マルシン PA-MAS G1は、モデルとなった実銃自体がマイナーということもあり、マルシンの92シリーズの中でも特に影が薄い。PA-MAS G1の特徴であるマニュアルセフティを省略したデコッキングレバーは再現されておらず、刻印のフォントも異なるなど完成度は決して高くないが、PA-MAS G1という聞き慣れない響きはコレクターを惹きつける魔力をもっている。

 

 

●フランス軍の制式ピストル

 

 PA-MAS G1は、MAS Model 1950(MAS 50)の後継としてフランス軍が制式採用したピストルで、ベレッタ92GをMAS(サン=テティエンヌ造兵廠)がランセンス生産したものである。1987年に国家憲兵隊に制式採用され、1990年に空軍、1999年に陸軍と空軍でも制式採用となった。PA-MAS G1は、ベレッタ92Gに準じたマニュアルセフティを省略したセフティレバーを採用しているおり、セフティレバーから指を離すと、スプリングの力でファイアーの位置に戻るようになっている。

 

 

●マルシン92シリーズの珍品

 

 フランス軍の銃というのは非常にマイナーな存在で、トイガンとしてモデルアップされたのは、私が知る限り、フレンチM1935A(SACM M1935A)とFA-MAS、そして今回ご紹介するPA-MAS G1の3種類だけである。フレンチM1935は、SIG P210のベースとなったピストルで、大昔に中田から金属モデルガンが発売されていた。FA-MASは、マルイが電動ガン第1号として発売したモデルなので、多くの人がご存知なのではないかと思う。

 

 マルシンPA-MAS G1は、92シリーズのバリエーションとして発売されたモデルだが、PA-MAS G1の特徴であるマニュアルセフティを省略した“Gタイプ”のセフティレバーは再現されておらず、刻印のフォントも実銃と異なる。

 

 

 実銃自体がマイナーであるため、人気はイマイチだったようで、出回っている中古品の数は非常に少ないが、先日、偶然にも通販サイトで発見。箱、取扱説明書は無く、本体は未発火ながらも小傷が目立ち、コンディションは抜群とは言い難いものであったが、値段の安さが決め手となり、購入に至った。

 

 

 同社のM9と並べてみる。2丁ともにABS製だが、M9がマットな仕上げであるのに対し、PA-MAS G1は光沢のある仕上げになっている。

 

 

 右からACG 92SB、マルシン PA-MAS G1、MGC M96。ベレッタ92シリーズはバリエーションが多く、奥が深い。

 

 

 スライド左側面には、ライセンス関係の刻印が入る。

 

 

 右側面には“PA-MAS 9mm G1”の刻印が入る。

 

 

 実銃は写真のような位置でセフティレバーから指を離すと、スプリングの力で元に位置に戻るが、マルシンのモデルガンでは残念ながら再現されていない。せっかく、PA-MAS G1を手に入れたのだから、何とかしてスプリングを仕込んで再現したいところである。

 

 

 グリップパネルにはサン=テティエンヌ造兵廠の略称である“MAS”のロゴが入る。

 

 

●最後に

 

 PA-MAS G1を名乗っていながら、その最大の特徴であるマニュアルセフティが省略されたセフティレバーが再現されていないというのは致命的だが、フランス軍のピストルをモデルアップした貴重なモデルガンということで、コレクションには最適である。マルシンは一時期、ベレッタ92シリーズのマイナーバリエーションに凝っていたようで、今回ご紹介したフランスのPA-MAS G1のほかに、ブラジルのトーラスPT92を固定スライドガスガンで発売していたので、機会があれば、そちらも入手したい。