●コルト初のダブルアクションリボルバー

 

 コルトはオフィシャルポリスやパイソンなど数多くのダブルアクションリボルバーを世に送り出してきたが、その元祖と言えるモデルがM1877である。

 

 発売は1877年だが、最初にサンプルモデルが一般公開されたのは1876年にフィラデルフィアで開催された万博であるとされている。.32口径 .38口径 .41口径の3種類が作られ、それぞれ「レインメーカー」「ライトニング」「サンダラー」というニックネームが付けられている。なお、このニックネームはコルトが付けたものではなく、代理店の社長が命名したものである。

 

 当初はベースピン(シリンダーピン)をエジェクターの代用として使用することを想定していたため、独立したエジェクターを装備していなかった。しかし「エジェクターの装備は不可欠」との指摘が相次ぎ、1878年からはSAAと同形状のエジェクターが装備されるようになった。

 

 

 非常に多くの銃身長のバリエーションがあったが、エジェクターの有無によって製造された銃身長が異なるため、その点は注意が必要である。

【エジェクター無し 】2、2-1/2、3-1/2、4、4-1/2、5-3/8、5-1/2、6インチ

【エジェクター有り】4-1/2、5、5-3/8、6、7、7-1/2、8、10インチ

 

 設計はSAAの開発にも携わったウィリアム・メイソンによるもので、SAAのレイアウトをベースにダブルアクション機構を組み込んだ設計になっている。M1877はSAAと比べて小口径であるため、全体的にスケールダウンされている。また、ダブルアクションリボルバー黎明期のモデルということで、「トリガー後端から突き出したバーがハンマーに切られた溝の内部にあるノッチと噛み合うことでハンマーを起こす」「シリンダー後面にシリンダーストップノッチを設ける」など現代の視点からすると、非合理的で複雑なメカニズムになっている。そのため、ダブルアクションの作動に問題があり、故障が相次いだそうだが、結果的には16万挺を売り上げる大ヒットとなった。

 

 

●幻のモデルが遂に立体化される

 

 コルトM1877 ライトニング―――。コルトの歴史を語るうえで欠かすことのできない1挺であるが、その複雑なメカニズムゆえにトイガンはおろか、実銃のレプリカでさえ長らく存在しなかった。実銃のレプリカが作れないということは硬い金属を使っても、あのメカニズムを再現することができなかったということだ。プラスチックと亜鉛合金で出来たモデルガンで作ることなど到底不可能と誰しもが思っていた。

 

 ところが、ハートフォードからライトニングのモデルガンが出た。しかも「快調発火」の謳い文句も添えられている。さすがにメカニズムを完全再現とはいかず、モデルガン用にアレンジされているとのことだが、ライトニングのモデルガンを作ったこと自体が大変な偉業であるといえよう。

 

 

 パッケージはシンプルながら雰囲気がある。付属品は取扱説明書、カートリッジ6発、ローディングツールとこれまたシンプルな内容。

 

 価格は税込で39,380円で、実売は3万円台前半といったところ。これは安い、安すぎる!完全新規のモデルガンで、さらにモデルアップしたのがライトニングであることを考えると、3万円台で手に入るというのは驚くべきことである。この価格を実現するためには並々ならぬ企業努力があったに違いない。

 

 

 .38ロングコルト弾を模した発火カートリッジが6発付属する。インサートがある関係で全長は29mmと実弾よりも5mm程度短い。別売でスプリングが内蔵された空撃ちカートリッジも用意されている。

 

 

 実際に手に取ると、その小ささに驚く。.38口径のリボルバーということで、シリンダーやフレームも小ぶりだが、何よりもグリップが小さい。バレルがもう少し短ければコンシールドキャリーもいけるんじゃないかと思わせるスモールなサイズ感。

 

 

 SAAと比較すると、ライトニングが一回り小さいことがお分かりいただけるのではないかと思う。

 

 

 サイズ感としてはコルトのDフレームが最も近い。

 

 

 取扱説明書によると、今回発売されたライトニングはラインナップに九四式自動拳銃やモーゼルHScなどがある「ビンテージレプリカモデルガンシリーズ」ではなく、リバレーター、プロテクターなどと同じ「マニアックレプリカモデルガンシリーズ」になるとのこと。

 

 

 バレル左側面には“COLT. D.A. 38”の刻印が入る。

 

 

 バレル上面の刻印もしっかりと再現されている。

 

 

 フレーム左側面にはパテントとランパンコルトの刻印が入る。パテント刻印の内容は次の通りである。

 

1段目【SEP.19.1871】シリンダーハンドに関するパテント

2段目【SRPT.15.1874】シリンダーストップに関するパテント

3段目【JUM.19.1875】エジェクターやローディングゲートに関するパテント

 

 

 バレル右側にはエジェクターロッドが装備されている。シリンダーインサートはかなり小ぶりで、エジェクターと干渉しないようになっている。

 

 

 カートリッジの装填・排莢はローディングゲートから行う。このあたりはSAAと同じだ。

 

