●力強さと美しさを兼ね備えたリボルバーのマスターピース

 

 コルト パイソンは、コルト社が1955年に発売した.357マグナム弾を使用するダブルアクション・リボルバーである。ベンチレーテッドリブとフルレングスのエジェクターロッド・シュラウドを備えたバレルが外観上の大きな特徴となっている。バレル長は、2.5、4、6、8インチの4種類となっており、8インチのモデルには「パイソンハンター」の名称が付けられている。「コンバットパイソン」と呼ばれる3インチのパイソンは、コルトのカタログモデルではなく、「リューホートン」という販売代理店がコルトに製造依頼したモデルである。パイソンは、2000年頃に製造終了となったが、2020年に行われたショットショーで再販が発表され、大きな話題となった。

 

 

●パイソンアクションを完全再現したRモデル

 

 コルトのダブルアクション・リボルバーのメカニズムは、「パイソンアクション」と「トルーパーアクション」に大別することができる。「パイソンアクション」では、メインスプリング(松葉バネ)がハンマースプリング、リバウンドスライドスプリング、ハンドスプリングの役割を兼ねているのに対し、「トルーパーアクション」では、それぞれに独立したバネを与えている。

 

 コルトのダブルアクションをトイガンで忠実に再現するのは難しく、特に「パイソンアクション」は難易度が高いと言われているなかで、タナカは、ペガサスの第2弾としてパイソンをモデルアップし、のちにモデルガンも発売したが、シリンダーがロックされて回らない、トリガーが引けないなどの不具合が発生した。そこで、タナカは、内部機構を大きく見直し、アクションの確実性と耐久性を向上された新しいパイソンを発売した。それが「コルト パイソン Rモデル」である。

 

 「コルト パイソン 4インチ Rモデル」は、HW製の発火式のモデルガンで、今回ご紹介するモデルは、2021年1月に再販されたものである。

 

 

 パッケージは、実銃の箱を模したもので、ウッド調になっており、高級感がある。2.5~8インチ共用のパッケージなので、サイズは39×16.5×4.5cmと細長い。

 

 

 HWらしいマットな質感となっており、なかなか渋い。重量は、810gでズッシリとした重さを感じる。ベンチレーテッドリブとフルレングスのエジェクターロッド・シュラウドを備えたバレル、余裕を感じさせるガッシリとしたフレームが頼もしい。トリガーやトリガーガード、グリップは、女性的な柔らかい曲線で構成されていて、バレルやフレームとは印象が全く異なる。パイソンは、.357マグナムリボルバーとしての力強さと繊細な美しさを併せ持っており、S&Wのリボルバーにはない、何とも言えぬ独特の雰囲気がある。

 

 

 パイソンは、6インチが最も美しいと思うが、バランスの取れた4インチも良い。コルトのリボルバーは、フレーム右側にサイドプレートがあるので、フレーム左側面は、のっぺりとした野暮ったい印象であるが、レバーや刻印が何もない分、フレームの造りをよく観察することができる。

 

 

 パイソンとS&W M586は、バレルの形状やフレームのサイズが似ている。コルトとS&Wは、シリンダーラッチの操作方向、シリンダーの回転方向、バレルとフレームのネジ山とさまざまな部分が逆になっている。

 

 

 .357マグナムリボルバーらしい迫力のあるマズル。反射を防ぐためにマズル周りとフレーム上部は、梨地仕上げとなっている。

 

 

 サイドプレートは金属製で、コルトのトレードマークである跳ね馬の刻印が入れられている。

 

 

 バレル左側の“PYTHOM .357”の刻印が誇らしい。

 

 

 バレル右側には、コルトの刻印が入る。

 

 

 トリガーはナロータイプで、グルーブが入っている。

 

 

 パイソンアクションでは、松葉バネがハンマースプリング、リバウンドスプリング、ハンドスプリングを兼ねており、ハンマーとトリガーを前進させる、ハンドを前へ倒すという役割をすべて担っている。

 

 パイソンのダブルアクションは、トリガーでハンマーストラットを押し上げるという単純なものであるため、レットオフが近づくにつれて、だんだんとトリガープルが重くなる。対するS&Wは、トリガーでハンマーストラットを押し上げたのちに、トリガーのノッチにハンマー自体が引っ掛かり、押し上げるという「2段引き」を採用しているため、トリガープルは、均一に近いものになっている。ダブルアクションにおいては、コルトよりもS&Wの方が撃ちやすいが、「1段引き」のパイソンのダブルアクションは、「スウィー」という滑らかな感じで、2段引きのS&Wにはないフィーリングになっており、これがクセになる気持ちよさである。

 

 

 フロントサイトは、レッドランプが入っていないシンプルなもの。

 

 

 リアサイトは、フルアジャスタブルで、スクエアノッチになっている。前後にガードが取り付けられていて、タフな雰囲気が漂う。

 

 

 モデルガンなので、当然のことながら、カートリッジを取り出すことができる。

 

 

 カートリッジは、M19と共通のものが6発付属する。

 

 

 パイソンとS&W M19のシリンダーを比べてみる。パイソンは、.357マグナム弾を撃つことを前提として設計されているため、シリンダーが大きく、カートリッジとカートリッジの間が広いが、.38スペシャル弾を撃つために設計されたKフレームは、シリンダーが小さく、カートリッジの間隔も狭い。.357マグナムリボルバーとしての耐久性、安心感は、パイソンの方が上だ。

 

 

 コルトらしい末広がりグリップは、プラスチック製だが、木目の再現と独特の艶があり、美しい。ただし、タナカのパイソンのグリップフレームの形状は、実銃と僅かに異なるようで、実銃用のグリップを無加工で取り付けることができない。その点だけが唯一の不満だ。

 

 

 グリップ背面には、ウエイトが入っており、重量を稼いでいる。

 

 

●まとめ

 

 数あるリボルバーのなかでも、多くのファンから愛され、伝説として語り継がれているコルト パイソン。トイガンで再現することは難しいと言われた「パイソンアクション」を忠実に再現し、高い耐久性と作動の確実性を兼ね備えた「コルト パイソン Rモデル」は、パイソンのモデルガンの決定版といってよい程の完成度ではないかと思う。定価は、25,800円+税と決して安くはないが、コルト好き、リボルバー好きであれば、必ず押さえておきたい1丁だ。今回、4インチを購入したことで、私のなかの「パイソン熱」が沸々と湧き上がってきて、2.5インチや6インチ、さらには、仕上げ違いのステンレスモデルなども揃えたくなった。4インチを皮切りに、パイソンのモデルガンの再販ラッシュとならないかと密かに期待している。