●中国初の国産ピストル

 

 国共内戦の末、1949年に中華人民共和国が樹立され、1950年には中ソ友好同盟相互援助条約が締結された。

 

 ソ連は中国を援助するため、トカレフのパーツや生産に必要な工作機械を提供し、専門家を派遣した。中国はこれらをもとに、トカレフ後期型の単純なコピー品である「五一式拳銃」の生産を開始した。五一式拳銃はソ連製のパーツを中国で組み立てる、ノックダウン方式で生産された。

 

 五一式拳銃は中国人民解放軍のほか、中国義勇軍にも支給され、朝鮮戦争で使用された。当時、主力であったモーゼルC96に比べ、装弾数が少ないこともあり、将兵の評判は芳しくなかったが、小型で高威力であったため、自衛用ピストルとしては十分であると考えられた。

 

 

 1954年には、グリップの形状変更やマガジンのランヤードリング廃止などの改良を施した「五四式拳銃」が開発され、中国人民解放軍の制式ピストルとなった。五四式拳銃は組み立てだけでなく、パーツの生産も中国で行われた。

 

 ベトナム戦争が起こると、中国はホーチミンを支援するため、五四式拳銃の刻印を変更した「M20」を生産し、北ベトナムに提供した。また、1980年代には輸出用のコマーシャルモデルとして、マニュアルセフティを追加した「Type 54-1」や9mm版の「M213」などが生産され、アメリカなどに輸出された。

 

 

●チャイニーズトカレフ

 

 タナカが満を持して発売したトカレフは、発火性能が極めて高く、トカレフに対する従来のイメージを覆した。そして今回、バリエーションとして「五四式自動拳銃」が新発売となった。

 

 五四式拳銃のトイガン自体は、KSCが「Type 54 アーリークローン」としてガスガンで発売していたが、映画『キングスマン』に登場するトカレフをイメージしたもので、オリジナルの五四式拳銃は全く異なるものであった。

 

 しかし、タナカから新発売となったモデルガンは、スライドのセレーションや刻印はもちろんのこと、グリップやリアサイトの形状に至るまで五四式拳銃の特徴を再現している。

 

 

 パッケージ中央に「鎌と槌」があしらわれ、その下に簡体字で製品名が入る。

 

 

 トカレフ同様に発火カートリッジが8発付属する。超ジュラルミン製なので非常に軽量でカートリッジの飛びも良い。

 

 

 マガジンは底部にランヤードリングがないタイプが付属する。ボディとフォロアーには防錆処理が施されているが、スプリングには防錆処理が施されていないようで、発火すると錆びやすいので注意が必要だ。

 

 

 ホールドオープン時のスライド後退量はホンモノよりも2mmほど少ないが、ほとんど気にはならない。

 

 

 手動で排莢すると、カートリッジがエジェクターとメカブロックの間に引っ掛かり、出てこなくなることがある。タナカに問い合わせてみたが、これは「仕様」とのこと。

 

 トカレフでも同様の現象が見られたので、やはり仕様ということだろう。勢いよくスライドを引けば問題なく排莢されるので問題はないが、ちょっと気になる…。

 

 

 先に発売されたトカレフと並べてみると、両者の違いは一目瞭然。ここまで忠実に五四式拳銃を再現したのはタナカが初。

 

 

 セレーションはM1911のようなシンプルなタイプで、五四式拳銃のほか、トカレフ後期型もこのようになっている。

 

 

 トカレフではフレーム右側面に多数のプルーフマークが見られたが、五四式拳銃ではトリガーガードにあるのみとなっている。

 

 

 スライドトップには「五四式」の刻印が入る。

 

 

 トカレフのリアサイトはスライドと一体でHW製だったが、五四式拳銃は金属製の別パーツで再現。リアサイトの高さはトカレフが6mmであるのに対し、五四式が8mmでわずかに背が高い。

 

 

 トリガーはM1911に近い構造だが、分解のために上下に遊びがあり、カタカタと動く。トリガーストークは一般的な長さで、トリガープルは重めとなっている。

 

 

 グリップからは「CCCP」の文字が削除されている。グリップ上部の傾斜もトカレフではサムレストとして使えるほどの角度があったが、五四式拳銃では傾斜が緩やかになっており、握り心地が明らかに違う。

 

 また、グリップはホンモノと同様にスクリューを用いずに固定されており、工具なしで取り外すことができる。(ドライバーがあった方が楽だが)

 

 

 工具なしで簡単に通常分解を行うことができる。ホンモノ同様にメカブロックも引き抜くだけで簡単にフレームと分離できる。