●.38splのコンバットマグナム

 

 S&W M68は、S&Wが1977年にCHP(カリフォルニアハイウェイパトロール)のために開発したダブルアクションリボルバーで、6インチモデルのみが製造された。基本的な設計はM66と同じだが、シリンダーが.38スペシャル用の短いものになっていることが特徴である。M68は、1977年にCHPに採用され、1984年にはLAPD(ロサンゼルス市警察)にも採用された。

 

 CHPが.357マグナムではなく、あえて.38スペシャルを採用した背景には、凶悪犯2人との銃撃戦の末にCHPのオフィサー4人が射殺された「ニューホール事件」で、犠牲となったオフィサーのうち3人が訓練で使用していた.38スペシャルではなく、.357マグナムを使用し、その強力な反動に対応できなかったために1発も命中させることができなかったということがある。さらに当時の世論のなかには、警察の暴力行為と重武装化に反対する声があり、それらに配慮する狙いもあったものと思われる。

 

 

●共栄通商別注モデル

 

 タナカのKフレームver.3のガスガンは、リアルなメカニズムによるスムースなアクションと高い命中精度を誇り、リボルバーファンから絶大な人気を博しているが、11月にM68 C.H.P.が新製品として発売された。S&W M68 C.H.Pは、トイガン流通大手の共栄通商別注の限定モデルとして発売されたもので、トイガンとしては初のモデルアップである。

 

 

 6インチバレルとオーバーサイズグリップのコンビネーションは非常にバランスが良く、シルバーのメッキも相まってスタイリッシュな雰囲気に仕上がっている。ABSモデルだが、重量は710gと程よい重量感がある。

 

 

 大迫力の6インチバレル。フロントサイトのレッドランプが良いアクセントとなり、全体の雰囲気のグッと引き締めている。

 

 

 パッケージは1966~1985年に使用されていた実銃のボックスを模したもの。6インチ用ということで、以前のKフレームver.3のパッケージに比べて全長が長くなっている。

 

 

 S&W M19と並べてみる。M68が発売されたということは、M19/M66の6インチが発売される日もそう遠くはない筈。

 

 

 続いてはM13 FBIスペシャルと。同じKフレームだが、バレル長やグリップ、仕上げが変わると、雰囲気もガラリと変貌する。

 

 

 バレル左側には“SMITH&WESSON”の刻印が入る。

 

 

 M19/M66であれば“.357MAGNUM”の刻印が入るところに、M68では“.38 S&W SPECIAL”の刻印が入る。

 

 

 サイドプレートにはS&Wのモノグラムが入る。

 

 

 ヨーク裏にはシリアルナンバーとモデルナンバーが刻印されている。“MOD.66”の刻印の上に無理やり“8”をオーバースタンプし、“MOD.68”にした独特の刻印が忠実に再現されている。うーん、憎いねぇ。

 

 また、シリアルナンバーは、“12K2122”となっており、1977年に製造されたモデルを再現していることが分かる。

 

 

 

 バレルの付け根には「古き良きS&Wの証」であるバレルピンが打たれている。モールドではなく、実際にピンが打たれているのは嬉しい。シリンダーの下には“C.H.P.”の刻印が入る。

 

 ガスガンとしての機能が全て詰め込まれたシリンダーは、.38スペシャルサイズの短いものではなく、.357マグナムサイズになっている。.38スペシャルサイズのシリンダーはM68の最大の特徴と言えるものなので、ここは再現してほしかった。

 

 

 ハンマーはセミワイドタイプで、ハンマーノーズも再現されている。

 

 

 トリガーはサービスタイプで、セレーションが入る。トリガープルは、シングル/ダブルアクションともに軽く、非常にスムース。

 

 

 サイドプレートを開け、内部メカを見る。ハンマーブロックが省略されている点とガスガン専用のバルブを叩くパーツが組み込まれている点を除けば、モデルガンとほぼ同じ構造だ。

 

 

 フロントサイトにはレッドランプが入り、視認性は良い。バレルトップの中央にはセレーションが入り、その左右は梨地仕上げとなっており、光の反射を防いでいる。

 

 

 リアサイトは上下左右の調整ができるフルアジャスタブルタイプ。

 

 

 グリップは、フェイクウッドのオーバーサイズグリップが付属する。形が良く、非常に握りやすいグリップだ。

 

 

●実射

 

 いつも通り、3m先のターゲットに向けて実射を行った。使用したBB弾は0.20gで、室温は19℃だった。慣らしとサイトの調整を兼ねて50発ほど試射したのちに、6発を4セット射撃し、結果が最も良いものを選んだ。

 

 ターゲット中央を狙ったのだが、やや下方に着弾し、最大で35mm下方に着弾した。0.20gのBB弾でややドロップ気味で、0.25gのBB弾だとドロップの程度が甚だしくターゲットの下に着弾するものもあった。最も良いグルーピングは45mmで、4セット射撃を行ったが、いずれもグルーピングは50mm以内であった。

 

 

●最後に

 

 タナカからM68が発売されるとは夢にも思わなかったが、共栄通商別注の限定モデルという形で11月に発売された。ステンレスを模したメッキ仕上げは、光沢がありつつも落ち着きも感じられるもので、6インチバレルとの相性は抜群。細部を見ると、バレル付け根にはバレルピンが打たれていたり、ヨーク裏のオーバースタンプが再現されていたりとS&Wマニアも納得の仕上がりとなっている。

 

 欲を言えば、モデルガンで発売し、.38スペシャル用のシリンダーを再現してほしかっと思うが、M68というマイナーモデルをトイガンでモデルアップした共栄通商とタナカには拍手を送りたい。