※リクエスト作品になります。




由依side



ひかるちゃんと付き合った初日に起きた出来事は、未だ誰にも言えないまま。

そりゃ人にわざわざ報告することじゃ無いし、理佐と初めての時は誰にも言わなかったし、言う気もなかった。

でも、今回はどうしてか誰かに話を聞いてもらいたかった。

承認欲求を満たすための自慢話をするためじゃ無い、上手く言葉にはできないけどそうだな、あえて言い表すならばクラスの子に嫌なちょっかいをかけられてそれを先生に言いつけるような感じかな。

…ひかるちゃんにこんなことをされて、罪悪感で胸がいっぱいな私を、あなたのせいじゃ無いよ。と誰かに言ってもらいたかったんだ。

そんな気持ちを抱え、言おう言おうと募らせた思いをやっと吐き出す決意ができた。

仕事が被った日、ふーちゃんのところに行って、ふーちゃんと、最近一緒にいるのをよく見る土生ちゃんとを連れ出して3人で非常階段付近の人が来ないところに行く。


由依「ごめん、急に、」
齋藤「大丈夫だけど、どうしたの?」
由依「…ぁのね、言いたいこと、あって…」


2人は絶対私の味方をしてくれる。わかってるけど、真っ直ぐに見つめられた2人のその瞳を見ると怖くなった。

2人が私とひかるが付き合ったって聞いたらどう思われるんだろう、軽蔑、される…?理佐に続いてゆいぽんもそんな人だったんだねって白い目で見られる…?

それは、ちょっと耐えられそうに無い。こうなってしまったのは紛れもない私のせいで、自業自得って言うのはわかってるけど…。

まだ起こってもない出来事に怯えて、言葉が詰まる。

この後の2人を想像しては、どうなるかわからない怖さに言葉以上のものが溢れ出しそう。

でも泣いてしまったらきっと私はまともに喋れなくなるだろうから、だから、その時が来てしまう前に早く言ってしまおうって。

詰まる言葉を無理やり出すように、私が泣くのと、言いたいことを言い終えるのと、どっちが先に終わるか争うように吐き出した。


由依「ぁの、私、ひかるちゃんと、付き合うことに
   なって…、それで、、、ね、、あのね、、
   ひかるちゃんに、抱きしめられて……きす、して
   ……それで、、、それで、泣」


