●湾岸戦争とM9ピストル

 

 湾岸戦争は、1990年8月にイラクが隣国であるクウェートに侵攻したことを発端とし、1991年1月にアメリカを中心とする多国籍軍がイラクへの空爆したことで始まった戦争である。多国籍軍は当初、空爆を主体とする作戦を展開していたが、1か月以上にわたる空爆でイラクの軍事施設の大半を破壊すると、地上戦へと移行し、1991年2月に多国籍軍の勝利という形で戦争は終了した。

 

 1985年に米軍に制式採用されたM9ピストルにとって、湾岸戦争が初めての実戦投入となった。砂漠という過酷な状況下での使用であったが、M9ピストルは大きな問題なく使用することができた。

 

 

●限定モデルのベレッタ92FS

 

 MGC ベレッタM92FS デザートストーム スペシャルエディションは、ベレッタUSAが湾岸戦争勝利を記念して1993年に発売した「デザートストーム スペシャルエディション」をHW製の発火式モデルガンとして再現したモデルである。一応、限定品ということだが、かなりの数が出回っているようで、同社のベレッタM96などと比べると、手頃な価格で取引されている。

 

 

 パッと見た限りは通常の92FSと変わらないように見えるが、刻印が湾岸戦争勝利を記念した特別なものになっている。

 

 

 パッケージは、実銃のデザートストーム スペシャルエディションの箱を模したものになっている。インターネットなどで実銃の箱を見ていただければ分かると思うが、パッケージの再現度は極めて高く、これだけでもコレクションとしての価値が十分にある。

 

 

 ホールドオープンした姿は迫力と美しさと兼ね備えている。ややボリューミーなフレームとオープントップスライドのコンビネーションが素晴らしい。

 

 

 写真では分かりづらいが、バレルにはライフリングが再現されている。

 

 

 CP-HWカートリッジが8発付属する。MGCのM9シリーズは発火性能に定評があるが、このモデルは限定品ということで発火するのは憚られる。

 

 

 マガジンやエジェクターなどのスチールパーツには「ミルフィニッシュ」というコーティングがされており、錆と変形に強くなっている。

 

 

 限定品ということで、ベレッタ92FSを模したキーホルダーが付属する。

 

 

 MGCのベレッタM96(手前)と並べてみる。92FSが9mmパラベラム、96は.40S&Wと口径が異なるが、パッと見ただけで両者を判別するのは非常に難しい。

 

 

 続いてマルシンのM9(左)と。発売はマルシンの方がわずかに早い。MGCの金型はタナカが所有している筈だが、タナカの92シリーズは久しく再販されていない。

 

 

 MGC(上)とマルシン(下)のロッキングブロックのスプリングに注目。MGCはロッキングブロックをスプリングで上方向に押し上げているが、マルシンは下方向に押し下げている。

 

 

 商標云々となる前の製品なので、「BERETTA」の刻印が入る。フレームのシリアルナンバーもデザートストーム特有の「DS」から始まるものになっている。

 

 

 スライド右側には、デザートストーム(砂漠の嵐)の作戦名が英語とアラビア語で刻印されている。アラビア語の刻印は新鮮だ。

 

 

 グリップパネルを外すと、ラージハンマーピンヘッドが姿を現す。MGCのM9は初期型(92F)をモデルアップしているため、ハンマーピンヘッドは大型化されていない。MGCの92シリーズのモデルガンでFSタイプのハンマーピンが再現されているのはデザートストームとM96だけである。

 

 

 セフティレバーが収まる溝にはツールマークが再現されている。さすがはMGC、芸が細かい。セフティレバーの動きはスムースで、軽い力でハンマーをデコックすることができる。

 

 

 実銃のリアサイトは別パーツになっているが、MGCのモデルガンはスライドと一体になっている。

 

 

 リアサイトとフロントサイトで2ドットシステムになっており、視認性は高い。

 

 

●まとめ

 

 MGC M92FS デザートストーム スペシャルエディションは、湾岸戦争記念モデルを再現した限定品で、珍しいアラビア語の刻印が入り、MGCのモデルガンでは数少ないFSタイプのハンマーピンを採用するなどコレクションとして押さえておきたい1丁である。先述の通り、かなりの数が出回っているようで、状態の良いものでも手頃な価格で取引されており、入手しやすいモデルなので、気になった方は探してみてはいかがだろうか。