 

 当初はベースピンをエジェクターの代用として使用することが想定されていたため、大きめのヘッドを備えたベースピンを装備していたが、1878年に独立したエジェクターロッドを備えたモデルが登場すると、ベースピンは小型化され、写真のような形状に変更された。

 

 

 SAAと同じようにベースピンを抜くことで、シリンダーを取り外すことができる。

 

 

 シリンダーをよく見ると、シリンダーストップのノッチが側面ではなく、後面に設けられていることが分かる。

 

 

 ファイアリングピンの右下にシリンダーストップがあり、これがシリンダー後面のノッチと噛み合うことでシリンダーを停止させる。

 

 

 通常のシリンダー側面にシリンダーストップノッチがあるリボルバーであれば、ノッチよりも前にガイド(窪み)を設けることで、早めにシリンダーストップを上昇させ、シングル・ダブルアクションともに確実にシリンダーを止めることができるが、シリンダー後面はガイドを設ける面積がない。

 そのため、ノッチが回転し、シリンダーストップの真ん前に来るタイミングでシリンダーストップを前進させる必要がある。シングルアクションとダブルアクションではシリンダーの回転速度が異なるが、この構造だとそれに対応するのが難しい。

 

 そこでハートフォードはシリンダーストップをシリンダーのノッチに噛み合わせるのではなく、シリンダーストップがカートリッジのリムと干渉することによって逆回転を防ぐというメカニズムを採用した。当然のことながら、カートリッジが装填されていない状態ではシリンダーはクルクルと回ってしまう。

 ハートフォードのライトニングには実銃と異なり、シリンダーをガッチリと固定するシリンダーストップはなく、逆回転を防止する機構が設けられているだけだが、シリンダーはきちんと定位置で停止するようになっている。これは良く出来てるなぁ。

 

 

 フロントサイトはハーフムーンタイプで非常に薄い。

 

 

 リアサイトはフィクスドタイプでVノッチ。ノッチが極めて小さく、かつ浅いので至近距離であっても使い物になるかどうか疑問だ。

 

 

 トリガーガードは何とも言えぬ歪な形状。トリガーガード自体は決して小さくないはずだが、トリガーの位置がかなり前方にあるため、トリガーガードとトリガーの距離が近く窮屈に感じる。

 

 

 ダブルアクションリボルバーということで、トリガーは幅広のものを装備。この年代のものとして珍しく、アールが緩やかで使いやすい。

 

 さて、気になるトリガーフィーリングはどうか。

 

 一言で表すならば、ものすごーく重い。シングルアクションについては至って普通のシングルアクションといった感じで、ストロークは短く、トリガープルも軽い。キレもまずまずといったところ。

 だが、ダブルアクションはスゴい。ストロークが長く、半分を過ぎたあたりでグッと重くなる。指先にスプリングを圧縮してハンマーを起こしている感覚がダイレクトに伝わる。そして、もう限界となったところで、ハンマーが落ち、最後に指先にはかすかな痛みが残る。1日に何回も何回もトリガーを引いたら指が痛くなることは必至。

 

 

 グリップはバードヘッドタイプのものが付属。複雑なチェッカリングパターンも見事に再現している。実銃では、初期のものはローズウッドのワンピースグリップが取り付けられていたそうだが、のちにハードラバーのものへと変更された。

 

 

 分解をし、気になる内部パーツをチェックする。まずはハンマー。実銃ではハンマー内部に溝が切られ、さらにその中にノッチがあるという形状(言葉だけで説明するのは難しい…)だったが、ハートフォードのモデルガンではダブルアクション用のシア(ノッチ)があるS&Wのハンマーのような形状にアレンジされている。

 

 

 続いてはトリガー。ハンマーの形状が変更され、ダブルアクションのメカニズム自体がアレンジされたことで、トリガーも実銃と異なる形状になっている。

 実銃はシリンダーストップとシリンダーハンドに1本の板バネ(ガバメントのシアスプリングのような形状)によってテンションをかけていたが、調整・組み立てを簡単にするため、それぞれに独立した板バネを配置したようだ。

 さらに、実銃では非常に強力な板バネによってトリガーをリターンさせていたが、モデルガンではひげバネをトリガーリターンスプリングとして採用している。

 

 

 撃発に関係するパーツを集めるとご覧のようになる。ダブルアクションではハンマーのダブルアクション用シアをトリガー後端が押し上げることで、ハンマーを起こし、撃発させる。

 シングルアクションでは、指でハンマーを起こすと、シングルアクション用シア(トリガーとハンマーの間のパーツ)がハンマーの前進を阻害し、トリガーを引くことで、ハンマーが落ちるというメカニズムになっている。

 

 作動性を優先してダブルアクションについてはS&Wに近いメカニズムを取り入れながらも、シングルアクションについてはほぼ実銃と同じメカニズムを採用している。実銃のメカニズムの雰囲気を維持しつつも、しっかりとダブルアクションを作動させるという折衷案としてはかなり優れたものではないかと思う。