欲しいと望みながら、
絶対に手に入れられはしないことを
僕は知ってる
先週から続いていた雨もすっかりやみ、つけていたテレビから梅雨明けを宣言するお姉さんの声が聞こえてきた。
「梅雨、あけたみたいですね」
「ああ」
新しくコーヒーをいれながら白が笑う。
それに満更でもなさそうにうなずいたツカサは、新聞から顔をあげチラリと時計を見た。
その視線を追った白はああ、と振り返った。
「お昼、作っておきますね」
「…頼んだ」
カサカサと音を立てながらたたんだ新聞を飲み干したコーヒーのとなりにおき、ツカサは立ちあがった。
この家の主である葵を起こしにいくのである。
夜中が主な仕事の時間である葵は、基本昼すぎまで寝ていることが多い。
というか、午前中に起きてきた試しがない。
トントンと一定のリズムで階段をのぼったツカサは、相変わらずの無表情で扉の前で立ち止まると大きく息を吸った。
そしてばんと勢いに任せてドアを開いた。
「起きろ!」
「……んー」
うーだのあーだのとうなりながら、ツカサから逃れるかのようにもぞもぞと布団にもぐりこむ葵。
その姿を見てツカサは舌打ちを一つ。
「もう昼だぞ」
「んー…あと五分」
「あと0分だ! 今日から梅雨明けらしい、布団干させろ」
もぐりこんだ布団めくるとようやく動き出す葵。
のそのそと布団の上に座り直した彼女の顔に、長い綺麗な髪がかかる。
「大丈夫、自分でやる」
顔にかかった髪をそのままに立ち上がった葵は、んーっと伸びを一つ。
「お前絶対そのまま寝るな」
「失礼ね、寝ないわよ」
「どーだか」
立ち上がったはいいものの、ふらふらと不安定な葵を抱きとめるツカサ。
と、腕の中の葵がもぞもぞと動いた。
長い髪の間から不思議そうにじっとツカサを見つめる葵。
その動くたび目に入りそうで危ない髪を払ったツカサは、露わになった額に口付けた。
「……?」
「早くおりてこい。飯、白が待ってる」
「あぁ、今日は白だっけ。わかった急ぐ」
ツカサから解放され、上着を脱ぎ始めた葵を見届けて、ツカサはそっと部屋を出た。
「……鈍いんだよ、ばか」
ツカサの小さな呟きは静かな廊下に吸い込まれるだけだった。
その感情はただ、恋でしかなかったのだ
(決して口にすることはないけれど)
*****
フォロワーさんである黒朱さんことくーたんリクエストの、「兄弟のように育った従兄妹のお話」でした。
男→女みたいな。
ということで、我が子であるツカサと葵(あおい)、そして同居人である白(はく)の日常を覗いて参りました。
リクエストに添えているかはわかりませんが、くーたんに捧げます。
リクエストありがとうございました!