仙台駅前は本降りの雨だった。ビルの壁面に設置された温度計は10℃を示している。傘を持つ手に風が吹き付けて寒い。


シャトルバス乗り場は人影がまばらだ。すぐに乗車し、まもなく発車。途中ノロノロ運転で、50分後の6時30分に到着。再び雨のなかを7、8分歩き、会場に入る。


座席はアリーナA2ブロック7列目。センターステージを斜めに臨み、ハテナビトのときに使う「お立ち台」をほぼ正面に見る位置。ただし、今回もメンバーを主に背後から見る「裏側」であることが開演後にわかった。


事前の告知どおり、各観客の前後左右が空くように座席が割り振られている。スタンドも同様のようだ。ブロック前方の数人分の席は開演後も空いたままだった。


開演予定15分前の影アナが終わると、観客がメンバーの名前を叫び始める。ひときわ熱のこもった声援に対して客席から賞賛の拍手が起こる。ほどなく手拍子が始まり、観客がちらほらと立ち上がる。


最後の影アナが終わると、手拍子が2倍速になった。7時5分ごろ開演。メンバーが姿を現すと、3人の名前を呼ぶ声が場内に響く。こちら側を向くのっちが「原寸大」に見える。


最初のMCであ~ちゃんが「Perfume 9th Tour PLASMA 宮城…」と言ったところで、涙で言葉を詰まらせる。客席から「がんばれー」という声援が飛ぶ。


声出しライブを行うに至った経緯を説明するあ~ちゃんは、定員の32%しか集客が見込めなくなったことに「悔しい」と何度も言い、「傷つけてしまった人もいたかもしれない」とファンの心を気遣った。


続くかしゆかの一人MCも涙声。しかし、次ののっちは涙なし。しかも、いつもよりしゃべりがスムーズだ。あ~ちゃん、かしゆかがヨロヨロになると、無意識に「やる気スイッチ」が入るのっち。さすがだ。


本編についてはずーっと省略し、Party Maker後の可変枠は多くのファンの予想どおりエレクトロワールド。ほかにも声出しライブ用の曲が追加されるかも、という淡い期待があったが、セットリストの変更はなかった。


最後のMCであ~ちゃん、かしゆかはまた涙。のっちも途中で泣き声に。


大半のファンにとっては事前から期待感しかなかった声出しライブだが、メンバーのなかではチケットが売れなかった悔しさ、悲しさが最も強く、さらに開催方法を変えることに対する不安があったため、ファンの声を久々に聞けるという期待感は心の底に押しやられていたのではあるまいか。


そうした気持ちを察したこの日の客席は、自分たちがライブを楽しむことで3人を楽しませたい、3人を励ましたいという温かい連帯感に、いつも以上に満ちていた。曲中の3人の歌唱部分やMCで3人が話している間はちゃんと静かになり、マナー面もまったく問題なかった。


その客席の一員となれたことを誇りに思う。その客席にいられたことを幸せに思う。あの場にいたすべてのファンが抱いていた偽りのない優しさが3人に確かに届いたと信じたい。