いつの間にかすっかりきれいなお姉さんになった志田未来さん目当てに渋谷駅から公園通りを上る。ポスターや特設サイトのキャスト表記も出演4女優中で志田さんが先頭。こういうのは集客力で決まるものなのか? かくいう私も釣られた1人だが。

 3姉妹と亡母の話ということで、観覧前にも薄々予想していたのだが、物語の実質的な主役は志田さんではなく、母役の斉藤由貴さんのほうである。母子4人それぞれにわかりやすい性格づけがなされているとはいえ、母親の突き抜けぶりが尋常でなく、3姉妹を完全に食っている。

 斉藤由貴という役者が役柄と同化し、物憂げな目と頽廃的な肉体を持つ実在が舞台上に呈示される。実に自分勝手で嫌気のする母(というより女)だが、観客はその心情に次第に引き込まれ、その哀しさを共有する。3姉妹には失礼ながら、役者としての格の違いを感じる。

 斉藤さんは最近、テレ朝の警視庁・捜査一課長の「大福」役としてたまに見かけたが、役柄がつまらないせいで斉藤さんの顔色まで悪くみえた。それがこの日の舞台では様変わりの妖艶さ。いつか斉藤さんが名実ともに主役を務める芝居を見てみたいものだ。

 さて、三女役の志田さんだが、観覧の数日前に流し読みした劇評で「志田は激した時の台詞(せりふ)が課題だ。」という箇所が気になっていた。実際に見て同意した。不都合なことに、この劇は激する場面が多い。これがおしとやかなお嬢さん役を演じる芝居だったりしたら、もっと好ましい印象が残ったかもしれない。

 田畑智子さんが扮する長女と鈴木杏さんの次女は、それぞれご本人の雰囲気をそのまま映したような役柄だ。といっても、お2人のことはたいして知らないのだが。母親ほどではないが、3姉妹のなかでは次女が一番はっちゃけた役回りなので、斉藤さんの次に観客受けがよかったのは鈴木さんかもしれない。

 この演目の東京公演はこの日が最後ということで、カーテンコールのときに斉藤さんが志田さんに挨拶するよう促す。しかし、志田さんが尻ごみしたため、斉藤さんがそつなく挨拶したうえで、志田さんに再び挨拶するように言う。志田さんは挨拶がよほど緊張するのか、涙ぐんでしまい、斉藤さんに劇中の親子関係よろしく「泣くんじゃないの!」と叱られていた。

 東京に続き、8月には仙台、広島、北九州、新潟、大阪でも上演予定なので、興味のある方は是非見に行ってください(と斉藤さんが言っていました)。

 ところで、この日の座席は3列目センターブロックで、「言うことなし」のはずだったが、隣の男性客がタバコ臭くて閉口した。次の観劇の際はたとえ真夏でもマスクを持参しようと心に誓う。