●S&W M29と.44mag

 

 S&W M29は、その使用弾薬である.44magとともに1955年に登場したダブルアクションリボルバーで、.44magの強力なパワーに対応するために大型のNフレームを採用している。発売当初は「.44マグナム」という名称であったが、1957年に「Model 29」に変更された。

 バレル長は、4インチ、6.5インチ、8-3/8インチが作られ、5インチと5.5インチもごく少数のみ作られた。また、6.5インチは1979年に廃止され、その代わりに6インチがラインナップに加わった。

 

 .44magは、狩猟用として開発された弾薬であったため、M29を購入したのは主にハンターで、一般的な知名度は決して高くなかったが、1971年に公開された『ダーティハリー』でハリー・キャラハンの愛銃として登場すると、「世界最強の拳銃」として一躍有名になり、.44magリボルバーの代名詞としての地位を確立していった。

 

 

 M29の中でも初期に製造されたものは「Pre M29」と呼ばれ、サイドプレートスクリュー4本、トリガーガードスクリュー1本の5スクリューで、グリップは「コークボトル」の愛称で知られる中央に膨らみのあるダイヤチェッカーのものが付属した。

 

 M29のバリエーションとして、ステンレス版の「M629」、10-5/8インチバレルとアジャスタブルフロントサイトを備えた「シルエット」、M586のようなフルラグバレルを備えた「.44クラシック」などが作られた。M29は1999年に製造終了となり、それ以降は限定モデルが少数作られる程度であったが、2006年にインターナルロックを備えたM29が復活し、現在も4インチと6.5インチの2種類が販売されている。

 

 

●待望の再販

 

 2020年12月の再販を買い逃してから待つこと1年4ヵ月。タナカからS&W M29 6.5インチのモデルガンがようやく再販され、手に入れることができたのでご紹介する。

 

 タナカのモデルガンとしてモデルアップしているのはM29の中でも1962年~1982年の間に製造された「M29-2」と呼ばれるもので、バレルピンとカウンターボア―ドシリンダーを備え、サイドプレートスクシュー3本、トリガーガードスクリューなしの3スクリューとなっていることが特徴である。また、タナカのモデルガンには付属するグリップはダイヤモンドチェッカーではないタイプなので、M29-2の中でも1968年以降に製造されたものを再現しているものと思われる。

 

 

 M29はとにかくデカいリボルバーだ。バレルやフレーム、シリンダー、グリップなど何もかもがデカい。その巨大な図体に相応しく、重量は1045gもあり、ズッシリとした手応えを感じる。

 

 

 .44magを模した発火カートリッジが6発付属する。全長は38.9mmとホンモノよりも2mmほど短いので、リアルサイズのダミーカートは装填できない。

 

 

 ダミーカートを買う余裕がなかったので、ホームセンターで買ってきた押しバネを適当な長さにカットして発火カートに仕込み、空撃ちカートに変身させた。さらにハンマースプリングのテンションをちょいと緩めれば、気兼ねなく空撃ちすることができる。ちなみに、押しバネは4個=8発分相当を300円程度で購入することができる。

 

 

 M29とM19はデザインがよく似ているものの、NフレームのM29はKフレームのM19よりも一回りほど大きい。

 

 

 『ダーティハリー』で殺人鬼スコルピオは酒屋の店主からワルサーP38を奪って使用する。劇中に登場したP38はワルサー製ではなく、スプリーベルク製らしいが、残念ながらトイガンではモデルアップされていないので、マルゼンのワルサーP38でご勘弁を。

 

 

 第2作目の『マグナムフォース』では白バイ警官たちがパイソンを使用。白バイ警官が悪人たちを射殺するシーンでパイソンがアップで映るのだが、そのパイソンのロイヤルブルーが美しく、非常に印象的であった。『マグナムフォース』の中で、私が最も気に入っているのは市警察の射撃大会のシーンで、ハリー・キャラハンと白バイ警官の1人、ジョン・デイヴィスの対決は何度観ても痺れる。

 

 

 バレル左側面には「SMITH&WESSON」の刻印が入る。

 

 

 バレル右側面には「44 MAGNUM」の刻印。バレルの刻印は左右ともに彫が浅く、迫力に欠けるのが残念だ。

 

 

 金属製のサイドプレートにはS&Wのモノグラムが入る。アドレス刻印は「MADE IN U.S.A.」から始まるリアルなもの。

 

 

 フロントサイトはボーマンクイックドローサイトで、レッドインサートが入る。

 

 

 リアサイトはお馴染みのマイクロクリックサイト。ブレードにはホワイトのラインが入っており、非常に狙いやすい。

 

 

 シリンダーはカウンターボアードなので、カートのリムがすっぽりと隠れる。S&Wは1982年にバレルピンとともにカウンタボアードを廃止してしまうのだが、マグナムリボルバーはカウンターボア―ドの方が断然カッコイイ。

 

 

 トリガーは超ワイドタイプ。左右に広がる形状が実にセクシーで、狭いピッチのセレーションと相まってゴージャスな雰囲気が漂う。ただし、ダブルアクションでは指に絡みつくような感触があるので、好みの分かれるトリガーではないかと思う。

 

 

 タナカのS&Wメカは完成の域に達しており、シングル/ダブルアクションともに非常にスムース。ハンマーが落ちる前にシリンダーストップがかかる、いわゆる「チチバン」も再現されている。

 

 

 グリップはプラスチック製のオーバーサイズが付属。タナカのプラグリはよく出来ているが、見た目や質感は木グリに敵わないので、いつかは木グリに交換したい。

 

 

●最後に

 

 タナカのS&Wリボルバーはいずれも完成度が高く、今回ご紹介したM29も非常に満足のいく出来栄えで、カウンターボア―ドシリンダーや実際にピンが打ち込まれたバレルピンなどM29-2の特徴がしっかりと再現されている。ズッシリと重いM29は『ダーティハリー』の鑑賞のお供に最適である。