「またベレッタか…」と読者の皆様は呆れ気味かもしれないが、2022年はMGC ベレッタM9のレポートからスタートしようと思う。何度も申し上げているような気もするが、ベレッタ92Fは私が最も好きなピストルである。そして、その92Fの魅力は何といってもデザインである。スライドトップが大きく抉られたデザインは理屈なしに美しい。さらに、ホールドオープンした姿などは最高にセクシーだ。グリップはやや太めだが、程よい丸みが抜群の安定感を生み出している。

 

 と、こんな具合に92Fについて語り始めたら、その勢いは衰えることを知らず、あっという間に何時間も過ぎてしまう。私の92Fに対する偏愛ぶりにはガンマニアの友人も引き気味で、何十挺というベレッタのコレクションを前に「威圧感が凄い…」と静かに呟いていた。

 

 

●MGC ベレッタM9

 

 ガスガンの台頭により、1980年代の中頃からモデルガンの人気に陰りが見え始めていた。各モデルガンメーカーはガスガンの新製品開発に力を入れたため、モデルガンの新製品はだんだんと数を減らしていった。そのような中で、MGCが1991年に久々の新規金型のモデルガンとして発売したのが今回ご紹介するベレッタM9である。

 

 

 MGC ベレッタM9はM9の中でもハンマーピンヘッドが大型化されていない初期型をモデルアップしている。スライド、フレームなどの殆どのパーツはABSだが、ブリーチブロックはブローバックの反動を強くするためにHWとなっている。仕上げはMGCのモデルガンではお馴染みのポリッシュ仕上げではなく、サンドブラスト仕上げを採用することで、軍用ピストルの無骨な雰囲気を再現している。

 

 

 当時の広告には「ベレッタM9 9つのこだわり」と題して、セールスポイントがぎっしりと書かれている。いかにMGCがM9に力を入れていたかということがよく分かる。

 

 

 パッケージは中央にベレッタのマークが大きく描かれたもの。外装はプラスチック製となっている。

 

 

 CP-HWカートリッジが8発付属する。MGC ベレッタM9の発火性能には定評があり、その快調ぶりはタニオコバのGM7に匹敵するとかしないとか…。

 

 

 スチールのマガジンは見た目こそ美しいが、とにかく錆びやすい。しかし、MGCのベレッタM9は本体の金属パーツとマガジンには「ミルフィッシュ」という防錆処理が施されており、錆に強くなっている。

 

 

 MGCより一足先に発売されたマルシンの92Fはバレルがプラスチック感丸出しで、スライド、フレームとの質感の違いが気になったが、MGC ベレッタM9はバレルもマット仕上げになっていて統一感がある。

 

 

 上部が大きく抉られたスライドは単なるデザインではなく、エジェクションポートを大きく広げることで排莢不良を防ぐという役割がある。

 

 

 92Fの軍用モデルであるM9の刻印を忠実に再現している。「P.BERETTA」の刻印がしっかりと打たれているのが嬉しい。

 

 

 続いてはスライド右側を。SPGマークが少し目立っているような気がするが、そこはご愛嬌。

 

 

 デコッキングも実銃同様に再現。セフティレバーを下げると、パチンと勢いよくハンマーが落ちる。セフティレバーが収まる溝には加工跡が再現されている。憎いねぇMGC。

 

 

 フロントサイトにはホワイトドットが入れられている。ベレッタ92Fは素晴らしいピストルだが、全く欠点がないというわけではない。欠点の1つがフロントサイトがスライドと一体になっていることである。レザーのホルスターへの抜き差しを繰り返していると、フロントサイトのエッジが丸まってきたり、欠けたりするのだが、先述のような構造のため、フロントサイトを交換するためにはスライドごと変える必要がある。これがとっても不便。実銃でも不便だという声が多かったのか、エリートシリーズやバーテック、M9A3などではフロントサイトのみの交換が可能なボブテイル式のものが採用されている。

 

 

 リアサイトは実銃とは異なり、スライドと一体になっている。小ぶりながらも、非常に狙いやすい。

 

 

 実銃と全く同じ手順で通常分解をすることができる。発火モデルということで、ロッキングブロック周辺にアレンジが行われているが、その他の構造は非常にリアルだ。

 

 

 MGCよりも一足先に発売されたマルシンのモデルガンと並べてみる(写真のモデルガンは2021年に再販されたもの)。機会があれば、MGC製とマルシン製の比較などを行ってみたい。

 

 

 MGCのベレッタ大集合!左からM92F(固定スライド)、M9、M92FSデザートストーム、M96。ベレッタを並べてウットリとする。至福のひとときである。

 

 

●最後に

 

 MGCのベレッタM9はセフティレバーの収まる溝の加工跡や初期型特有のトリガーガード全部の加工跡さえも再現されるなどMGCのこだわりが詰まっている。造形の素晴らしさもさることながら、作動に定評のあるMGCの製品ということで、発火を前提とした設計になっており、金属パーツには防錆処理が施されているので、安心して発火を行うことができる。やっぱり、ベレッタ92Fは素晴らしい。美しいデザインはいつ見ても惚れ惚れする。プリンキングを楽しむことができるガスガンも面白いが、構造がリアルなモデルガンはもっと面白い。

 

 トリガーをゆっくりと引いて、ファイアリングピンブロックがじわじわと上がってくると、指先に緊張感が走る。そのままトリガーを引き切ると、ハンマーが落ち、ファイアリングピンブロックが下がる。最後に何とも言えぬ余韻が残る。ファイアリングピンブロックの動きだけを何時間も見ていられるなんていうのは、もはや病気じゃないか。