〇.357マグナムも撃てるKフレーム・リボルバー

 

 M19はS&Wが1955年に発売したダブルアクション・リボルバーである。発売当初の「コンバット・マグナム」という名称であったが、モデルナンバー制が導入されると「Model 19」というナンバーが付与された。M19の特徴は“.357マグナムも撃てる”ことである。従来、.357マグナム・リボルバーはNフレームのみの生産であったが、Nフレームは大型で重く、警察官などが1日中携行するのには不便であった。そこで、ボーダー・パトロール(国境警備隊)のビル・ジョーダンの意見で、Kフレームを使用した.357マグナム・リボルバーとして「コンバット・マグナム」、のちのM19が作られた。Kフレームは本来、.38スペシャルなどを撃つためのフレームで、.357マグナムを撃つことは想定されていなかったため、一説によると、M19で.357マグナムばかりを撃つと、GUNの寿命が半分以下に縮まるとのことである。Kフレームで.357マグナムを撃つことには無理があったようで、1980年にKフレームの各部を大型化し、.357マグナムを撃つのに十分な耐久性を持ったLフレームが登場した。

 

 

〇造形、作動ともに完成されたM19の決定版

 

 今回ご紹介する「タナカ S&W M19 2.5inch ver.3 モデルガン」は2020年12月に新発売となった発火式のモデルガンである。タナカのKフレーム・リボルバーのモデルガンはスチールジュピターフィニッシュを除くと、ABS製のモデルしかなく、長らく再生産が行われなかったため、品切れの状態が続いていたが、今回、刻印や重量、作動などを見直したver.3にリニューアルされ、HW製のモデルとして新発売された。

 

 

 パッケージのサイズは26.5×18×5cmとモデルガンのパッケージとしては一般的なサイズ。4インチのものと共通のパッケージとなっているが、サイズ的に6インチは入らないので、恐らく、M19の6インチが新たに発売されることは無いのではないかと思われる。

 

 

 実際に手にすると、そのズッシリとした重量感に驚く。メーカー公称値で620gとなっており、ガスガンとの差はわずか40gなので、手にした際の感覚はガスガンと変わらない。重量感は満足度に大きな影響を与えるので、ズッシリ重たいというのは、やはり嬉しい。

 スナブノーズ・リボルバーというと、寸詰まりな感じで、野暮ったいという印象があるが、M19はスタイリッシュな形状のエジェクターロッド・シュラウドが付いているためか、随分とハンサムな印象を受ける。

 

 

 各部のエッジもしっかりと立っており、造形は申し分ない。マズルとエジェクターロッド・シュラウドの位置関係が“ハイパト”を彷彿とさせる。『太陽にほえろ!』の殿下(島さん)はバレルとエジェクターロッド・シュラウドを短縮し、グリップをラウンドバットにしたハイパトを使用していた。フレームサイズこそ違うものの、M19 2.5インチは“殿下カスタム”にそっくりである。

 

 

 M36と並べると、M19の方が随分と大きく見える。フレームのサイズもさることながら、M36は5連発、M19は6連発であるため、シリンダーの大きさが決定的に異なる。

 

 

 S&W M19とコルト キングコブラはエジェクターロッド・シュラウドやフルアジャスタブルのリアサイトなど外観上の共通点が多いが、ダブルアクションのトリガーフィーリングは比較にならない。

 

 

 マズルの複雑な形状を見事に再現している。モデルガンということで、バレルにはインサートが入れられている。

 

 

 フレーム左側にはS&Wのマークが入る。

 

 

 フレーム右側には「MADE IN U.S.A.」の刻印が入る。

 

 

 トリガーはスムースなセミワイドタイプとなっている。ガスガンのver.3と同様にシングル、ダブルアクションともにスムースで、ストレスは全く感じない。

 ガスガンではシリンダーストップの上がるタイミングとハンマーが落ちるタイミングがほぼ同時であったためダブルアクションの作動音は「チッバン」というものであったが、モデルガンではハンマーが落ちる前にシリンダーストップが上がるようにセッティングされているようで、「チッチッバン」というリアルな作動音を楽しむことができる。

 

 

 フロントサイトはレッドランプが入った背の高いもので視認性が良い。

 

 

 2.5インチという短銃身でありながら、リアサイトは贅沢にもフルアジャスタブル。ホワイトのラインが入れられているため、狙いやすい。

 

 

 モデルガンということで、ガスガン(ペガサス)とは異なり、カートリッジを取り出すことができ、リボルバーの醍醐味である装填、排莢を楽しむことができる。

 

 

 エキストラクターの作りも正確で、カートリッジを確実にエジェクトすることができる。エジェクターロッドの動きもスムースで気持ちがよい。

 

 

 シリンダーにもインサートが入れられているが、小ぶりなのであまり気にならない。

 

 

 金属製のサイドプレートを開けると内部機構を見ることができる。さすがはモデルガン、ホンモノに忠実である。

 

 

 フレームのグリップ部にはウエイトがぎっしりと入れられている。重量は格段に重くなったが、ABS製の旧モデルに比べて、グリップ部の隙間が少なくなったため、パックマイヤーなどのグリップを取り付ける際にはウエイトを削るなどの加工が必要となった。

 

 

 グリップはラウンドバットのサービスサイズ。フェイクウッドだが、雰囲気は悪くない。

 

 

 グリップの裏面にもウエイトが入れられている。

 

 

 

 発火カートリッジが6発付属する。弾頭とプライマーがシルバーになっている。私は鑑賞派なので、このモデルを発火させる予定はないが、スナブノーズは煙の抜けがよく、発射音も大きいので、迫力のある発火を楽しむことができるのではないかと思う。