●ミリタリーガバメント

 

 コルト ガバメント、言わずと知れた名銃である。そのなかでもM1911とその改良型であるM1911A1は日本で「ミリタリーガバメント」と呼ばれ、コマーシャルモデルの傑作であるシリーズ70とともに、数あるガバメントのバリエーションのなかでも圧倒的な人気を誇っている。

 

 そんなM1911が米軍に制式採用されたのは、今から100年以上前の1911年のことだ。20世紀初頭、米軍はコルトM1899をはじめとする.38口径のダブルアクションリボルバーを制式採用していたが、米比戦争の際に威力不足が問題となった。

 

 そこで、1906年に開始された新型ピストルのトライアルではストッピングパワーに優れる.45口径であることが条件とされた。トライアルにはコルトのほかに、S&W、サベージ、DWMなどが参加した。最終的にコルトM1910とサベージM1907の一騎打ちとなったが、サベージM1907はスライドストップやマガジンの取り外しなどに問題があったため、コルトM1910が「M1911」の名称で制式採用された。

 

 

 早速、M1911は第一次大戦に投入されると、ストッピングパワーの高さが評価されるとともに、さまざまな問題点が明らかになった。そこでスプリングフィールド造兵廠はM1911にグリップセフティの延長やトリガーの短縮、サイトの大型化などの改良を施した「M1911A1」を開発し、制式採用された。

 

 1941年に真珠湾攻撃を受け、アメリカが第二次大戦に参戦すると、大量のピストルが必要となった。そこで、コルト以外にもミシンメーカーの「シンガーマニュファクチャリング」、事務機器メーカーの「レミントンランド」、鉄道信号機メーカーの「ユニオンスイッチ&シグナル」、銃器メーカーの「イサカ」などでも生産が行われた。ちなみに生産数が最も多かったのはレミントンランドで、コルトの約2倍の生産数であった。

 

 M1911A1は1945年に生産終了となり、長らく米軍のサイドアームとして数多くの戦場で活躍したが、1985年にベレッタM92Fにその座を譲った。しかし、ガバメントの人気は衰えることを知らず、コルトのパテントが切れた現在では数え切れぬほど多くのメーカーがガバメントを生産し、販売している。

 

 

●マルイのこだわりが詰まった1挺

 

 ひと昔前までマルイのガスブロは「よく当たって値段も安いが、仕上げは他社に劣る」というイメージがあった。作動性と命中精度では他社を圧倒していたが、仕上げはプラスチック特有の微妙な艶があり、パーティングラインもそのままという状態であった。

 

 しかし、2006年に発売されたM1911A1は従来のマルイのイメージを覆すモデルであった。スライドとフレームにはブラスト仕上げを施し、実銃のパーカライズドを再現するとともに、スライド刻印を実銃通りの打刻で再現。パーティングラインも手間がかかる手加工で綺麗に処理された。このモデル以降、マルイは外観にもこだわるようになり、命中精度、価格、仕上げと三拍子揃ったガスブロを次々と発売している。

 

 

 本体のクオリティもさることながら、パッケージにも随所にこだわりが感じられる。オリーブドラブを基調とした渋いデザインで雰囲気は抜群に良い。

 

 

 蓋を開けると、オリーブドラブの布が敷かれている。BB弾やマズルキャップなどは弾薬箱を模したデザインのボックスに収められている。このまま飾っても絵になる素晴らしいパッケージだ。

 

 

 スライドの刻印は実銃と同じ打刻で再現。実際にスライドを触ってみると、打刻特有の盛り上がりが感じられる。こりゃスゴい。スライドのプルーフマークも余すことなく再現。M1911A1のスライドには5つのパテント刻印が入るが、その内容は次の通り。

 

【APR.20,1897】

パラレルルーラー(前後に取り付けられた2つのリンク)によるショートリコイル

【SEPT.9,1902】

マガジンセフティと慣性によるハンマー

【DEC.19,1905】

1つのリンクによってバレル後端をチルトさせるショーリコイル

【AUG.19,1913】

サムセフティと工具なしで脱着ができるグリップパネル

 

 

 マルイのM1911A1は1942年製のシリアルナンバー「871072」をモデルアップしている。

 

 

