ガスガンの発売から待つこと8ヵ月、遂にS&W M15のモデルガンが発売された。エジェクターシュラウドのないテーパーバレル、フラットボトムのダイヤチェッカーグリップに加え、モデルガンでは.38splサイズのシリンダーとヨークも再現され、まさに“マスターピース”というのに相応しい仕上がりとなっている。

 

 

●コンバットマスターピース

 

 S&W M15は、S&Wが1949年に発売したダブルアクションリボルバーで、M10 ミリタリー&ポリスのバリエーションとして先に発売されていたM14 ターゲットマスターピースのバレルを短縮し、フロントサイトをボウマンクイックドローサイトに変更したモデルである。バレル長は4インチのほかに、2インチ、6インチ、8-3/8インチのものが作られた。

 発売当初は「K-38 コンバットマスターピース」という名称であったが、1957年からS&Wの製品がナンバーで呼ばれるようになると、「Model 15」というナンバーが与えられた。M15は、テネシーハイウェイパトロールやロサンゼルス市警といった法執行機関のほかに、アメリカ空軍にも制式採用された。

 

 

 M15は、9回にわたる改良や仕様変更が行われたため、「M15」から「M15-9」までのバリエーション(ダッシュ)が存在する。

 

M15(ノーダッシュ):1957年からモデルナンバーが刻印されるようになった。

M15-1:1959年にエジェクターロッドが正ネジから逆ネジに変更された。

M15-2:1961年にトリガーガード下のスクリューが廃止され、シリンダーストップの形状が変更された。1964年には2インチバレルが追加された。

M15-3:1967年にリーフスクリューの位置が変更され、1968年にダイヤモンドグリップが廃止された。

M15-4:1977年にガスリングがヨークからシリンダーに移動された。

M15-5:1982年にバレルピンが廃止され、1986年に6インチと8-3/8インチバレルが追加された。

M15-6:1988年にヨークを保持するスクリューをバネを内蔵したものに変更し、バレルブッシングを追加した。1988年には2インチと8-3/8インチバレル、1992年には6インチバレルが廃止された。

M15-7:1994年にグリップがラバーグリップに変更され、リーフスクリューとエジェクターロッドの形状が変更された。1995~96年の間にスクエアバットが廃止され、1997年には一部のパーツがMIMを用いたものに変更された。

M15-8:1997年にフレームデザインなどの変更が行われ、1999年に製造終了となった。

M15-9:2002年にパフォーマンスセンターから6インチバレル、ラウンドバットの“エドワード・マッキヴァーンモデル”が発売された。

 

 

●待ちに待ったモデルガン

 

 M15は、全体的なシルエットが似ているM19の陰に隠れてしまっているためか、何となく地味なイメージがある。.38splしか撃てないというのも、地味なイメージに拍車をかけているように思う。しかし、M15はS&Wのリボルバーの中で私が最も好きなモデルである。今回、それがタナカからモデルガンとして発売されたのだがら、その喜びは計り知れない。

 

 「コンバットマスターピース」という堂々たる名前は、まさに質実剛健といった感じで、このリボルバーの特徴を非常によく捉えている。マスターピース=傑作と自分で言い切ってしまう自信たっぷりな姿勢も嫌いじゃない。エジェクターシュラウドのないテーパードバレルは“古き良きS&W”の象徴ともいえるもので、芸術品のような味わい深さがあり、キリっと立ったボウマンクイックドローサイトもスタイリッシュでカッコイイ。

 

 

 パッケージは、実銃のボックスを模したお馴染みのもの。今回、タナカがモデルアップしたのは1967年に生産されたM15-3で、このタイプのボックスが使用されていたのは1983年からなので厳密に言うと、このパッケージは時代考証的に正しいものではない。

 

 

 カートリッジは、.38splを模した発火カートリッジが6発付属する。

 

 

 M15とM19は全体的なシルエットが似ているが、バレルの形状やシリンダーの全長などが異なる。さらにM15は.38spl専用であるのに対し、M19は.357magも撃てるという決定的な違いがある。

 

 

 M10は、M15のベースとなったモデルで、S&Wのモダンリボルバーの始祖ともいえるモデルである。タナカのKフレームモデルガンのラインナップも随分と充実してきたが、欲を言えば、ミリタリー&ポリスのビクトリーモデルか、2インチのどちらかを出してもらいたいところである。

 

 

 M15が活躍した映画と言われて、パッと思いつくのは『ダイハード』のラストシーン。登場したのは僅か数秒だったが、印象に残っている。あとは、Vシネマで仲村トオルが使用していたとGUN誌か何かで読んだ記憶があるが、それ以外にあったかなぁ…。

 

 

 バレル左側には“SMITH&WESSON”の刻印が入る。

 

 

 バレル右側に“38 S&W SPECIAL CTG.”の刻印が入る。

 

 

 サイドプレートにはS&Wのモノグラムが入る。ver.3なので、アドレスは“MADE IN U.S.A.”の刻印が入ったリアルなものになっている。

 

 

 シリンダーは.38spl専用のショートタイプとなっており、それに合わせてヨークも.38spl専用のものとなっている。バレル付け根にはバレルピンが実際に打たれている。

 

 

 トリガーは、幅の狭いサービスタイプで、縦にセレーションが入る。トリガープルは非常に滑らかで軽い。量産品のモデルガンとしては、最高レベルのトリガーフィーリングであると思う。

 

 

 リアサイトは、上下左右の調整ができるフルアジャスタブルのターゲットサイト。ブレードがロータイプになっていることに注目。

 

 

 リアサイトは、良好なサイティングとドローする際の引っ掛かりにくさを両立させたボウマンクイックドローサイト。ボウマンクイックドローサイトは、FBIのフランク・ボウマンによって提案されたフロントサイトで、M15が初めて導入され、以降はS&Wの標準的なフロントサイトの1つとなった。

 

 

 グリップは、底部の傾斜がない「フラットボトム」のダイヤチェッカーグリップが付属する。

 

 

 M10のサービスサイズグリップ(左)と並べてみると、形状の違いがよく分かる。

 

 

 M19からオーバーサイズグリップを借りてきて取り付けてみた。ガッチリとした頼もしい見た目に変身し、グリップフィーリングもより安定したものとなった。

 

 

 せっかく、フラットボトムのダイヤチェッカーが付いてきたのだから、それを生かそうということで、続いてはタナカ純正のグリップアダプターを装着。サービスサイズグリップ単体だと、隙間が大きく、指が落ち着かなかったが、アダプターを噛ませることで、しっかりと握り込めるようになった。

 

 

●最後に

 

 待ちに待ったS&W M15のモデルガン、それは素晴らしいの一言に尽きる。タナカのKフレームシリーズは、もはや完成の域に達していて、ウルトラスムースなS&Wアクションを完璧に再現している。これに関しては文句の付けようがない。各パーツに目を移すと、エジェクターシュラウドのないテーパードバレル、.38spl専用のシリンダー&ヨーク、フラットボトムのダイヤチェッカーと初期のM15の特徴を余すことなく再現している。

 タナカは、ブログの最新記事でブローニングHPのガスガン/モデルガンの企画が進行中ということを書いていたので、そちらも非常に楽しみだ。