ひかるちゃんにこんなことされたんだ。

それでね、ずっとずっと“ 今私、理佐が悲しむことしてる ”って心が痛かったの。誰にも言えないで辛かった。

ねぇふーちゃん、土生ちゃん私これからどうしたらいいのかな、こんな私のこと、理佐はもう嫌いになっちゃうかな、そんなことになったら私どうしよう、

怖いよ、怖い…ごめんなさい、ごめんなさい…

ネジが外れた蛇口のように噴き出て止まらない思いを訴えるようにふーちゃんに抱きついて泣いた。


齋藤「しっかりしな、ゆいぽん。大丈夫、何もゆいぽんは
   悪く無いよ。」


前と後ろから感じる2人の暖かさに甘んじて沢山泣いた。
泣いたらスッキリしたけど、私の心の中は空っぽだった。






そんなことがあっても、時間は流れてゆくもので。

いつのまにかライブの準備期間に入って、リハーサルになって気づくと本番が来てた。

正直ライブなんて言ってる余裕が無かった私は、少しばかり不安も抱えながらステージに立っていたけど案外身体は機械的に動くもので。

ファンの人のペンライトの光が見えると、いつものアイドルの私になっていた。

でも唯一、素の私が顔を出した場面があった。

櫻坂の詩のとき。

みんなファンサを終えてメインステージに帰ってきて、横一列に並ぶ時。たまたま私の隣が空いてたんだ。

順番はさほど決まってなかったからみんな適当なところに立つんだけど、誰が来るかな。そう思って待っているとびっくりした。

まさか理佐が隣に来るなんて思ってなかった。

動揺が隠せなくて表情が固まる私に対して、何にもないような顔して隣に並んだ理佐。

その現実に涙が出そうだった。

ここ数日間帰りたくて堪らなかった理佐の隣がこんな不意に現れたものだから。

必死に流れ落ちる涙を隠して平然を装う。

そしてそのまま曲が進むと、あろうことかメンバーが隣のメンバー同士で手を繋ぎ始めたらしい。

きっと天ちゃんかどこかが始めたんだろうけれども、私はその順番が回ってくるなと念じる。

だって、手なんて繋いだら本当にあの頃に戻ったみたいになる。そんなことしたら多分、いや絶対、私は今まで我慢していた何かを溢れ出してしまうから。

そんな思いも虚しく、とうとう理佐の方とは逆側の手を繋がれた。

つまり、私のところまでもう他のメンバーはみんな手を繋いだということ。そして後途切れているのはきっともう私と理佐のところだけ。

どうしよう、手を繋ぐか繋がないか。

正直繋ぎたい、また理佐と元通りになりたい。もしなれなくてもこの一瞬だけでも戻れたらって思ってる私もいる。

でも勇気が出ない。もし振り解かれたりでもしたら、立ち直れない。



そんなことを思っていたら、そっと、私よりも大きな手が私の指を絡め取った。



理佐が、繋いでくれたんだ。

私が葛藤している間に、どうしようもない私をみんなの輪の中に入れてくれた。

_____出会ったあの時と同じように。

……理佐のそう言うところが大好きだった。誰も仲間外れを作らないその屈託のない優しさが。私のことを特別気にかけてくれる性格が。

そう思ったらほらね。やっぱり。涙が止まらないよ。

そんな私は、私を思ってなのか、軽くしか繋がっていなかった手を、今度は私から繋ぎ直した。

指と指の間が1番深いところまでちゃんと絡まるように。

理佐、理佐に先に行動してもらわないとどうにも自分に素直になれないこんな私を、どうか許してほしい…

いつも自分勝手でごめん…あの日、理佐の話、ちゃんと聞いてあげなくて、勝手に別れたこと後悔してるの、、本当にごめんね、、、

繋いだその手からこの思いが理佐に伝わればいいのに。
そしたらもう仲直りして、理佐の元に帰れるのに。

こんなことを思ってダメな彼女だと思う。
だけどもう、ひかるの彼女でいるのは私には限界そうだった。






理佐side



由依と別れて初めてのライブ。

準備期間からずっと楽しくなかった。由依がいないだけで。

こんなにも作業的に人は動くようになるものなのかと自分で思ってしまうほどには。

だからだと思う、最後の櫻坂の詩でメインステージに帰ってきたとき、何にも考えずに由依の隣に並んでしまった。

並んだ瞬間まずいと思った。これじゃあ仕事中には私情を挟まない由依のこの性格に甘えて近づいたみたいじゃないか。

由依に誤解されたくなくて弁明したいけれど、ファンの人の前でそんな姿を晒せるわけもなく、そのまま曲が進む。

すると最後の最後でメンバーみんなが手を繋ぎ出した。ますますまずいと思ったけど、どうしようもできない。

友香がふーちゃんと繋いで、ふーちゃんが土生ちゃんと繋いで、土生ちゃんが夏鈴ちゃんと繋いで、、、

とうとう夏鈴ちゃんが私と手を繋いだ。さぁ、私は一体どうするべきか。

結論、何にもなかったかのように私は由依の手をとった。

ちょっとした賭けのつもりだった。これでもし、由依に振り解かれたら今日までズルズルと引きずってきた未練をここに捨てていこうって。

もし、そうじゃなかったら、、、まだ、由依の帰りを待つことにしようって…

ちゃんと繋がれるのはきっと気分が良く無いだろうから、指先を少しだけ繋いで。振り解かれませんようにそんな思いをかけて繋いだ手。

由依は振り解かなかった。むしろ、しばらくしてからしっかりと握り直して来て。

嬉しかった。たまらなく。

自惚れだけど、本当は私たち別れてなかったんじゃ無いかって。都合のいいように解釈しては心の中で浮かれた。

由依は、どんな思いで私の手を結び直したんだろう。私はその固く結ばれた2人の手に期待してもいいの。

…やめた。そんなこと考えるの。
今はこの時間を大事に噛み締めていよう。

例え今後、寄りを戻せなかったとしても、今この瞬間だけでも由依とまた手を繋いで隣にいれているだけで私は幸せだから。

この時間が永遠であればいいのに___________。

ちょこっとだけ、由依も同じことを願っていてくれたらいいのに、そうワガママを思った私がいた。



to be continued…




お読みいただきありがとうございました。
時間が少し遅れてしまって申し訳なかったです🙇

の割には全然上手く書けなかったんですけど…笑
また後で訂正入れたりしたいと思います。

そして、このお話も明日で最終回です!
この間からハッピーエンドを強く願う人が結構いらっしゃいましたが、果たしてこの2人の結末はいかに…

楽しみに待っていてくれたら嬉しいです✨

おっす。