 マガジンは亜鉛ダイキャスト製で装弾数は26発。シングルカラムなので、ガス容量は少なめで冷えにも弱い。リコイルも最新のモデルに比べると、ややマイルドに感じる。

 

 

 スライドストップのノッチにはメタルスペーサーが入っているので、削れる心配は全くない。

 

 

 うっすらと跡が見えるところもあるが、パーティングラインは概ね処理されている。

 

 

 1985年にミリガバに代わって米軍のサイドアームとなったベレッタM92Fと並べてみる。現在ではM92FもSIG P230にサイドアームの座を譲り、過去のピストルになったというのだから時代の流れは早い。

 

 

 続いては第一次大戦時にミリガバの助っ人として生産されたM1917と。ミリガバと同じ.45ACPを使用するためにハーフムーンクリップなるものを開発し、リボルバーでもリムレスカートリッジを撃てるようにした。M1917はNフレームの.44ハンドエジェクターをベースとしており、ミリガバよりもはるかにデカい。

 

     

 

 最後は数あるガバのカスタムのなかでも異彩を放つボブチャウと。現在、私が持っているガバはこの2挺だけ。ガバメントは結構好きなピストルだが、膨大なバリエーションがあるガバメントのコレクションを始めると家がパンクしてしまうので、自制している次第。しかし、追加でシリーズ70とコマンダーの2挺ぐらいは手元に置いておきたいところ。

 

 

 ハンマーをコックした状態でサムセフティを押し上げると、トリガーがロックされる。ミリガバのセフティは最小限の大きさだが、意外にも操作性は悪くない。サムセフティを下げるだけで、素早くシングルアクションで撃つことができる、これがガバの強みだ。

 

 

 ハンマーを起こすと、本来はファイアリングピンがあるところにブリーチを固定する六角ねじが…。これはちょっと残念だ。ダミーファイアリングピンがカスタムパーツとして出されているようなので、ぜひとも取り付けたい。

 

 

 M1911よりもサイトが大型化されているとはいえ、フロントサイトは依然として小さい。

 

 

 フロントサイト同様、こちらも小さめでスクエアのノッチは浅い。狙いやすいサイトではないが、全く使い物ならないというわけではない。

 

 

 トリガーはショートタイプで、前面にはチェッカリングが入る。トリガーフィーリングは素晴らしいという一言に尽きる。ストロークは短めでストンと自然に落ちる感じ。あとはトリガーストップが付いていれば、もう言うことはない。

 

 ガバなどのスライド式のトリガーはトリガーピンなどを中心に円運動をするものに比べ、レットオフのタイミングが掴みやすい。

 

 

 グリップはベークライト製のものを再現。グリップ内側にウエイトを仕込むことで重量を稼いでいる。シングルカラムで薄いため、握り心地は抜群に良い。M1911A1になってから、メインスプリングハウジングがストレートからラウンドに変更されたが、これは好みが大きく分かれるところだ。

 

 

 パーツボックスにガバのグリップがいくつかあったので、着せ替えをしてみる。まずはパックマイヤーのGM-45C。フロントストラップが無いほうが好みなのでカッターでカットしてある。カスタムグリップの定番というだけあって、デザイン、握り心地ともに最高。

 

 

 続いてはホーグの#45000。ホーグのグリップはさまざまなバリエーションがあるが、これはフィンガーチャンネルが付いたものだ。クラシカルなミリガバにはミスマッチな感じだが、見た目とは裏腹に意外と薄く、フィンガーチャンネルも指にフィットする。

 

 

 最後はエルフィンナイツのロジャース(サファリランド)タイプのコンバットグリップ。艶やかな光沢とグラマラスなシェイプが実にセクシー。見た目はとにかくカッコいいが、グリップ自体が太く、フィンガーチャンネルも全く指にフィットせず握り心地は良くない。完全に見た目重視のグリップだ。

 

 

 スライドストップを引き抜くことで、ご覧のように通常分解をすることができる。一応、ショートリコイルは再現されているが、バレルの付け根は大きくアレンジされている。

 

 

●実射

 

 3m先のターゲットに向けて5発試射を行った。使用したBB弾はマルイの0.20gベアリング研磨。ベストグルーピングは20mmで、さすがはマルイといった感じ。プリンキングはもちろんのこと、サバゲーや競技などでも余裕で使える命中精度と作動性だ。