〇抜群のルックスと大容量のマガジンを兼ね備えた中型オート

 

 ベレッタ 84は、イタリアのベレッタ社が1976年に発売した.380ACP弾を使用する中型オートで、84をはじめとする80シリーズには「チーター」という愛称が付けられている。84の特徴は何といっても、13発という大型オート並みの装弾数だ。84と同じ.380ACP弾を使用するブローニングM1910の装弾数が6発、ワルサーPPとモーゼルHScがともに7発であることを考えると、84の装弾数がいかに多いかということがよく分かる。

 84の起源はM1934まで遡ることができる。M1934は、イタリア軍に1934年に制式採用されたモデルで、イタリア軍のトライアルに供給されたM1932に改良を加えたモデルである。その後、M1934を近代化したモデルとして1958年に登場したのが70で、70をベースにさらに近代化を図ったモデルが1975年に登場した81である。81は“チーター・シリーズ”最初のモデルで、.32ACP弾を使用した。その他に同口径のシングルカラムマガジンを用いた82も作られた。.32ACP弾よりも強力な.380ACP弾を撃てるようにしたのが翌年に登場した84で、シングルカラムマガジンの85も作られた。その後、84は2度に渡って改良が行われ、トリガーガードの形状などを変更した84F、オートマチック・ファイアリングピン・ブロックを搭載した84FSへと移行していった。

 

 

〇トリガーバーの耐久性が向上した強化版

 

 マルシン M84 HW 強化版は、HW製の発火式モデルガンで、今回ご紹介する強化版はマルシン M84の弱点であったトリガーバーを従来の亜鉛合金から超々ジュラルミン削り出しに変更し、耐久性を向上させたモデルである。定価が25,800円と高価なうえ、商標の関係で刻印がマルシンオリジナルのものになっているということで、購入は見送ろうかと考えていたが、ホビーショップ フロンティアのウィンターセールにて驚くほど安く販売されていたので、思わず購入してしまった。

 

 

 パッケージは、他のモデルガンと共通のもので、サイズは26.5×17.3×5cmとなっている。

 

 

 マルシン M84が発売された1981年のことだが、発売当時の日本では馴染みの薄いモデルであった。そのような状況の中で、なぜベレッタ 84をモデルアップしたのかという問いに対し、マルシンは「セフティが右利きの人でも左利きの人でも使えるユニークな機構が面白い」、「小型ながら13連発であること」などの理由を挙げたうえで、「何よりもスタイルが抜群に良かった」と回答している。その後、GUN誌の1982年3月号にベレッタ 84のレポートが掲載され、日本での知名度も徐々に上がっていった。

 

 

 HW製ということで、小ぶりながらズッシリとしている。ベレッタ特有のスライド上部を切り欠いたデザインも秀逸だが、マズルからトリガーガードにかけての流れるような曲線が何とも魅力的だ。

 

 

 92Fと並べてみると、デザインがよく似ているので、兄弟といった感じの雰囲気だが、92Fがショートリコイルであるのに対し、84はストレートブローバックとなっており、作動方式が異なる。

 

 

 凛々しいマズルフェイスだが、バレルがやや下に寄っているのが気になる。

 

 

 やはり、ベレッタのピストルはホールドオープンした状態が最も美しい。スライドストップは問題なくかかるが、スライドの動きが非常に渋い。

 

 

 商標の関係で、スライド左側面には「PIERCE BULLET」というマルシンオリジナルの刻印になっており、全体の雰囲気を大きく損ねている。意味の分からない刻印を入れるくらいであれば、無刻印の方が良いと思うのは私だけだろうか。

 

 

 スライド右側面には「MARUSHIN」の刻印が入れられている。

 

 

 トリガーは、グルーブの入ったセミワイドタイプで、シングルアクション、ダブルアクションともにストロークは長め。トリガー背面にはトリガーストップが取り付けられている。

 

 

 セフティはフレーム側にあり、コック&ロックとなっている。

 

 

 セフティはアンビタイプになっている。マガジンキャッチボタンも簡単に左右を入れ替えることができるようになっており、左利きを意識した設計であるといえる。

 

 

 スライドストップは大型で形もよく、操作がしやすい。

 

 

 テイクダウンレバーは92Fとは逆の右側に取り付けられている。反対側のピンを押しながらレバーを回すとスライドを外すことができるのだが、ピンを抑えているスプリングが強いので、押すのには力が必要だ。

 

 

 超々ジュラルミンのトリガーバーの耐久性やいかに。超々ジュラルミンは、高い引っ張り強度と耐圧力性をもつ反面、長い時間が経つと強度が低下するらしいので、依然としてトリガーバーの耐久性に対する不安は残る。

 

 

 マルシン M84には、マガジンセフティが装備されている。マガジンを抜いた状態では、マガジンセフティスプリングがトリガーバーを下へ引っ張り、トリガーバーとシアの関係を断つので、トリガーを引いてもハンマーは落ちない。

 

 

 マガジンを挿入すると、まずマガジン側面の突起がマガジンセフティスプリングを押し上げる。次にトリガーバースプリングがトリガーバーを押し上げることによって、シアとの関係が生じ、トリガーを引くとハンマーが落ちるようになる。

 

 

 グリップは光沢のあるタイプで、マークはマルシンオリジナルのものになっている。

 

 

 グリップの裏面にはウエイトが入れられ、重量を稼いでいる。

 

 

 発火カートリッジが10発付属する。弾頭やプライマーの塗分けがないため、素っ気ない印象である。