●you talkin' to me?

 

 1970年代の洋画は名作揃いで、ガンマニアに影響を与えた作品も数多くあるが、そのような名作のなかでも特に異彩を放っていたのが「タクシードライバー」だ。

 

 公開は1976年で、主演はロバート・デ・ニーロ。心に深い傷を負ったベトナム帰還兵トラヴィスはタクシードライバーとして働きながら、社会全体やニューヨークという街、とある1人の女性などに対し、失望や憎悪を募らせていき、最終的に重大な事件を引き起こす、というのがストーリーである。

 

 

 「タクシードライバー」には銃が登場するシーンがいくつかあるのだが、そのどれもが印象的で、密売人のアンディから4挺のピストルを購入するシーンは何度見ても痺れる。鏡の前で銃を構える仕草やフィールドジャケットの中に隠したスリーブガンなどの影響を受けたガンマニアは少ないないだろう。

 

 

●S&W M36 スクエアバット トラビスモデル ニッケルフィニッシュ

 

 何やら長い名前だが、要するに「タクシードライバー」に登場した、あのニッケルチーフがモデルガンとして発売されたのである。しかもタイミングよく、コルト コブラと同時発売となり、悩みに悩んだ末、選びきれずに2挺とも購入するに至った。

 

 さて、このモデルを見て「シルバーのチーフならM60じゃないのか」と思われた方がいるかもしれないが、これは「ステンレスモデル」ではなく、「ニッケルフィニッシュ」なのである。

 

 「ステンレスモデル」はその名の通り、各パーツをステンレスで作ったもので、それに対し「ニッケルフィニッシュ」はスチール製のパーツの上にニッケルメッキを施したものだ。ステンレスが実用化される以前、S&Wやコルトのリボルバーでは大抵の場合、ブルーフィニッシュとニッケルフィニッシュの2種類が用意され、ニッケルフィニッシュは錆に強いモデルとして人気があった。

 

 

 パッケージはいつも通り、実物のボックスを模したもの。

 

 

 箱の側面にはモデル名などが記載されたシールが貼られている。このシールもなかなかの雰囲気だ。

 

 

 バレル左側面には「SMITH & WESSON」の刻印が入る。

 

 

 フレーム左側面にはS&Wのモノグラムが入る。サムピースはフラットタイプで、そのなかでも全体がシリンダー側に向けて階段状になっている「2ndタイプ」と呼ばれるもの。

 

 

 バレル右側面には「38 S&W SPL.」の刻印、フレームにはアドレス刻印が入る。

 

 

 先に発売されたHWのスクエアチーフでは4スクリューだったが、ニッケルフィニッシュでは劇中の仕様に合わせ、3スクリューを再現。ネジが1本あるかないかという小さな差異だが、4スクリューと3スクリューではフレーム右側面の表情が全く異なる。ちなみに私は3スクリューのほうが好きです。

 

 

 ギラギラとした光沢があるフィニッシュなので、シリンダーをスイングアウトすると、フレームに映り込む。あぁ、なんて美しいのだろう。

 

 

 リコイルシールド周りのメッキの状態も問題なし。

 

 

 ハンマーはスパーが短くカットされたボブカットタイプ。いやぁ、ここまで徹底して「タクシードライバー」のチーフを再現するとは…。感服です。

 

 

 トリガーはナロータイプで、縦にセレーションが入る。さて、アクションはというと、メッキモデルということでトリガーの戻りがわずかに悪い。途中で止まってしまうことはないものの、「スィー」という均一にゆっくりと戻るのではなく「ガッタン」と一気に戻るような感じ。シリンダーやハンマーの動きに問題はないので、遊んでいるうちに自然と良くなるだろうということで、とりあえずはそのままに。

 

 

 グリップはプラスチック製のパール調のものが付属。「タクシードライバー」のチーフといったら、やっぱりコレだ!サービスサイズの木グリよりも太く、角ばっているので、この握り心地は好みが分かれそう。

 

 タナカからオプションとしてJay Scottタイプのグリップも発売されているので、そちらも手に入れたいところ。

 

 

 先に発売されたHWのスクエアチーフと。2挺並べると、サイドプレートのネジの本数やハンマーの形状の違いがよく分かる。

 

 

 続いてはS&W M68と。タナカはステンレスとニッケルでメッキの種類を使い分けている。ステンレスのM68は光沢を抑え、やや青みがかったメッキ、ニッケルのチーフはギラギラとした光沢があり、やや黄みがかったメッキとなっており、実物の質感の違いを見事に再現している。

 

 

 最後はS&W M29と。残念ながら劇中で登場した8 3/8インチは持っていないので、6.5インチで代用。あとはアストラのコンスタブルやS&W M61エスコートが発売されれば、鏡の前でトラヴィスごっこができるのだが、こんなニッチなモデルは出ないだろうなぁ…。