●FBIが制式採用したKフレームリボルバー

 

 S&W M13は、S&Wが1974年に開発したダブルアクションリボルバーで、ヘビーバレルを備えたM10-6をベースにシリンダーの延長などの改良を施し、.357マグナムに対応させたモデルである。銃身長は3インチと4インチのものがあり、3インチはラウンドバット、4インチはスクエアバットのグリップフレームを採用している。なかでも、3インチモデルはFBIが制式ピストルとして採用したことから「FBIスペシャル」と呼ばれている。

 

 M13は、4回にわたってマイナーチェンジが行われており、M13-1からM13-5までのバリエーションが存在する。1974年から1977年までに製造された「M13-1」はバレルピンを有し、シリンダーがカウンターボアードとなっていたが、1977年から製造された「M13-2」ではガスリングがヨークからシリンダーへ移された。1982年にはバレルピンとシリンダーのカウンターボアードが廃止され、シリンダーの全長が1.67インチから1.62インチに短縮され、「M13-3」となった。1988年から製造された「M13-4」はヨークを保持するスクリューがスプリングを内蔵した新型のものに変更されたほか、ハンマーノーズブッシングの追加などが行われた。1997年にはフレームデザインの変更などが行われ、「M13-5」となり、1999年頃にM13は製造終了となった。

 

 

●FBIスペシャルがver.3モデルガンで登場

 

 タナカのKフレームver.3モデルガンは、模型としての高い再現性とスムースなアクションを両立し、人気を博しているが、2021年6月にS&W M13 3インチ FBIスペシャルが新たにラインナップに加わった。

 

 なお、タナカがモデルアップしたM13を特徴は(1)バレルピンなし(2)カウンターボアードではない通常シリンダー(3)ハンマーノーズブッシングなし(4)スプリングが内蔵されていない旧型のヨーク保持スクリュー」となっており、1982年~1988年に製造されたM13-3を再現しているものと思われる。

 

 

 携行性と操作性を兼ね備え、FBIのサイドアームとして制式採用されたM13はいざというときには.357マグナムを撃つことができる頼もしいリボルバーだ。テーパードバレルが優美なM10と比べると気品に欠け、立派なエジェクターロッドとアジャスタブルサイトを備えたM19と比べるとスタイリッシュさに欠けるものの、飾り気のない静かな佇まいからは“プロのツール”としての矜持を感じる。

 

 

 .38スペシャルの+Pを常用することを想定し、バレルは肉厚になっている。短銃身のヘビーバレルからはスパルタンな雰囲気が漂う。

 

 

 パッケージは1983年~1997年に使用されていた実銃のパッケージを模したもので、非常に雰囲気が良い。実銃のパッケージは1ピース構造であったが、タナカのものは2ピース構造にアレンジされている。

 

 

 .357マグナムを模した発火カートリッジが6発付属する。シリンダーにインサートが入っている関係で、実弾よりもわずかに短い。

 

 

 先に発売されたM10のモデルガンと並べてみる。M10は.38スペシャル専用であるため、シリンダーの全長がわずかに短い。

 

 

 「ヘビーバレルの.357マグナム」と言われて真っ先に思い浮かぶのはコルト・ローマンだ。MGCのローマンは作動性を重視する小林太三氏によって設計された傑作モデルガンで、高い発火性能と耐久性を誇る。近年は中古価格の値上がりが著しく、手が届かぬモデルになりつつあるのが悲しい。

 

 

 M19 4インチは買いそびれてしまったものの、怒涛の勢いで増殖を続けるタナカのKフレームモデルガン。あまりにも出来が良く、非常に気に入ったので、出るものは全て購入すると豪語しているが果たして・・・。

 

 

 2.5インチのM19と3インチのM13を比較し、バレル長の違いのよるエジェクターロッドの後退量の違いと効果を見てみる。

 M19(写真上)はエジェクターロッドの後退量が21mmで、タナカの.357マグナム用カートリッジの弾頭が見えていないのに対し、M13(写真下)は後退量が32mmもあり、カートリッジの弾頭が見えている。実弾の.38スペシャルの薬莢全長が約29mmで.357マグナムが約33mmであることを考えると、より確実な排莢を望むのであれば、3インチバレルを選ぶべきだろう。

 

 

 トイガンではデフォルメされることが多いS&Wのトレードマークもしっかりと再現されている。

 

 

 アドレス刻印は「MEDE IN U.S.A.」の文字が入る本格派。ただし、アドレス周辺に湯ジワが発生しているのが少々気になる。

 

 

 トリガーはセミワイドのスムースタイプで、アクションは非常に滑らか。コルトとは異なり、レットオフ直前に急激に重くなるということはないので、ダブルアクションであってもストレスなくトリガーを引くことができる。

 

 

 リアサイトはスクエアノッチのフィクスドタイプ。引っ掛かりがなく、コンシールドキャリーに向いている。

 

 

 1/8インチ幅の少しワイドなランプサイトには反射を防ぐためのセレーションが入れられている。

 

 

 マグナグリップは携行性に優れる一方で、細すぎて握りづらいという欠点があるが、アダプターを取り付けることで、グリップフィーリングが格段に向上し、携行性と握りやすさを両立した理想的なグリップへと変貌する。

 

 

 モデルガンということで、内部メカの再現性は極めて高い。各パーツのフィッティングはタイトでありながら、アクションは非常にスムース。

 

 

 M13はFBIやNYSPが制式採用したことで有名だが、タイ警察にもアンクルマイクスグリップ付きのモデルが納入されていた。

 ということで、タナカのM13にもメーカー純正のアンクルマイクス風グリップを取り付け、タイ警察仕様を再現。しっとりとしたラバーグリップが手によく吸い付くものの、フィンガーチャンネルが指に合わないので、握り心地はいまひとつ。

 

 

●まとめ

 

 タナカのKフレームver.3シリーズはHWの程よい重量感とリアルな造形、ウルトラスムースなアクションを兼ね備えたモデルガンで、「Kフレームモデルガンの決定版」と言っても過言ではない完成度である。2021年にリアルなモデルガンとして帰ってきたM13を片手に、リボルバーがサービスピストルとして第一線で活躍していた“あの頃”へ思いを馳せてみてはどうだろうか。