マルシン南部十四年式後期型 HW

●日本陸軍初の自動拳銃

　日本陸軍は創立以来、一貫してリボルバーを使用していたが、1925年（大正14年）に自動拳銃である「十四年式拳銃」を制式採用し、近代化を図った。十四年式の設計者は東京砲兵工廠の吉田智準で、南部麒次郎は設計に関わっていないため、「南部十四年式拳銃」という呼称は正確ではない。

　十四年式拳銃は優秀な拳銃とは言い難く、マガジンの脱落やファイアリングピンの変形、破損などの不具合が頻発したため、何度も改良が加えられている。なかでも1938年に行われた改良は特徴的なもので、手袋を着けた状態でも使用できるようにトリガーガードを大型化するとともに、マガジンの脱落防止のため、グリップ前方にバネを追加した。一般的にトリガーガードが大型化されたものは後期型、それ以前のものは前期型と呼ばれる。

　1934年に陸軍は「九四式拳銃」を制式採用するが、十四年式拳銃も継続して製造された。1943年頃からは省力化のため、コッキングピースやグリップの形状が変更され、仕上げも簡略化された。

　1945年に終戦を迎えると、九四式拳銃とともに製造終了となったが、一部は米軍に押収されたのちに、拳銃の不足を補うため、警察へ貸与され、戦後の治安維持に活躍した。

●改良型エンジン&ボルトストップ

　2022年8月にマルシンから十四年式拳銃が再販された。昨今の原料費高騰を受け、前回のロットよりも大幅に値上がりしており、大変に驚いたが、改良型エンジン&ボルトストップ搭載という謳い文句に惹かれて買ってしまった。

　パッケージは桐の箱を模したと思われるもので、木目も再現されていて雰囲気は良い。

　マガジンの装弾数は14発で、なぜか以前のロットよりも装弾数が増加している。また、以前のロットでは赤色の放出パッキンが異彩を放っていたが、今回のロットから黒色に変更となった。

　今回の目玉の1つであるボルトストップ。これを待っていたんだという旧軍ファンも少ない筈。ストロークが短いこともあり、かなりマガジンが冷えていても、しっかりとボルトストップが掛かる。やるじゃないか、マルシン！

　実銃はモーゼルC96のようにマガジンフォロアーの後ろでボルトをストップさせるが、ガスブロではフレームに新たに組み込まれたパーツでボルトをストップさせるため、マガジンを抜いても、ボルトは前進しない。

　残念ながらショートリコイルはオミットされている。とはいえ、バレル付け根のディティールはイイ感じ。

　フレーム左側には「十四年式」の刻印が入る。

　刻印を見ると、マルシンの後期型は昭和19年3月に名古屋造兵廠で作られたものを再現しているらしい。昭和19年製は後期型というより末期型じゃないかという気もするが…。

　フレーム左側面にマニュアルセフティがあるが、位置が悪いうえに、180度も動かさなければならないので、使い勝手がイマイチ。

　フロントサイトは三角形のような形状。一応、アリ溝に取り付けられているので、左右の微調整や交換が可能だと思われる、

　リアサイトはノバックサイトを思わせるデザインだが、ノッチは台形。好みの問題もあろうかと思うが、サイトピクチャーは最悪。

　コッキングピースはグルーブが省略された「省力型」といわれるタイプ。

　特徴的な形状のダルマトリガーガード。手袋を装着した状態でも問題なく使用できるようするため、このような改良がおこなわれた。

　トリガーはごく一般的なタイプだが、トリガープルは極めて軽く、レットオフの直前でわずかに重くなる。ストロークはやや短めで、レットオフ後の遊びが長めに設定されている。キレが非常に良く、レットオフのタイミングも掴みやすい。もし、トリガーストップが付いていれば、レースガンと錯覚してしまうほどトリガーフィーリングが素晴らしい。