S&W M36は、Jフレームの携行性の高さと、トリガーを引けば確実に弾が発射されるという信頼性の高さからバックアップや護身用としての重宝され、素材やハンマーの形状が異なるバリエーションモデルが数多く生産された。現在でも「クラシックライン」として+P弾に対応したM36が販売されており、その人気は衰えることを知らない。

 

 

●コンパクトサイズのリボルバー

 

 S&W M36は、S&Wが1950年に開発した5連発のダブルアクションリボルバーで、一説によると、レックス・アップルゲート大佐がS&Wにチーフスペシャルを作るように説得した人物であるとされている。発売当初は「チーフスペシャル」の名称で販売されていたが、1957年にS&Wの製品がナンバーで呼ばれるようになると、「Model 36」のナンバーが与えられた。M36は、Iフレームに代わる新たなコンパクトフレームとして開発されたJフレームを採用していることが特徴で、メインスプリングは板バネではなく、コイルバネが使用されている。

 

 

 M36のなかでも1953年頃までに生産された初期型は一回り小さいトリガーガードと半円型のフロントサイトを備えている。また、グリップフレームの全長がやや短いため、通常のJフレームのグリップとの互換性はない。1966年には、サムピースが小判型から厚みを増したものへと変更された。M36は、10回にわたって改良が行われており、「M36-1」から「M36-10」までのバリエーションが存在する。

 

M36-1:1967年以降に生産されたモデルで、3インチのヘビーバレル仕様が追加され、1975年にはヘビーバレルが標準仕様となった。1968年にはダイアモンドグリップが廃止され、1982年にはバレルピンを廃止。

M36-2:1988年以降に生産されたモデルで、ヨークを保持するスクリューがスプリングを内蔵したものへと変更。

M36-3:M36-2と同様の改良を3インチのヘビーバレル仕様に行ったもの。

M36-4:女性向けの護身用ピストルとして1989年に発売されたレディスミスの2インチ。基本的な設計は通常のM36と同様だが、はローズウッドグリップが付き、フレーム右側面に「Lady Smith」の刻印が入る。

M36-5:レディスミスの3インチ。1992年に3インチが廃止され、レディスミスは2インチのみとなった

M36-6:1989年に発売されたターゲットモデルで、リブ付きのフルラグバレルとワイドトリガーを備える。

M36-7:1990年以降に生産されたモデルで、サイト幅が見直され、シリンダー長を短縮。

M36-8:M36-6と同様の改良を3インチのヘビーバレル仕様に行ったもの。1991年には限定モデルとしてフルラグバレルとターゲットサイトを備えた競技用モデルを発売され、1995年から1956年の間にスクエアバットを廃止。

M36-9:1996年以降に生産されたモデルで、強化弾である.38スペシャル+Pに対応したJマグナフレームへ変更し、ハンマーとトリガーをMIM(金属粉末射出成型)を用いた生産へと変更。

M36-10:2001年に発売されたモデルで、インターナルロックを搭載。2001年のほかに、2002年、2005年、2006年にも限定モデルを発売。

 

 

●プラチーフの決定版

 

 10月はタナカの新製品が目白押しで、ガスガンではS&W M29のカウンターボアード仕様とP220の初期型、モデルガンではスモルトの4インチ、グロック18CのEvo2改が新発売となったが、S&W M36 2インチのモデルガンとレミントンM700のエアガンもひっそりと再販された。チーフの思いがけない再販に購入するか否かを悩んでいたが、その人気は凄まじいもので、発売日が近くづくにつれて予約完売となるショップがちらほらと現れ始めたので、慌てて予約をした。

 

 タナカのチーフは、バレルピンがあり、サムピースは小判型ではなく厚みの増したタイプで、グリップはチェッカータイプとなっているので、M36-1の中でも1968~1982年の間に生産されたモデルを再現しているものと思われる。

 

 

 パッケージのデザインはKフレームシリーズと同じだが、Jフレーム用ということで、サイズが一回り小さくなっている。

 

 

 .38スペシャル弾を模した発火カートリッジが5発付属する。

 

 

 M19と並べると、チーフの小ささが際立つ。チーフがあまりにも小さすぎて、M19がM29のように見えてしまう。

 

 

 続いては、チーフのライバルであるコルト・ディテクティブスペシャルと。タナカのディテクティブは、再販やRモデル化の気配が全くなく、中古価格がジリジリと上がっている。

 

 

 フレーム左側には、S&Wのトレードマークが入る。アルタモントのオーバーサイズグリップを取り付けたら、トレードマークの右側に傷が入ってしまった。う~ん、ショック!

 

 タナカのHWは他社のものと比べて傷がつきやすいような気がするが、そう思うのは私だけだろうか。

 

 

 アドレス刻印付近には湯皺が発生しやすいが、私の個体にはそれらしきものはなく、非常に綺麗。

 

 

 トリガーはナロータイプで、グルーブが入る。シングル/ダブルアクションともにトリガープルは軽く、動きは非常にスムース。あまりの気持ちよさに何度も空撃ちをしたくなってしまう。

 

 

 内部メカはホンモノに忠実だ。Jフレームでは、メインスプリングにコイルバネが使用されていることが特徴である。

 

 

 ガスガンでもハンマーノーズが再現されていたが、モデルガンの方が圧倒的にリアルで、ハンマーを起こしたときの雰囲気にも雲泥の差がある。

 

 

 フロントサイトは、オーソドックスなランプサイトで、反射防止のセレーションが入る。

 

 

 リアサイトは、スクエアノッチのコンバットタイプ。フロント/リアサイトともに小ぶりで、リアサイトはノッチが浅いので、視認性は宜しくない。

 

 

 グリップは、プラ製のチェッカータイプのものが付属する。小型で携行性に優れるが、小指が余ってしまうので、グリッピングは安定しない。

 

 

 アルタモントのオーバーサイズグリップを装着。実銃用のグリップが無加工で取り付けられるのは嬉しい。

 

 

●最後に

 

 タナカのチーフは、造形の良さもさることながら、非常に滑らかなS&Wアクションを見事に再現しており、そのトリガーフィーリングは素晴らしいの一言に尽きる。短いバレルがピョコっと飛び出したスナブノーズリボルバーには独特の愛嬌があり、いつも手元に置いておきたくなる。

 チーフは、実銃、トイガンともに2インチが圧倒的に人気があるようで、タナカのガスガンやモデルガンも2インチの再販は頻度は高いが、3インチは久しく再販されていない。3インチのチーフはスラっと伸びたバレルと斜めにカットされたフロントロッキングが最高にスタイリッシュだと思うのだが、残念ながら同志は少ないようだ…。