●豊富なバリエーションが魅力のモデルガン

 

 1985年にベレッタ92FがM9として米陸軍の制式採用ピストルとなったことで、92Fの知名度と人気が高まり、「リーサル・ウェポン」や「ダイ・ハード」などの映画の公開はそれらに拍車をかけた。

 日本でもその人気は次第に高まり、「クライムハンター」などの92Fが活躍する映像作品が作られたが、92Fのトイガンはガスガンやエアコッキングガンのみで、モデルガンは発売されていなかった。そのような状況の中でマルシンは先陣を切り、1990年に92Fのモデルガンを発売した。その直後にMGCも92Fのモデルガンを発表し、競作となった。マルシンのモデルガンは当初、ダミーカートモデルのみであったが、のちに発火モデルも発売され、ステンレスモデルやセミ/フル切り替え式の「ドルフィン」などのバリエーションを増やしていった。

 

 

 現在、マルシンのベレッタ92シリーズは米軍が制式採用したスタンダードモデルの「M9」、強化スライド仕様の「M92Fブリガーディア」、セミカスタムモデルの「CQB」、セミ/フル切り替え式のマシンピストル「ドルフィン」の4種類が発売されている。それぞれのモデルにはブラックHW、マットブラックABS、Wディープブラック、シルバーABSの4種類の仕上げが用意され、完成品だけでなく、組み立てキットも用意されている。

 マルシンのベレッタ92シリーズのバリエーションは実に32種類にも及び、とにかく安くモデルガンは手に入れたい場合はブラックABSの組み立てキット、スチールブルーのような輝きを持つモデルを手軽に手に入れたい場合はWディープブラックの完成品というように予算や用途に応じて細かく選ぶことができる。

 

 

 今回ご紹介するモデルはM9のブラックHW(完成品)で、2021年に再販されたものである。2021年のロットからグリップの刻印が見直され、ホンモノに近いものとなった。

 

 ブラックHWの仕上げは粗めで、実際に触れるとザラつきを感じるが、ややワイルドな仕上げの方が軍用ピストルらしくて良い。空のマガジンを装填した状態の重量は715gで、プラスチックのモデルガンとしてはまずまずの重量感だ。

 

 

 ホールドオープンした姿は迫力満点だ。マズルからフレーム後端までスッと伸びた直線が凛々しく、大きく開いたエジェクションポートはジャム知らずという感じで頼もしい。

 

 

 スライドからバレルがピョコっと飛び出したベレッタ特有のマズル周り。スライドとフレームの間に隙間があるのが気になる。

 

 

 マガジンはスチール製で、装弾数は15発。MGCのM9と異なり、ミルフィニッシュなどのコーティングなどはされておらず、錆びやすいので、特に発火する場合は注意が必要だ。

 

 

 本体にはNEWプラグファイアーカートリッジが5発付属する。発火性能には定評があるが、リムが傷みやすいのが難点だ。

 

 

 ACGの92SBと並べてみる。92SBは気品溢れるコマーシャルモデルという雰囲気だが、M9はコンバットピストルらしいガッシリとした感じで、同じ92シリーズでありながら、2丁の印象は全く異なる。

 

 

 続いてマルシンのM84と。フルサイズのM9と並べるとM84のグリップの大きさが際立つ。

 

 

 商標の関係でベレッタを示す刻印は一切ないのが残念だ。

 

 

 スライド右側には“MARUSHIN”の刻印が入る。刻印自体が小さいので、さほど気にならない。

 

 

 先述した通り、2021年のロットからグリップのマークが見直された。ホンモノと同一のマークではないものの、以前の「M」と「I」を組み合わせたマークと比べると、雰囲気は格段に向上した。

 

 

 ベレッタのマークが入ったグリップ(左)とマルシンのグリップ(右)を比べてみる。オリジナルのマークは3本の矢がそれぞれ独立しているのに対し、マルシンのマークは下部で矢が繋がっており、燭台のような形状になっている。また、マルシンのグリップには「P.BERETTA」などの文字はなく、矢のサイズがオリジナルよりも大きい。

 

 

 グリップを外すと、大型化されたハンマーピンが現れる。スライドに彫られた溝とハンマーピンのヘッドが噛み合うことで、割れたスライドが後方へ飛び出すことを防いでいる。

 

 

 シングル/ダブルアクションともにトリガープルは軽めだが、ストロークは長い。

 

 

 トリガーを引くと、ファイリングピンブロックがせり上がる。なお、ファイアリングピンブロックはダミーで、実際にロックはしていない。

 

 

 セフティレバーを下げることで、ハンマーをデコッキングすることできる。

 

 

 リアサイトは金属製の別パーツで、ホワイトドットが入る。

 

 

 フロントサイトはスライドと一体で、ホワイトドットが入る。リアサイトと合わせて3ドットとなっており、視認性は高い。

 

 

 テイクダウンレバーを回すことで、実銃と同様にフィールドストリッピングをすることができる。

 

 

 ロッキングブロックは上部が削られ、スライドと噛み合わないようになっているため、スライドとバレルをロックするという機能は持たない。また、ロッキングブロックには実銃にはないスプリングが入っているが、これがスライドのスムースな動きの障害となっていたため、取り外した。手動で装填/排莢する限りはスプリングを外しても何ら問題なかった。

 

 

●ダミーカート化

 

 マルシンのモデルガンの中にはデトネーターを外すだけで簡単にダミーカートモデルにすることができるものが存在し、92シリーズもこれに該当する。デトネーターを取り外すためには、まずバレル下部のイモネジを六角レンチで外し、次に細長い棒などでマズル側からデトネーターを押すとデトネーターを外すことができる。

 

 

 マガジンにダミーカートを込める。マガジンにカートを込める動作は発火カートでも十分に楽しめるが、ダミーカートだと雰囲気が一層高まる。私がいつも使用しているのはKSCのダミーカートで、安価なうえに、空撃ち用のスプリングが入っているので、非常におすすめだ。

 

 

 スライドを引き、初弾をチャンバーに送り込む。エジェクションポートで輝くダミーカートが非常にリアルで、気分が高まる。

 

 

●まとめ

 

 スライドとフレームの隙間やマルシンオリジナルの刻印など気になる点はいくつかあるが、全体的な完成度は高く、発火を楽しみたい人も観賞用としてコレクションしたい人も満足できるモデルに仕上がっている。2021年のロットからはグリップの刻印が見直され、グリップの雰囲気が大幅に向上した。近年、マルシンはモデルガンのマイナーチェンジを進めており、今後、どのような改良が施されるか楽しみだ。