●ハートフォードのM19

 

 S&W M19は、美しいデザインもさることながら、「ルパン三世」で次元大介が使用していたということもあり、非常に人気のあるリボルバーである。「コンバットマグナム」という響きは、いかにも丈夫そうな感じがするが、実際に手に取ると、意外にも華奢で、357magを撃つには頼りない。事実、KフレームのM19は.357magを撃つには強度不足であったようで、1980年にKフレームを改良し、.357magを撃つのに十分な強度を確保したLフレームが誕生したというのはご存じの通りであると思う。

 

 

 現在、S&W M19のトイガンはタナカ、ハートフォード、クラウンの3社から発売されているが、ハートフォードのM19は他社とは一味違う。バレルピンとカウンターボアードのシリンダーを備えた初期型(M19-4)をモデルアップしているのである。

 

 S&Wのダブルアクションリボルバーは、仕様変更や改良が行われると、「M36-1」「M29-3」といったようにモデルナンバーの後ろにダッシュナンバーを付ける。「M19-4」というのは、4回目の仕様変更・改良が行われたM19という意味で、ガスリングがヨークからシリンダーに移されたモデルがこれに当たる。5回目の仕様変更・改良で、バレルピンとカウンターボアードが廃止されるため、M19-4は、この2つを備えた最後のM19ということになる。

 

 

 今回ご紹介するハートフォードのM19は、組立キットを自分で組み立てたものだ。簡単な調整を行ったのみで、パーティングラインの処理や金属パーツの仕上げなどは行っていない。

 M19はダブルアクションリボルバーということもあり、同社のSAAなどと比べると、組立の難易度が高く、特にリバウントスライドの組み込みには苦労したが、分かりやすい説明書が付属するので、3時間程度で組み立てることができた。

 

 ちなみに、ハートフォードのM19はCMCの金型を使用したものである。再現性よりも作動性を重視したMGCとは異なり、CMCは徹底的にリアリティにこだわっていたメーカーだ。80年代の中頃からガスガンが台頭してきても、決して弾の出るモデルは作らなかった“純然たるモデルガンメーカー”であったが、やはり、時代の流れに取り残されてしまったようで、1985年にモデルガンの製造を終了している。

 

 

 パッケージは、Kフレームシリーズ共通のシンプルなもので、中央にはS&Wのマークがあしらわれている。ハートフォードは、M19のほかに、M10やM14、M15などをモデルアップしているが、久しく再販されていない。

 

 

 カートリッジは、3ピースのシンプルな構造。カートリッジの全長は39mmとリアルサイズに近く、迫力がある。

 

 

 バレル回りの流れるようなデザインが秀逸で、思わず手でなぞりたくなる。

 

 

 タナカのモデルガン(上)は、造形、仕上げ、作動のいずれも素晴らしく、「M19の決定版」といえる完成度に仕上がっている。タナカとハートフォードでは、モデルアップしている年代が違うので、リボルバーファンならば、2挺ともに押さえておきたい。

 

 

 M19の相棒といったら、やはり、ワルサーP38だろう。

 

 

 バレル左側には“SMITH&WESSON”の刻印が入る。

 

 

 バレル右側には“.357MAGNUM”の刻印。バレルの刻印は彫が深く、ハッキリとしていて良い。

 

 

 サイドプレートには、S&Wのモノグラムが入る。バレルの刻印とは対照的で、刻印が彫が浅くて細いため、ペーパー掛けなどをしたら消えてしまいそうだ。

 

 

 バレル付け根には、バレルピンをモールドで再現。完成品はシリンダー抜けを防止するラグが別パーツになっているが、組立キットはモールドのままになっている。

 

 トリガー、ハンマー、ヨーク、リアサイトなどの亜鉛合金パーツは仕上げがなされていないようで、虹色のようになっている。トリガーとハンマーは、この色でも良いが、ヨークとリアサイトは黒の方が良い。

 

 

 シリンダーは、リムがすっぽりと収まるカウンターボアードタイプ。

 

 

 フロントサイトは、ボウマンクイックドロータイプ。レッドランプなどが入っていないシンプルなものだ。

 

 

 リアサイトは、お馴染みのフルアジャスタブルタイプ。ボウマンクイックドローサイトとKサイトの相性の良さは言うまでもない。

 

 

 トリガーは幅の狭いサービスタイプで、セレーションが入る。ハンマースプリングが強いためか、トリガープルは重めだが、動きはスムースで、ダブルアクションでもストレスが少ない。

 

 

 流石はリアル派のCMC。内部メカの再現性は高く、実銃と比べても遜色ない。リバウンドスライドを磨けば、さらにアクションがスムースになると思うが、組み込みに苦労したことを思い出すと、二の足を踏んでしまう。

 

 

 CMCのM19の弱点であるグリップフレーム。金属のインナーシャーシなどではなく、プラスチックのフレームでハンマースプリングを保持しているため、CMCのM19ではフレームが割れるという症状が頻発した。ハートフォードのM19も特に補強などは行われていないようだが、耐久性は果たして。

 

 

 グリップはプラ製のオーバーサイズが付属する。グリップ裏側にはウェイトが仕込まれているため、重量感がある。

 

 

●最後に

 

 ハートフォードは、旧CMCからM19、M36、SAAなどの金型を引き継ぎ、改良を加えたうえで販売している。M19は、元々はCMCが1982年に発売したモデルガンで、設計が古いものの、内部メカニズムの再現性は素晴らしく、カートリッジもリアルサイズに近いなど現在でも十分に通用するモデルに仕上がっている。ハートフォードの製品はいずれも素晴らしいが、SAA以外の製品は再販の間隔が空きがちで、7年ぶりの再販なんてこともザラにあるので、欲しいモデルは買い逃さないように注意せねばならない。