●超軽量リボルバー
1950年代、米空軍は戦略爆撃機の搭乗員に超軽量なリボルバーを支給するため、コルトとS&Wに開発を依頼した。それが「エアクルーマン」である。
コルトはディテクティブスペシャルのアルミ版「コブラ」をベースにシリンダーをアルミ合金に変更したモデルを開発した。アルミ合金を多用したことで、重量はコブラよりも4オンスも軽い11オンス(約311g)となり、大幅な軽量化に成功した。
一方で、S&Wはチーフスペシャルをベースとしたモデルとミリタリー&ポリスをベースとしたモデルを開発した。S&Wのモデルもフレームのみならず、シリンダーさえもアルミ合金で作ることで軽量化を実現した。
コルト製が1189挺、S&WのJフレーム版とKフレーム版が605挺ずつ作られたが、最終的にS&WのKフレーム版が「M13」の名称で採用され、追加生産が行われた。
コルト、S&Wの両社ともにシリンダーをアルミ合金とすることで軽量化を図ったが、高圧力の弾薬を使用するとシリンダーが破損するおそれがあった。そこで、米空軍は.38スペシャル弾よりも圧力の低い「M41ボールカートリッジ」をエアクルーマン専用の弾薬とした。
しかし、通常の.38スペシャル弾とM41ボールカートリッジは寸法が同じで、誤って使用すると事故が起こる可能性があったため、1959年に米空軍は全てのエアクルーマンの廃棄を決定した。だが、どういうわけか、その廃棄を逃れた個体がわずかに現存しており、コレクター憧れの逸品として高値で取引されている。
●予想外のバリエーション展開
コブラの後はエージェント、ダイヤモンドバックとショートフレームのバリエーション展開になるものと思っていたのだが、まさかのエアクルーマンの登場である。年末の発売に相応しく、少量限定生産で、木グリ標準装備&カートリッジも特別仕様と豪華版。その分、値段はお高めで定価は46,200円。さすがに4万円台に乗ると、買うのに躊躇してしまうが、冷静に考えてみると、通常のディテクティブとの価格差は約8千円。木グリが付いてくることを考えると、妥当な値段だと思える。
さて、今回を年末特別企画(ただ投稿が遅くなっただけだが…)として、12月に発売となったタナカのコルト エアクルーマンをご紹介する。
まずはパッケージから。今回も気合入ってますねぇ!
エアクルーマン専用の「M41ボールカートリッジ」を模した特別仕様の発火カートリッジが付属。弾頭部とヘッドスタンプが通常の.38スペシャルカートとは異なる。
バレル左側面には“AIRCREWMAN”の刻印が入る。
バレル右側面の刻印はご覧の通り。
シリンダーの装弾数はディテクティブやコブラと同じく6発。アルミ合金のシリンダーはエアクルーマン最大の特徴であったが、結果的にはそれが仇となり、短命に終わることとなる。耐久性を犠牲にしてまでも軽量化を優先した背景にはどのような事情があったのだろうか。
クレーンの裏にはシリアルナンバーが入る。エアクルーマンのシリアルナンバーはコブラと共通もので「7349-LW」というナンバーから1952年製をモデルアップしていることが分かる。
フロントサイトは台座付きのランプタイプ。
リアサイトはフレームに溝を切っただけのシンプルなもの。フレームトップには反射防止のために極めて細かいセレーションが入る。
ハンマーはメッキ仕様で良いアクセントとなっている。
トリガーはコルトのオールドリボルバー特有のアールがキツめのタイプ。メカは最新型のRモデルなので、アクションは確実かつスムース。
トリガーガード付け根にはプルーフマークが入る。さすがはタナカ。細部まで抜かりない。
コルトのエアクルーマンといったら、この特徴的なグリップ!
ホーンが高めのコルトらしからぬシルエットが素敵。ホーンの辺りがS&Wっぽい感じだが、グリップのアールのラインをよく見ると確かにコルト。しかし、全体的にあっさりとした雰囲気はどことなくRugerの香りも漂う。見れば見るほど面白いグリップである。
メダリオンをアップで。お馴染みのランパンコルトではなく、空軍仕様となっている。
グリップはもちろんウエイト入りで重量感はバッチリ。
グリップ背面には米空軍の所有物であることを示す刻印が入る。
グリップ底部には2つ目のシリアルナンバーが刻印されている。A.F.から始まるエアクルーマンのシリアルナンバーはコルトが納入した1089挺、S&Wが納入した1210挺が通し番号となっており、A.F.No.1~1089がコルト製、A.F.No.1190~1794がS&W製Kフレーム、A.F.No.1795~2399がS&W製Jフレームとなっている。
ディテクティブの軽量版であるコブラと。オールスチールのディテクティブが595g、アルミフレームのコブラが425gであることを考えると、エアクルーマンの311gという数字がいかに驚異的なものであるかが分かる。
ちなみにタナカのモデルガンの重量は公称値で515gなので、モデルガンの方がホンモノよりも重いという珍しい現象が生じている。
コルト エアクルーマンに続き、1月にはベイビーエアクルーマンのモデルガンが発売される。M10 2インチのガスガンも出たので、さてはKフレーム版も出してエアクルーマンをコンプリートする気なのでは?などと期待が膨らむ。
ベイビーエアクルーマンはPre M37の刻印違いで再現することができるが「M13」はPre M12をベースとしつつも、フレームの厚みが0.08インチ(約2mm)薄くなっているので、一筋縄ではいかない。ここが何とかなるかどうか…。