〇5連発のポケット・リボルバー

 

 S&W M36は、S&Wが1950年に発売した.38スペシャル弾を使用するダブルアクション・リボルバーである。発売当初は「チーフ・スペシャル」という名称であったが、1957年にモデルナンバー制が採用されると「M36」というナンバーが付与された。M36では、S&Wのリボルバー・フレームの中で最小サイズのJフレームを採用し、シリンダーを5連発としたことで、大幅な小型化に成功した。ポケットサイズのリボルバーで、コンシールドキャリーに向いているため、ハンマーをフレームに内蔵し、ダブルアクション・オンリーとした「センチニアル」やハンマー周辺のフレームを延長し、ハンマーシュラウドとした「ボディーガード」などの派生型が作られた。現在でもJフレームは、コンシールドキャリー用として人気があるようで、アルミ合金やステンレスのモデルを中心に数多くのモデルが販売されている。

 

 M36が登場する作品として真っ先に思い浮かぶのは、ジャッキー・チェン主演の「ポリス・ストーリー 香港国際警察」だ。「ポリス・ストーリー」は、カンフーと軽快なジョークを特徴とした典型的な“ジャッキー映画”で、老若男女問わず楽しむことができる作品であるが、ガンマニア的にはM36の活躍も印象的である。特に冒頭のハイジャックされた路線バスを止めるシーンは秀逸である。

 

 

〇スムースな作動とリアルな刻印のM36

 

 今回ご紹介する「タナカワークス S&W M36 2インチ ver.2 ガスガン」は、ペガサスを搭載したHW製のガスリボルバーである。ペガサスは、ガスガンとしての機能(ガスタンク、マガジン等)を全てシリンダーの中に収めたモデルであるため、カートリッジの装填・排莢といったアクションを楽しむことはできないが、リボルバーとしては高い命中精度とモデルガンのようにリアルな内部機構を実現している。ver.2では、内部機構と刻印の見直しが行われ、作動がよりスムースになり、刻印もリアルになった。

 

 

 以前はM36の写真が載ったパッケージであったが、ver.2から実銃のパッケージを模したリアルなものに変更された。箱のサイズは、21.5×13.5×4cmとなっており、かなり小ぶりな印象を受ける。

 

 

 M36のトイガンというと、とんでもなく軽く、実際に手にするとガッカリするというイメージがあったが、タナカのM36は違う。まるで、金属モデルガンかと思うほどズッシリしている。プラスチック製のトイガン(特にモデルガン)にありがりなスカスカという感じはなく、密度が高く、詰まっているといった感じである。重量は、メーカー公称値で485gということであるが、数字以上に重量感がある。

 

 

 M10 2インチを一回り小さくしたようなデザインで、良くも悪くもS&Wらしいシャープな印象である。サイドプレートは、金属製だが、HW製のフレームと色調が整えられており、違和感はない。ただ、自然光の下で見ると、角度によっては、その差がはっきりと分かることもある。

 

 

 KフレームのM10と並べてみると、M36がいかに小さいかということがよく分かる。

 

 

 M36が5連発であるのに対し、コルト ディテクティブ・スペシャルは6連発。フレームサイズもディテクティブ・スペシャルの方が大きく、全体的にぽっちゃりとした印象。S&Wのリボルバーには、エジェクターロッドを前方から抑えるフロントロッキングが備えられているため、同じ2インチでもS&Wの方がわずかにエジェクターロッドが短い。

 

 

 38口径の小型リボルバーだが、マズルは迫力がある。

 

 

 バレルを真上から見ると、わずかにテーパーがかかっていることが分かる。

 

 

 2以前のモデルでは、S&Wのマークに下に「TANAKA WORKS」の刻印が入っていたが、ver.2では、米国特許商標庁登録商標を示すリアルな刻印となった。

 

 

 フレーム右側の刻印。以前には「MADE IN JAPAN」となっていたが、ver.2では、「MADE IN U.S.A.」となった。

 

 

 トリガーは、グルーブの入ったナロータイプ。シングルアクションは、ストロークが短く、キレも良い。ダブルアクションは、S&Wらしいスムースなもので、以前紹介したM10 ver.3よりも軽く感じる。

 

 

 フロントサイトは、小ぶりだが、反射防止のためのセレーションが入っている。

 

 

 リアサイトは、シンプルなスクエアノッチタイプ。エッジがしっかりと立っているが、サイト自体が小さいため、サイトピクチャーは良くない。

 

 

 実銃のシリンダーは5連発だが、タナカのM36は、10発となっている。シリンダーは、ガスタンクを兼ねているため、金属製となっており、重量がある。

 

 

 サイドプレートを開けて内部を見てみる。月刊GUNで見た実銃の写真にそっくりで、とてもガスガンの内部機構とは思えない。シリンダーハンドの上部にバブルを叩くためのガスガンオリジナルのパーツがあるが、内部機構の再現性は極めて高い。Kフレームは、ハンマースプリングが板バネであったが、Jフレームでは、コイルスプリングとなっている。

 

 

 「TANAKA ASGK」の刻印は、フレームの後端にあり、グリップを外さなければ見えない。

 

 

 グリップは、サービスサイズのものが付属する。フレーム自体が小型であるため、グリップも小さく、小指が余ってしまう。プラスチック製であるが、ウッドグリップの風合いをよく再現している。

 

 

 サービスサイズ・グリップだけでは、少々握りづらいので、別売のグリップ・アダプターを装着。グリッピングは、向上するが、依然として小指が余ってしまうので、コンシールド性を犠牲にしても、オーバーサイズ・グリップに交換したいところである。

 

 

 

〇実射

 

 いつも通り、約3m先の直径6.5cmの円に向けて5発試射をした。中心の黒点を狙ったが、やや左下に着弾した。グルーピングの感想は、「よく当たる」という一言に尽きる。Jフレームの2インチでありながら、約3mにおいては、M10 4インチと同等のグルーピングとなった。