●元祖スナブノーズ

 

 短銃身のリボルバーには「スナブノーズ」という俗称があるが、その元祖、すなわち、初めてスナブノーズと呼ばれたリボルバーは、コルト ディテクティブスペシャルであると言われている。

 

 そういうわけで、ディテクティブスペシャルの歴史は古く、発売されたのは1927年のことだ。ディテクティブスペシャルは、ポリスポジティブスペシャルの2インチ版として開発され、最もポピュラーな.38splのほかに.32ニューポリスや.38ニューポリスを使用するモデルも存在した。当初はスクエアバットのフレームであったが、1934年からはラウンドバットが標準となった。

 

 

 ディテクティブスペシャルは人気を博し、ロングセラーモデルとなったため、複数回にわたって仕様変更や改良が行われた。そこで、コレクターたちは「1st issue」「2nd issue」といった具合に製造時期によって分類を行ったのだが、S&Wの「ダッシュ」とは異なり、文献によって分類方法にわずかな違いがあるため、これが実に厄介である。今回は、私が最もポピュラーだと思っている分類方法をご紹介する。

 

【1st issue】

 1927年~1946年に製造されたモデルを指す。エジェクターロッドが短く、サムピースとハンマースパーにチェッカリングが施されていることが特徴。フロントサイトは半円型で、グリップはウォールナット製。

 

【2nd issue】

 1947年~1972年に製造されたモデルを指す。エジェクターロッドが延長されるとともに、サムピースのチェッカリングの廃止、ハンマースパーのチェッカリングをセレーションへ変更、フロントサイトをランプサイトに変更するなどの改良が行われた。1947年~1954年の間は「コルトウッド」と呼ばれるプラグリップが取り付けられていたが、1955年からはウォールナット製に戻された。

 1966年にグリップフレームが短縮され「ショートフレーム」となった。文献によってはロングフレームを2nd issue、ショートフレームを3rd issueと区別する場合がある。

 

【3rd issue】

 1973年~1986年に製造されたモデルを指す。エジェクターロッドシュラウドが追加され、バレルがブルバレルとなった。グリップが大きく分厚いものとなり、フロントサイトは前後長の長いランプサイトとなった。

 

【4th issue】

 1993年~1995年に製造された限定モデルを指す。基本的に3rd issueと同一だが、グリップがパックマイヤーのラバーグリップとなった。

 

 

●待望のRモデル化

 

 長い沈黙を破り、ディテクティブが帰ってきた。しかも、ただ再販されたのではない。待望のRモデルとなって帰ってきたのである。

 

 何年も待ちに待ち、待ち続けた末のRモデル化である。

 

 マニアの方々はよくご存じだと思うが、ディテクティブスペシャルやパイソンで使われているコルトの旧型メカを「動くモデルガン」として再現するのは極めて難しい。実銃ではスチールで作られているパーツを亜鉛合金で作ると、作動によって摩耗し、繊細な旧型メカはたちまち動かなくなってしまう。多くのモデルガンメーカーはこの問題に悩まされてきた。

 

 しかし、タナカはパーツやセッティングなどを徹底的に見直して耐久性とスムースな作動を兼ね備えた「Rモデル」を発売し、この問題を完璧に解消した。パイソンに引き続き、Rモデルの第2弾としてディテクティブスペシャルが新発売となった。

 

 

 パッケージは実銃のボックスを再現したリアルなものとなった。木目調のプリントの上にcoltの文字が輝く。

 

 定価は税込38,280円で、実売価格は3万円前後といったところ。旧モデルと比べると、1万円以上の値上げである。開発期間の長さや原材料費の高騰などを考えれば、致し方のない金額だと思うが、正直、価格の高さは否めない。

 

 

 毎度お馴染みの.38splを模した発火カートリッジが6発付属する。

 

 

 さて、本体を見ていこう。

 

 根元がキュッと絞られたテーパードバレルとむき出しのエジェクターロッドのコンビ。結局、こういうトラッドなスタイルが一番グッとくる。

 

