胆大小心録 その96 | むかしのはなし

胆大小心録 その96

九十六

(松村)月渓の病気は救いようも無い。

隠者のように侘しい生活になり、
下女も置かずに妻と二人で暮らし、
心がどんどんと思い上がるようになっていった。

絵は昔とは技量が違うが、
高尚になり値段を高く見積もる事を許さなかった。
御所や宮様の風を吹かすのが玉に瑕ではあるが。

また御用の手すきに何か描いて欲しいと頼まれると、
屏風や衝立のような大層なものは致さないと言って、
絹紙の一片に墨書きなどを軽くすれば(立派な出来で)、
充分な出来栄えであった。

才人ではあるが俗に走る傾向がある。
人相見や家相見などの占い師に騙されて、
希望が叶わなかったといえども、
それをまた問うのは愚の至りである、惜しむべし。


以前にも出てきた秋成の友人、松村月渓の話です。

月渓の病気とは、
隠者を気取り、それっぽく振舞う事でしょうか。
いわゆる悪癖や欠点を指しているそうです。
秋成はそれを好意的に受け取っているようですが、
お高くとまるのが気に入らないようです。