今回から新企画【徹底比較!】をスタートさせる。このシリーズでは競作となったものやガスガンとモデルガンの両方でモデルアップされているものを中心に、外観やメカニズムなどの比較をしていこうと思う。記念すべき第1回ではマルシンM712の金属モデルとABSモデルを徹底比較する。

 

 

 マルシンのM712は金属モデルとABSモデルの両方が発売されている珍しいモデルガンで、ABSモデルは1983年、金属モデルは1993年に発売された。金属モデルとABSモデルの他に、ダミーカート仕様のHWモデルも発売されていた。また、作動面での評判は芳しくないが、マルシンはガスブローバックガンでもM712をモデルアップしている。

 

 

 金属モデルとABSモデルは同じ金型を使用しているようで、バレルエクステンション、フレームなどの寸法は同じ。重量は金属モデルは1140gであるのに対し、ABSモデルは720gと決定的に異なる。握って楽しめるのは金属モデルだが、ABSの“黒い肌”も捨てがたい。

 

 

 カートリッジやカートクリップは共通となっている。カートリッジは7.63mmモーゼル弾の特徴であるボトルネックをしっかりと再現。しかし、サイド発火ということで、カートリッジのお尻がのっぺらぼうになっているのが残念だ。

 

 

 マガジンも共通だが、金属モデルとABSモデルではマガジンキャッチに引っかかる突起の形状が僅かに異なる(ロットによる違いの可能性あり)。ABSモデルに付属してきたマガジン(左上)は突起が「丸形」になっているのに対し、金属モデルのもの(左下)は突起の下半分が切り取られた「半月型」になっており、マガジンキャッチの掛かりが良くなっている。

 

 

 金属、ABSモデルともにバレルエクステンション上部の刻印は同じだが、ABSモデルではプルーフマークが省略されている。

 

 

 金属モデルのリアサイトは実銃同様に板バネを使用しており、指で押すことでリアサイト自体をワンタッチで脱着することが可能。対して、ABSモデルのスプリングはコイルバネになっており、リアサイトはピンで固定されている。リアサイトの再現性は金属モデルガンの方が高い。

 

 

 金属、ABSモデルともに実銃同様の手順で通常分解を行うことができる。

 

 

 金属モデルのボルトは金属製だが、ABSモデルでは軽量なABS製となっている。

 

 

 サイド発火仕様で、カートリッジも共通だが、ファイアリングピンの形状が異なる。ABSモデルではファイアリングピンがカートリッジ全体を叩くようにになっているのに対し、金属モデルではカートリッジの左側面のみを叩くようになっている。

 金属モデルがこのような仕様になっているのは安全対策を考えてのことかもしれないが、この仕様はファイアリングピンに負担がかかりやすいため、破損が頻発する。私の所有している個体も数発空撃ちをしただけでポキッと折れてしまったので、取り扱いには細心の注意が必要だ。

 

 

 金属とABSモデルではハンマーなどに若干の仕上げの違いがあるが、ハンマーユニットの構造は全く同じ。M712のハンマーユニットはパズルのような構造になっており、モデルガンではエジェクターにピンが使用されているものの、それ以外のパーツにピンやネジは一切使用されていない。

 

●比較結果

 

(1)金属とABSモデルではマガジンの突起の形状が異なる(ロットによる違いの可能性あり)。

(2)金属モデルのリアサイトは実銃のものを忠実に再現している。

(3)ボルトは金属モデルが金属製、ABSモデルがABS製になっている。

(4)ファイアリングピンは金属モデルがカートリッジ左側面のみを叩く構造、ABSモデルはカートリッジ全体を叩く構造になっている。