 バレル側面には「DETECTIVE SPEC.」の刻印が入る。フォントが変更されたような気がするけれど、気のせいかしら。

 

 

 バレル右側面には「COLT'S MFG. CO.」の刻印。

 

 

 ディテクティブは製造時期によってサイドプレートのランパンコルトの位置が異なる。1st issueはサムピースの下あたり、2nd issueではサイドプレート後方といった具合だ。

 

 で、タナカのディテクティブは各部の特徴から2nd issueをモデルアップしていると分かるのだが、旧モデルでは1st issueの位置、すなわち、サムピースの下あたりに刻印が入っていた。それが、今回、Rモデルとなり、サイドプレート後方へ移され、実銃同様の位置に変更された。

 

 

 コンパクトなリボルバーだが、シリンダーには.38splが6発入る。チーフよりも1発多い、これがディテクティブ最大の強みだ。

 

 いつも愛用しているC-tecのダミーカートを装填しようと思ったのだが、キツくて奥まで入らなかった。どうやら、チャンバーの内径がわずかに小さいようなので、ご注意をいただきたい。

 

 

 あ、クレーン(ヨーク)の裏の「ASGK」の刻印が消えている!

 

 

 タナカのディテクティブシリーズが10年近く再販されず、長らく在庫を抱えていたようで、とあるショップではHKSのスピードローダーが販売されていた。

 

 もちろん、タナカのモデルガンにも使用可。ただ、Kフレーム用でも全く問題なく使えるので、専用品にこだわりがなければ、新たに買い足す必要はないんじゃないかな…。

 

 

 ハンマーは小ぶりで可愛らしいが、その造形は意外と複雑。ツンと上がったお尻がチャーミングだ。コッキングすると、ガスガンとは異なる存在感のあるファイアリングピンが姿を現す。

 

 

 旧モデルではスムースタイプだったが、Rモデルではセレーションが追加された。

 

 

 Rモデルの外観上の目玉ともいえるのが、フレームトップのセレーションだ。これがあるのとないのとでは、もう高級感が全然違う。昔のコルトは細部まで手が込んでるな、とモデルガンを握りながらしみじみと感じる。

 

 

 ランプサイトにもセレーションが追加された。

 

 

 本体と併せて+Weightの木グリも発売されたが、さすがにそこまでの資金は捻出できず、同時購入は断念した。

 

 だが、不思議なことにコルトのリボルバーにはプラグリもよく似合う。末広がりの形状がそうさせるのか、あるいは実銃もコルトウッドというプラグリ付きで販売していた時期があるからなのか、チープ感みたいなものは全く感じない。

 

 

 Rモデルではグリップ裏にウエイトが追加され、重量が増加した。

 

 

 フレームのラインが合っていない箇所があるものの、一応、Jフレーム用のグリップアダプターを取り付けることができる。

 

 

 Rモデルの第1弾として発売されたパイソンと。パイソンは.357magにも対応したIフレームであるのに対し、ディテクティブはコルト最小フレームのDフレーム。S&WのJフレームとKフレームのようなサイズ感の違いがある。

 

 

 ディテクティブの競合相手であるチーフと。チーフはIフレームの改良版であるJフレームを採用し、装弾数を5発とすることで小型化に成功した。ただ、1発といえど装弾数の違いは大きかったようで、S&Wは1970年代にJフレームとKフレームの中間サイズで装弾数6発の「Cフレーム」の開発に取り組み、「M73」というモデルを試作したようだが、発売されることはなかった。

 

 

 お次はローマンと。松葉バネを用いたコルトの旧型メカは調整には熟練の技術を要し、生産効率が悪いということで、1960年代に発売されたMk.Ⅲシリーズではメカニズムが一新された。

 

 

 それでは、肝心の作動はどうか。

 

 まずはダブルアクション。トリガーを引くと「チッチッ」と音を立ててシリンダーストップがかかり、ハンマーが落ちる。メインスプリングが強いようでトリガープルは重めだが、動きはスムース。

