝く。こういうスペシャルな刻印が入るだけで購入意欲が沸々と湧き、是が非でも手に入れてしまう。コレクターというのは悲しいもんです(笑)
トリガーガード上の小さなプルーフマークまで忘れることなく再現。こういうディティールへのこだわりが全体の完成度を高める。
装弾数はチーフと同じく5発。で、ホンモノのシリンダーはスチールではなく、まさかのアルミ。安全性を犠牲にして専用の低圧弾を作るぐらいだったら、おとなしくスチールのシリンダーにしておけば良かったんじゃないかと思うのは素人の考えか…。
サイドプレートを4本のネジで止める「4スクリュー」ということで、リアサイトの真下にもネジがある。
フレーム左側にはS&Wのモノグラムが入る。そして、サムピースはフラットタイプ。
手前がベイビーエアクルーマンのサムピースで、奥が同社のスクエアバットのサムピース。全体の厚みやマズル側の形状の違いがお分かりいただけるだろうか。おそらく、ベイビーエアクルーマンのサムピースはM36アーリーモデルに付いていたものと同じものだと思われる。
一口にフラットラッチといっても、私が知る限り、
①全体が完全に平らなタイプ
②マズル側に向かって傾斜があるタイプ
③全体的に厚みがあり傾斜がキツいタイプ
と3種類ある。
①はチーフの中でも「ベイビーチーフ」などと呼ばれる、Iフレームの造りを色濃く残す極初期のモデルとPre-M12の初期モデルに使用されていたのだが、②と③のどちらが先に出たか、いつ頃に変更となったのかなど不明な点が多かった。
そこで、今回は海外のオークションサイトなどでフラットラッチの付いているチーフを片っ端から調べ、製造年もしくは製造年代とサムピースのタイプを以下に記した。
・1954~1955年製【2インチ/ラウンドバット】⇒②
・1956年製【2インチ/ラウンドバット】⇒②
・1956年製【2インチ/ラウンドバット】⇒②
・1955~1966年製【2インチ/スクエアバット】⇒③
・1958~1962年製【2インチ/ラウンドバット】⇒③
・1961年製【2インチ/ラウンドバット】⇒③
・1962~1966年製【2インチ/ラウンドバット】⇒③
・1963年製【2インチ/スクエアバット】⇒③
・1964年製【2インチ/ラウンドバット】⇒③
この結果を見ると、②→③の順で移り変わっていったことをが分かる。最終的にスタンダードなサムピースに戻されたということを考えると、だんだんとサムピースの厚みと傾斜が増していったという流れは自然なものだと思われる。
②から③の移行時期に関しては、1960年代のものでは②が見られないこと、1956年製では②が付いていることを鑑みると、1950年後半に変更が行われたと思われる。 とはいえ、まだまだ推測の域を出ないので、フラットラッチの詳しい歴史をご存じの方がいたら、コメントしていただけると助かります。
トリガーはケースハードン風仕上げ。聞いたところによると、この仕上げはタナカの副社長自ら作業されているとのこと。
トリガーフィーリングは安定のタナカ。超スムースで言うことなし!
ハンマーもケースハードン風仕上げ。良い色ですねぇ…。
フロントサイトはランプタイプでセレーション入り。
リアサイトはフレームトップに溝を切ったタイプ。狙いやすさよりも携帯性を重視したという感じのサイト。
グリップはダイヤモンドチェッカーのマグナ。そして、メダリオンは空軍仕様という特別版。+weightグリップということで、背面にウエイトが仕込まれており、木グリ特有の質感と重量感をダブルで味わうことができる贅沢な逸品となっている。
メダリオンはコルト エアクルーマンからの流用かと思いきや、これが全くの別物!限定品とはいえ、ここまでディティールにこだわって作るとは、さすがはタナカ。
グリップフレーム背面には米空軍所有を表す刻印がバッチリ入っている。
グリップフレームのお尻にはシリアルナンバー(管理番号)が打たれている。エアクルーマンの管理番号はコルト製とS&W製2種で通し番号になっており、ベイビーエアクルーマンはA.F.No.1795~2399なので、A.F.No.1897という番号は考証的にも正しい。
サイドプレートを外し、メカニズムを覗く。見慣れたS&Wのメカだが、ケースハードン風のハンマーとトリガーがいい味を出している。
先に発売されたコルト エアクルーマンと並べてみる。3挺のうち2挺が出たってことは、もう1挺も出るんでしょと思っているファンも多いはず。ミリポリの2インチも発売されたことだし、是非とも出してほしいところ。
続いてはノーマルなチーフと。素人から言わせれば“同じもの”なのかもしれないが、マニアからすれば“全くの別物”。とりわけ、サイドプレートのネジの本数やグリップのセンターにダイヤがあるかどうかは超重要。やっぱ、4スクリュー・センターダイヤのインパクトは強いですなぁ。
最後は空軍のリボルバーと言ったらコレ、S&W M15と。キュッと絞られたバレルにむき出しのエジェクターロッド、そして.38スペシャルサイズのちょっと短いシリンダー。M19よりもちょっと華奢で控えめな感じが宜しい。





























