暑い夏も終わり、乾いた涼しい風が吹き始めた。
数日続いていた雨もすっかりやみ、スッキリとした秋晴れとなった。
「・・・・ねぇ、本当にいいの?和葉」
「・・・・なにが?」
幼馴染から少し距離を置いた同級生という流れを経て、二人は恋人という新たな関係になっていた。
そして久しぶりに晴れたこの日、二人はデートの予定を立てていた。
だが。
「だって、運動会なんてつまらなくない?」
「・・・・誘ったのそっちじゃない」
そう。
折角晴れたのだが、この日はあいにく拓真の弟妹の中学校の運動会だったのだ。
「でも別に断ってもいいって言ったろ?」
「私は、・・・・なんでもない」
ふいっと顔をそらした和葉。
拓真はその顔を覗きこもうとするも、ぐいっと余計にそらされてしまうだけ。
「和葉?」
「・・・・私は、拓真といられれば、それでいいのっ」
言った途端にカァーっと赤くなる和葉の顔。
拓真は思わず喉を鳴らした。
「・・・・なによ」
「・・・・いや、可愛いなって思って」
「笑わないでっ」
「はいはい」
はいはいと言ったものの赤い顔は更に赤くなるだけで、笑いが止まらない。
だが不機嫌そうに拓真を睨む和葉の顔に拓真は咳払いを一つ。
なんとか笑いを引っ込めた。
「・・・・ところで、和葉って僕の弟妹にあったことあるっけ」
「あるよ、何年拓真の幼馴染やってると思ってるの」
「そっか、昔遊んだことあったね」
まだ拓真も和葉も小学校に入ってすぐのころのことだ。
幼稚園に入るか否かというまだ幼い二人の弟妹と何度か遊んでいた。
「懐かしいな。どっちかの提案で○○の秋って書いたよね」
「私が読書、拓真も読書」
「優馬がどこで覚えたのか、食欲の秋って言ってたね」
その時を思い出したのか、拓真がくくっと喉を鳴らす。
「優香ちゃんが遊び、でしょ」
「あのときは可愛かったもんな。二人とも」
「今も可愛いんでしょ」
ゆっくりと道路沿いの道を二人で歩く。
その傍らでは、ほんのり色づき始めた木々がゆらゆらと優しく揺れている。
「和葉」
「・・・・ん?」
振り返ると、ほほ笑んだ拓真が右手を差し出していた。
これは・・・・手をつなげというのだろうか。
この公共の場で。堂々と。日中から。
「・・・・」
正直言うと、嫌だ。
否、手をつなぎたくないわけではない。ここが嫌なのだ。
そしてそれは拓真も分かっているはず。なのだが。
「た・・くまっ、」
「いいじゃん、別に」
ぐい、と無理やり手を繋がれた。
和葉よりほんの少し温かい拓真の手が和葉の手を包み込む。
あまりの恥ずかしさに顔が熱くなるのが分かり、和葉は顔をうつむかせた。
「・・・・恥ずかしい?」
「・・・・わかってるくせに」
思わず小さくなった声に、拓真の声が答えた。
「じゃあ別に繋がなくてもいいけど」
スルリ、と手がほどかれた。
心地よかったぬくもりが離れ、冷たく感じる。
思わず和葉の手が拓真の手を追いかけた。
「・・・・あれ、嫌なんじゃなかったっけ?」
わずかに笑みが含まれた拓真の声。
嗚呼、計算だったのか・・・・と和葉は内心拓真を恨んだ。
だが。
「ほら」
再び差し出されたその手。
ぎゅ、と自分から握った途端に感じるのはぬくもりと安心。
「あっ、ほら。金木犀咲いてる」
いつからこんなに弱くなったのだろう、と自問自答する和葉は、拓真の声に顔をあげた。
「・・・・・・ほんとだ」
ふわりと鼻をくすぐる金木犀の甘い香りに、和葉の顔がゆるむ。
「・・・・やっぱり、」
「・・・・え?」
ぽつり、と拓真が小さく呟いたその声は、風で和葉まで届かなかった。
「なに、拓真」
「や、別に。なんでもないよ」
「・・・・・・ズルイ」
さっきは自分も言わされたのに、と文句を言おうと顔をあげた和葉。
「・・・・っ、」
拓真が和葉を見て優しく微笑んでいた。
その笑顔に、もう全てがどうでもよくなる。
「・・・・早く行こ、待ってるんでしょ」
「はいはい」
うなずいたが足取りの早さは変わらず。
きっとそれは拓真が和葉と少しでも長くいたいからで。
それを察した和葉はぎゅ、と自分から手を強く握ってみた。
ふわり、と優しく秋の始まりを知らせる秋風が和葉の髪で遊んで行った。
*****
というわけで、秋風10月のお題でした。
ラブラブデート、とのことで。
キーワードが四つ。
「秋晴れ」「運動」「食欲の秋」「デート」
上手くかくしてみたつもりです。
ついでに秋風も入れてみたりなんかしちゃったり。
凄く楽しかったです。
来月はそろそろ受験になるのでどうかと思いますが、
時間があったら参加したいな、と。
久々に小説書きましたが、楽しかった。本当。
これでリレー小説書く気が出そうです笑
それと、拓真と和葉は、以前書きました。
見てくださったかたいるのかな・・・木場さんは知ってる笑
冬をテーマ、まだ付き合う前のお話です。
この二人結構書きやすいので、書いていきたいな、なんて。
ただ、ラブラブは物凄く難しかったです!!笑