 

 お次はシングルアクション。ハンマーを起こしていくと、小気味よくシリンダーストップが作動し、シリンダーを止める、と同時にコッキング手前でハンマーが急激に重くなる。コッキングをしたのちに、トリガーを引くと、メインスプリングの強さを物語るかのように「パチン」と勢いよくハンマーが落ちる。

 

 パイソンのRモデルと比べると、メインスプリングの強さもあってかスムースさは一段劣る。作動全体が硬い。パイソンを「ベスト」だとすると、ディテクティブは「ベター」という感じ。

 

 現時点ではシリンダーストップとボルトのタイミングがずれる、いわゆる「コルト病」の予兆は見られない。これが1か月、半年と経過した際にどうなるのか、Rモデルの真価が問われる。

 

 

 せっかくなので、Rモデルの改良点やメカニズムを詳しく見ていこう。なお、私は旧モデルを所有したことがなく、改良点については分からない部分も多々あるので、その点はご了承いただきたい。

 

 サイドプレートを開けると、まず目に飛び込んでくるのはリバウンドレバー。プレスとダイカストの2ピース構造に変更され、耐久性が大幅に向上したとのこと。

 

 

 メインスプリングを外し、ハンマーをちょいと下げてやると、インナーフレームが抜ける。

 

 

 オフィシャルポリスやディテクティブ、パイソンなどで使用されているコルトの旧型メカはメカニズムが非常に複雑だ。

 

 1つのスプリングに1つの役割のみを与えるS&Wのメカとは異なり、コルトは松葉バネが次の3つの役割を兼ねる。

 

①ハンマーにテンションをかける「ハンマースプリング」としての役割

②リバウンドレバーを介してボルト(シリンダーハンド)にテンションをかけ、前方へ倒す役割

③リバウンドレバーを介してトリガーにテンションをかける「リバウントスプリング」としての役割

 

 

 続いてはシリンダーストップの動きについて。

 

 シリンダーストップはシーソーのような形状をしている。トリガーを引く、あるいはハンマーを起こすと、リバウンドレバーが押し上げられ、それに伴い、白丸で示した部分を押し上げる。すると、シーソーのような動きでシリンダーストップが下降するという仕組みだ。

 

 

 リバウンドレバーの矢印で示した部分がシリンダーストップを押し上げる。このパーツは中にスプリングが入っており、サイドプレートとは逆側の方向に向かって常にテンションがかかっている。

 

 

 リバウンドレバーとシリンダーストップの接触面を白丸で示した。ここが摩耗すると、シリンダーストップが下降するタイミングが遅くなる。そうなると、ハンドはシリンダーを回そうとしているのに、シリンダーストップが下降しないという状態となり、結果としてトリガーが引けないという症状を引き起こす。

 

 

 1907年に登場したポリスポジティブから「ポジティブロック」というハンマーブロックが追加された。ポジティブロックとは「トリガーを引ききらない限り、ハンマーが前進しない」というセフティで、落下などによってハンマーに衝撃が与えられても暴発しないようにするためのものだ。

 

 矢印で示した部分がハンマーブロックで、これはトリガーと連動している。トリガーを引いていない状態では写真のようにハンマーの前進を阻害している。

 

 

 トリガーを引くと、ハンマーブロックが下降して窪みに収まることでハンマーが前進できるようになる。単純な仕組みだが、安全性は高い。

 

 

 ハンマーブロックはトリガーを引ききった状態、すなわち、発射可能な状態において青丸で示したように、サムピースの後退を阻害してスイングアウトできないようにするという機能も兼ね備えている。

 

 

 矢印で示したピンがハンマーブロックと噛み合う部分だ。パイソンのRモデルではリミットピンに変更され、トリガーとハンマーブロックが外れないようになっていたが、ディテクティブではそのような改良は行われていない。

 

 

 取扱説明書のパーツリストを見ると、ポリスポジティブスペシャルのイラストを発見!やっぱり出るんですね。資金を用意しておかないと。